その61

キルトログ、再びグールの出現に振り回される(1)

 呪われたサレコウベを入手できなかった心労から、しばらくの間休息をとり、頃合いを見てセルビナに復活した。少し歩いたらRyugaとばったり会った。彼は前回三つの品を入手したのであるが、少なくともまだサポートジョブをつけていないようだった。

 あれからサレコウベはどうですか、と聞くから、立ち直ったのでこれからまた協力者を募りますと答えた。ありがたいことにRyugaが力になってくれるという。私に異論のあろうはずがない。これでまず5人の仲間のうち一人が決まった。

 折りしもセルビナは冒険者を雇おうとする者、雇われようとする者でごったがえしていた。私はどういうパーティ構成がふさわしいかの計算を始めた。狩人の参加は望むべくもない。というのは、この職業に就く者は数が少ないから、我々と同程度のレベルの人物が、近くにひょっこり現れるとはまず考えられないからだ。Milmolも別のパーティの一員となったようだから、この線は諦めた。グールは何とか人海戦術で探すしかなさそうである。

 セルビナが混んでいるのは、鍛錬をしてレベルを上げたいと思う冒険者がこぞって集まるからだ。従ってその中で、グール狩りなんぞに付き合ってくれる、酔狂で親切な人を探すのは苦労した。特に絶対必要と言える回復役、白魔道士は、希望を出す前に売れているご時勢だ。近辺の白魔道士に一応声はかけたが、色よい返事がない。それに比べて前衛は比較的すぐ埋まった。以下の二人である。
 
 ヒュームの
Takeru(タケル)。暗黒戦士20、白魔道士10。
 同じくヒュームの
Yukitada(ユキタダ)。戦士20、白魔道士8。

 最悪回復役が見つからないことを考え、少しでもケアルが使える人に声をかけた。幸い彼らは快諾してくれた。だが回復役がゼロというわけにはいかない。私はラテーヌやコンシュタットにいる赤魔道士にも、迷惑なのを承知で丁重に頼んだ。それでもイエスという返事は返らない。そこで、言葉は悪いが、最後の手段を使うことにした。前回Ryugaに提案したように、サポートジョブをつけていない回復役に率先して声をかけるのである。

 冒険者としての名誉にかけて誓うが、サポートジョブ・クエストを達成していない人物を差別したわけでは決してない。私だって出来れば共に試練を乗り越えたいが、サレコウベをふたつ取ることの困難さは前回で証明されている。私につきあってくれる人はその人自身の善意からそうするのである。私に出来る最善の策は、さっさと用件を済ませて、親切な仲間たちをはやく自由の身に戻すことだ。そのためには「サレコウベ一つさえ入手すれば終わる」という状況を作るのが望ましかったのである。

 だがそういう贅沢すら言えなくなった。サポートジョブを取っていない人物の協力を仰がねばならない。正直それすらも選択の余地がない。というのは、私が声をかけた人物を除けば、手ごろな強さの赤魔道士は、ラテーヌ高原にただ一人しか残っていなかったからである。

「よろしいですよ、協力しましょう」

 彼にこう言って貰わなければ、パーティはそのまま解散となるところだった。私は安堵の息を漏らした。
 これで肩の力が抜けると同時に、あらかじめ考えていたもう一人のジョブも決まった。目的のアイテムを確実に入手するために、私はもう一人のシーフを雇うことにし、ヒュームの
Zoffi(ゾフィー)(シーフ19、白魔道士9)と約束を取り付けた。こうして第2次サレコウベ収集作戦が幕を明けたのである。

ゴブリン・ティンクラー
ゴブリン・ティンクラー ゴブリンに気をつけろ!

 こちらから迎えに行こうかと言ったのだが、赤魔道士は単身バルクルムを抜けてセルビナへやって来た。18レベルで、名を
Offroad(オフロード)という。種族はエルヴァーンだ。すなわち、魔法があまり得意でなく、過度の回復はできないということである。
 よくよく話してみたら、Offroadは既にサレコウベを入手しているという。偶然戦ったグールが落としたので貰ったのだとか。これは二重に嬉しかった。まずは二つ目を探す手間が省けるのが一点。もう一点は、サポートジョブを身につけたい誘惑を後回しにして、時間がさほどないにもかかわらず私に協力してくれた、という事実である(後者は他のみんなにも言えることだ)。

 街を出るころ丁度よい時間で、夕闇が迫っていたから、適当にモンスターを倒したのち散開した。どこに出るかは行ってみなければまったくわからない。ゴブリンは黒い影となるからよく見えるが、グールはほっそりとした白骨だから、白い砂の上にいると保護色になって見分けがつきにくい。走っているときには獣人にも気をつけなくてはならない。彼らはブブリム同様、いたるところをうろつき回っているので、見つかったら少々やっかいなことになる。特に回復の層が弱いので、短期の決戦なら問題ないが、次々とリンクされたりするとさっさとMPが尽き、お手上げとなるのは必然だ。

「いた!」

 Takeruが砂浜の手前で見つけた。我々、特に私は喜んで跳びかかった。案外一発目で出るかも、という期待は、これの落とした骨くずの前に空しく散った。やはりこの試練にはもうしばらくの苦労が必要だとみえる。
(02.09.21)
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