その89

キルトログ、メリファト山地を歩く

メリファト山地(Meriphataud Mountains)
 盆地状の地域で、時折、砂塵が吹き荒れる過酷な環境である。
 その最大の特徴は、タルタル族に『ドロガロガの背骨』と呼ばれる、優に東西数マルムにわたって伸びる白い棒状の巨大な構築物で、メリファト山地を南北に分断している。
 また、東部にはヤグード族最大の拠点オズトロヤ城があり、彼らの巡視隊が常に山中を周り、警戒にあたっている。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 アラゴーニュ地方に属するメリファト山地は、タロンギ大渓谷の北部に位置する。以前仲間を集めて出撃せんと密かに計画を立てていたが、当時のレベルでは難しかろうと助言を受けて敬遠していた。鍛錬を積んで22レベルになったが幸い、何が待っているのかをひとつ見てやろうという心づもりである。


 タロンギを南北に走る通路を辿ると容易にメリファトの入り口へ着く。ここがコルシュシュ北端なのであるが、山地へ踏み込んでも――地続きだから当然とはいえ――タロンギの延長であるとしか思えない。それほど地形も地質も似通っている。タロンギの通路がもと川だったことは以前述べたが、それは北に源流を発するとみえて、メリファトに入ってのちも、両側にせり出した崖の下を辿ることになる。これが更に北のソロムグ原野まで続いているのか興味深いところだ。

 いささか拍子抜けすることには、敵影が殆どなく、羽根音を響かせる
ジュブジュブ鳥(注1)と、崖上をゆったりと移動するヒル・リザードの影をまばらに見るばかりである。誰かが狩りとってしまったのかと思ったが、そうではないらしい。一般にメリファト山地は人が随分と少ない。私くらいのレベルの多くはブブリム半島やバルクルム砂丘に赴くか、あるいは新しい狩場と仲間を求めてジュノ大公国への道を辿る。ジュノはソロムグ原野のさらに先にあるのだが、以前Librossと話した際には、メリファトから遡るには大変に骨であって、よほど無知か、向こう見ずか、天邪鬼でない限りは、サンドリアの隣地ラテーヌ高原からジャグナー森林への道を選ぶそうだ。ジュノは両大陸を繋ぐ橋の上にあるからどちらから行ってもよいが、敵が危険となれば安全な方を選ぶのが道理というものだろう。

 従ってここで冒険者の姿を見ることは滅多にない。ジュノからチョコボ騎乗の人となり、ウィンダスへ向けて風のように駆け去って行く人物が大半である。なるほどこれだけ敵が少なければ鍛錬場に値しない。風のうわさではお馴染みのゴブリンやヤグード、俊敏な肉食恐竜のラプトルなどが跋扈(ばっこ)しているとのことだが、入山してまるで見かけないということは、どこかに密集している証拠である。これもまた危険で人を寄せ付けない一因なのかもしれない。


メリファトのサボテン

 見渡す限りの赤土の荒野である。時おり奇っ怪で巨大なサボテンを散見するが、周囲が殺風景なだけに余計毒々しく人目を引く。先に進むにつれて不安がいや増す。ところどころ崖が低くなる場所があって、そうした際に見晴らしが利くのだが、どこかで罠のように獣人が待ち構えているような気がして仕方ない。びくびくしながら歩を進めるうち、目の前に大きな白い影を認めた。数マルムに渡って東西に大きく空を跨ぐそれは、タルタル族がドロガロガの背骨と呼ぶ一大建造物である。

ドロガロガの背骨

 これが何のために存在するのかは諸説入り乱れて、誰も本当のところを知らないのが実情である。ウィンダスに伝承がないということは古代より存在しているとみて間違いない。風化が激しいようでよりごつごつしてはいるが、材質はどことなくホラ、デム、メアの三奇岩を連想させる。メリファトの最東端にはヤグードの居城であるオズトロヤ城が城門を開いている。オズトロヤに繋がるのか、オズトロヤから繋がるのかは微妙なところだが、接しているのは確かだから、何の関係もないとはちょっと考えられない。もしかしたら中が空洞であり、通路か補給路の役割を果たしているものとも考えられる。

 この背骨の下を潜る際にようやく敵らしい敵を見た。ヤグードの斥候であるが、若干手ごわそうであったので気づかれぬよう通り過ぎた。この辺りでは通路がせり上がって平地のようになっているが、ほどなく再び崖に戻り、それからは真っ直ぐに道が続く。時に崖上にゴブリンの背嚢がのぞくのを認めるが、お馴染みのアンブッシャーであって、大した脅威とも思われない。アウトポストの塔が屹立するのを見上げたときには、あがることも出来ずにただ通り過ぎるより他なく、少々心細かったものの、かんじんの駐屯小屋はそれより先にあって胸を撫で下ろした。もっともこの一帯はいまバストゥークが制しているから、決して施設が満喫できるわけではなかったのだが。

 この辺りに
クレーン・フライという、ひらひらと舞う巨大とんぼが群れをつくっている。これが程よい強さだったので、一匹づつおびき寄せては小屋の陰で仕留めた。そのうちにこのモンスターがゴゼビの野草を有していることがわかった。これはチョコボ向けの薬草とされるものである。役に立つのかどうかまだわからないが、どうせ頻繁に足を運ぶ場所でもないから、狩れるだけ狩り、持てるだけ持った。ただし、ひとつひとつかさばるので、大した数にはならなかった(注2)。まあ売り物にするわけでもないからそれほど数は必要でないものと思う。

クレーン・フライを迎え撃つ

 荷物がいっぱいになるまで幾日かを費やし、私は狩りを終えた。せっかくだから、もう目と鼻の先であるソロムグまで足を延ばしてから、入り口ですぐ引き返した。メリファトを南下する旅は、やはり敵影少なく、ずいぶん呆気ない。来るときよりむしろ楽に道を辿り、ウィンダスへ戻って心ゆくまで野宿の垢を落とした。


注1
 ジャブジャブ鳥(原名はJubjub。訳によるとジュブジュブとも)は、ルイス・キャロル作『鏡の国のアリス』で言及される妖怪。

「わが息子よ、ジャバウォックには油断するな!
 食らいつくその顎、捕らえるその爪!
 ジャブジャブ鳥にも心を許すな、そして
 おどろ怒るバンダースナッチにも近づくべからず!」

 ちなみにバンダースナッチもFF11に出てきます。

注2
 アイテムにはまとめ持ちできるものとそうでないものがあります。前者は同じ品物であれば、整理して12個までを一つのアイテムとして処理できます(例:クリスタル。炎のクリスタル×5というふうに表示されます)。一方、それ以外のアイテムは、単品でアイテム欄ひとつを要し、まとめることが出来ません。文中のゴゼビの野草は後者に属しています。


(02.12.01)
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