その78

キルトログ、Librossと狩りをする
 

 自分は15レベルになったら戦士に戻ると決めていたので、白魔道士の装備品の更新を渋っていたのだが、将来的にはこの修行の続きをするのが目に見えていたから、結局一新することにした。

 装備は変えて正解だった。買ったのは魔法を助けるロッドではなく、ずしりと重いハンマーである。私にはやはりこっちの方が似つかわしいと思う。身体にはリネンローブをまとい、解放された頭部にはサークレットを巻いた。ズボンも靴も新しい。頼りないのは盾ばかりで、これは14レベルになると魚鱗の盾が兼用で使えるから買い換えなかった。だから左手だけがいやに軽い感じがする。
 

 前回の旅で13レベルになったばかりである。今日も気持ちよくコンシュタットへ出かけられそうだ。
 北グスタベルグにLibross(リブロス)というエルヴァーンのシーフがいた。彼とは面識があった。私がサンドリアで修行をしていた頃で(何だかひどく昔のような気がする)、騎乗のまま失礼と言いながら、チョコボの上から挨拶をくれたのだった。最近ではときどき手記を見ているという声を頂く。飽きっぽい私がこれを続けていられるのも一重に皆さんの声援のおかげである。

 北グスタベルグの二分された領域のうち、彼は東側にいたので(注1)、私のいる南グスタベルグまで駆け戻ってきた。そのときRyudoとすれ違った。忙しいので失礼、と過ぎ去っていった。思えば彼にはよく会う。それだけヴァナ・ディールを動き回っているのだろうが、一度組んだばかりで姿を見ない人も多いことを考えれば、Ryudoとは何かの縁があるのかもしれない。

 改めてLibrossと出会って礼を交わした。私はまず、大人数のパーティがよいか、それとも少数がよいかを尋ねた。彼はどっちでも構わないと言うので、とりあえず二人でやってみることにした。目的地には参加希望を出しているエルヴァーンの白魔道士(14レベル)がおり、先に売れてしまうことを考えたが、二人で何とかなる可能性は私には高いと思われた。何故なら、Librossが他でもない12レベルのシーフだったからである。

 私たちは高地の中央に出て、マッド・シープやミスト・リザードを標的にした。嬉しいことに、場所、敵、パーティ構成のバランスが非常にとれていた。笑いがとまらない、というほどではないにしても、私たちは実に効率よく敵を倒していった。

 むろん危険な目にはあった。特に安心して緊張が弛緩するようなときである。一度など女神の祝福まで使って、戦闘をようやく終わらせたとき、私の体力がわずかに1(!)だったことがあった。また別に、Librossが追い詰められたとき、絶対回避というシーフのジョブスキル――一定時間の物理攻撃をすべて無効にしてしまう――を使って、危うく難を逃れたこともあった。二人ともそれを運と捉えず、天の叱咤だと思った。だからスムーズに進んだのだろう。幸い二人ともやられることはなく、Librossは順調にレベルアップを遂げた。旅のはじまりがレベルアップ直後でなかったら、私もたやすく次のステップへ進んでいただろう。


花畑の中かがむKiltrog、丘上に二つの風車 座り込んで回復をする(風車の隣りにいるのがLibross)

 はたして、エルヴァーンのシーフとガルカの白魔道士という異端のコンビが、なぜこれほど効率よく狩りができたのか。その理由について考えてみたいと思う。

 バストゥーク近郊では、12、13レベルの鍛錬は案外むつかしい。コンシュタットのマッド・シープやミスト・リザードは、単独で倒すには少々手ごわい。かといって6人では物足りない。バルクルム砂丘に足をのばすと、今度は敵があんまり強い。従って臨機応変に、最適な人数で行動する必要がある。

 シーフはレベル15になると、アイテムの収集率が上がるし、敵の後ろから強力な不意打ちを喰らわせることができる。従ってそれ未満のレベルでは、往々にして声がかからない。少なくとも同レベルなら、戦士やモンクがほぼ優先的に誘われる。特に6人で冒険しようという時はこの傾向が顕著である。

 私は白魔道士だった。魔力はせいぜい一人か二人ぶん、体力があり、むしろ殴ることが得意。さて相棒に適切なのはどんな人物だろうか。

 二人で攻撃する場合、敵のターゲットは分散するのが望ましい。モンスターは自分にとって一番嫌な存在を真っ先に攻撃する(面白いことにこの傾向は、知性の程度にかかわらずほぼ全種に共通する)。戦士の挑発はモンスターを怒らせて自らを標的とする技だ。白魔道士もやり方次第で相手を激昂させるが、私の経験では、これまでどう行動しようと、戦士の挑発を覆すことは出来なかった。

 戦士やモンクなどの攻撃力が高いジョブは、与えるダメージが大きいので、相手にとってより脅威となるであろう。白魔道士の攻撃ではとても追いつかない。だが赤魔道士や、シーフならどうだろうか。敵を怒らせるという点に関しては、両者とも同程度に脅威であり、その点私とつりあいをとることができるだろう。

 ここで重要なのは、私がガルカの白魔道士であるという点だ。もし他の種族だったら、この組み合わせが効果を上げたかどうか疑わしい。頑丈だったからこそパーティがうまくいったのだ。この役目はガルカか、せいぜいエルヴァーンでなくてはならない。通常もっと重宝される、ヒュームやタルタルによって置換することは無理なのである。

 敬遠されがちなジョブと種族の組み合わせも、場合によっては大きな武器に化ける。適材適所という言葉をこれほど痛感したことはなかった。それは私自身の大きな励みになった。確認したわけではないが、たぶんLibrossも同じ気持ちだったと思う。


 Librossの本職はモンクである。やはり彼も、まだ未熟な時期、10レベル前後で国をうつって修行を重ねたという。それゆえ私の手記の内容に親近感を覚えたそうである。
 少なくとも私にとっては、些細なきっかけからだった。その直前まで自国を離れるなど考えてもみなかった。みんな同じなのだろうか。Librossも私の意見に同意した。そんなものですよ、と。

 運命なんて確かにそんなものかもしれない。

  
注1
 以前説明したとおり、コンシュタット高地に繋がるのは西側です。断層で区切られており、一段高くなった東側からは臥竜の滝が流れ落ちています。
 南グスタベルグを除けば、東側から行けるのはパルブロ鉱山のみです。


(02.11.01)
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