その64

キルトログ、講和会に参加する
サンドリア王国(The Kingdom of Sand'Oria)
 クォン大陸北方にすむ誇り高き戦士の民エルヴァーン族が、激しい内戦の末に建国した王国。
 五百年以上も続くドラキーユ族の当主が国王として代々治めている。
 王国の首都サンドリアは、国境防衛、外征を主任務とする王立騎士団と都市防衛・治安を主任務とする神殿騎士団のふたつに支えられた堅固な城塞都市である。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
サンドリアの街並 サンドリア

 ロンフォールの街を抜けて無事サンドリアに入った。異国を訪れた時にすることは二つある。領事館に挨拶に行くこと、そしてレンタルハウスを借りてモーグリを呼び寄せることである。

 サンドリアは難攻不落の城砦都市であり、
南サンドリア、北サンドリア、サンドリア港と三つのエリアに分かれる。正直に言って三国のうちで最も狭いが、無駄に広くなく、要素がコンパクトにまとまっているので道を把握しやすい。北も南も中央に広場があって、東西に長い通りが伸びている構造だ。南サンドリアの広場から凱旋門(注1)を潜ると、北サンドリアの広場――閲兵場というらしい――に、ジュノを含む三つの大使館が連なっているのが見える。領事に渡す手紙などは持っておらず、お偉いさんに用事はないのだが、シグネットなどをかけてもらうために頻繁に足を運ばなくてはならない。
 折りしもサンドリアとウィンダスの同盟は私の入国と時を同じうするように解消された。それでも依然としてバストゥークがコンクエストを制している。昔日ほどの勢いはないから、我が連邦もつけいる隙があるやもしれない。


 領事館を出たのは朝方だった。閲兵場の北東に
大聖堂が威風堂々と建っている。二人のエルヴァーン女性が広場からうっとりとバルコニーを見つめる。そこに立派なローブを着た教皇が姿を現す。彼は国民に、楽園の扉に通じる努力を促すと、すぐに引っ込んでしまった。二人はありがたい説教が聞けたと言って歓喜している。教皇は位が高くて滅多に姿を見ることが出来ないそうだ。彼女たちはその一瞬のためだけにここに立っていると見える。少なくとも二人がこの場所を離れたのを見たことがない。

 大聖堂の扉は大きく開かれ、一般に門戸が開放されていることを示している。中に入ると出会うひと出会うひとみんな頭巾をつけている。これがサンドリア式アルタナ教の慣習なのだろう。何人かの僧と話をしたが、みんな話の終わりには、首を少しかしげながら、両手で私を包み込むような仕草をする。そしてこう言う。

「皆様に楽園への扉が開かれますよう」

 広間は
総長による講和会への期待で騒がしい。信者はみな楽園へ行きたい行きたいと繰り返す。楽園の扉とは、古代人が通ろうとして番人に罰された場所のはずだが、アルタナは別に人類に神の領域に入ることを許してはいないはずだ。ここにいるいろんな人と話したが、誰とも会話が噛みあわない。おそらくサンドリアではそういう解釈はしないのだろう。講和会が何だか楽しみになってきた。
 
大聖堂内部

 講和会に出るためには資格が必要らしい。とは言っても簡単な実地試験のようだ。祝福された革袋に、シュヴァル川の水を汲んでこいというのである。革袋の代金として10ギルを取られたが、布施だと思えば気にもならない。シュヴァル川東ロンフォールを流れる清流である。外に出かけるついでに少しばかり戦闘してみてもいいだろう。


 モグハウスでジョブチェンジした。サポートにはモンクを置いた。これは体力(HP)に好影響を与えるので、広く愛用されている組み合わせである。モンクの語源も僧という意味だから相性がよいのは当然かもしれない。
 最初はケアルを唱えるにもおっかなびっくりだ。詠唱中に動くとうまく魔法が働かず、脳みそがくたびれるだけで損をする。慣れるまで少々時間がかかった。戦い出した頃は
ワイルド・ラビットトンネル・ワームを相手にするのがせいぜいだったが、じきにフォレスト・ヘア(注2)程度なら平気で勝てるようになった。レベルはすぐに4になった。こんな急成長も懐かしい。

 シュヴァル川はすぐに見つかった。南の方で枝分かれこそしているが、川の本流は結局一本に過ぎない。これは大河でも何でもなく、小川と言っていいくらいのせせらぎだ。なるほど水は鏡のように透き通っていて、儀礼的に聖水として使われるのも頷ける。こんな清流にもモンスターは住んでいる。
プギルという陸魚の類で、これを杖で打ち据えるのだが、何だか罰当たりをしているような気がして少しだけ気分が悪い。

 陸魚の屍で濁った水を汲むのも気が引けるので、上流へ上がる。粗末な橋の向こうでタルタル氏が釣りを楽しんでいる。私にとっては膝下が濡れるに過ぎないが、彼は身体の半分が水の下だ。タルタル氏の釣竿は、持ち主の筋がいいのか、何度も当たりを引いて弓形にしなる。邪魔をしないように革袋に水を詰めさせてもらった。後はこれを大聖堂に持ち帰るだけである。


タルタル氏が釣りを楽しむ

 水を持参すると、私を待っていたかのように講和会が始まった。定員に達する必要があったのかもしれない。

 サンドリア式の教義を簡単ながら聞かせてもらったが、少し失望した。総長は、私利私欲を捨て、神に帰依することが奉仕に繋がる、と言い、楽園の扉を抜けてアルタナのみもとへ行くにはそれしかないと断言する。その道は険しいともつけ加える。

 それにしても、人類がみな死んで天国に召される、というのは誤りだ。エルヴァーンはそれでいいのかもしれないが、ガルカは転生し、再び地上に戻る。天国に永住する権利はない。我々は大いなる魂の循環の中に住んでいるからだ。

 こういう考え方を最も理解できるのはミスラかもしれない。彼女たちの宗教観については、ミスラ自身が語ろうとしないので判然としないが、他の種族のように「人間対自然」という発想はしない。ミスラは自分たちも自然の循環を形成する一部だという考え方をする。狩るものと狩られるものがいて初めて狩りが成立するのだ。そこに彼女たちの哲学がある。それ自体はアルタナの教えに矛盾していないが、黄金律のどこに神様を見出すか、には考え方に工夫が必要だ。彼女たちが宗教的に淡白に見えたとしても、特に不思議ではないだろう(注3)

 総長は気になることも言った。アルタナの修行僧が「世界各地にある岩を巡って、アルタナのみこころに触れている」のだそうだ。この岩というのが例の奇岩であることに疑問の余地はない。だがそれがサンドリア人の手になるものか、古代にあったものを彼らが利用しているのかは結局わからない。

 東ロンフォール南東の塔にて修行する修道士があるという。講和会は、その修道士に
ブルーピース――ララブのしっぽの原料――を届けてくれという話で終わった。彼は修行のためにこれのみしか食さないのだそうだ。他人事ながら身体を壊さないのかと心配になってしまう。それ以前にロンフォールではオークやゴブリンが問題なのだが、はたしてそれも修行の一環なのだろうか。

 ブルーピースはひとつ70ギルした。聴聞客の中には、聖堂に私財を全部寄付したものがいるが、正直に言って、あんまり布施の額が高くなるようなら遠慮したい、と私は思う。

注1
 凱旋門はサンドリア南北を繋ぐ大門で、東西の柱に騎士の像が彫られています。南から入ると、ドラギーユ城から見下ろせる閲兵場に繋がります。このようにサンドリアでは合理的な設計がされていることがわかります。(ウィンダスが雑然としているのは、魔法で跳ぶことが出来るからでしょう)

注2
 ヘアは野兎ですが、ララブとは種類が異なります。ララブは家畜用に品種改良された兎が野生化したもので、クォン大陸はヘア、ミンダルシア大陸にはララブと住みわけができているようです。

注3
 狩人のジョブクエストを達成したとき、ミスラの思想に触れることが出来ます。


(02.09.28)
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