その110

キルトログ、前線でガルカン・トリオを組む

 以前の狩りの際に、もう少しで26レベルへ上がれるところだったから、せめて誘いの声のかかる前に、自力で少しでも鍛錬しておこうと思い、バタリア丘陵へ出て、ストーキング・サプリングと一戦交えたのであった。

 楽な相手ではあったが、思いのほか戦いが有利に進まないので、諦めてジュノへ戻った。その時
Yashin(ヤシン)という人から、今4人メンバーがいるのだが、協力して貰えないかと声をかけられて、私は勇んでル・ルデの庭へ上がり、慰霊碑前に集った仲間たちのところへ駆け寄った。

 ヒュームのYashin。黒魔道士25、白魔道士12レベル。
 ヒュームの
Reep(リープ)。白魔道士24、黒魔道士12レベル。
 ガルカの
Demetrius(デメトリウス)。戦士25、詩人12レベル。

 おお、ガルカがいる、と私は喜んだのだが、驚くなかれ、もう一人雇われた前線の戦士もまた、ガルカであった。ガルカ三人、それも全員が戦士である。こんな組み合わせは初めてだ。少なくとも私にとっては、と付け加えるべきだが、そうそう頻繁に起こる組み合わせともちょっと思われない。

 ガルカの
Mercurius(メルクリウス)。戦士24、モンク12レベル。

 エルヴァーンの
Douelya(ドウエル)(白魔道士24、黒魔道士12レベル)が、最後に加わり、私たちはクフィム島を目指すことになった。


 あのどこか幽鬼のような、頭上に武器を振りかざしたダンシング・ウェポンを狩ろうと、意気揚揚と出発したはよかったが、いみじくもYashinが言ったように、クフィム島にはそのとき、80人以上もの人間がひしめき合っていたのだった。

 例の海底洞窟に露出した骨の近くには、ダンシング・ウェポンが数匹出没するのだが、いずれも当たり前のように誰かと戦っており、我々の不安を増長させた。死の不安ではない、獲物を奪われる不安である。既に三人の間では連携の話し合いもついており、Mercuriusが両手剣でハードスラッシュ、Demetriusが片手剣でレッドロータス、最後に私が、実に久しぶりにバグナウを腕にはめて、コンボでとどめをさす予定であったが、そうした取り決めも、モンスターが見つからなければ、結局何の意味もなさなくなったはずであった。


三人のガルカ戦士。
左からMercurius、私、Demetrius。

 私たちはデルクフの塔まで出向いた。Douelyaが、入り口は混雑するから避けた方がよいと言うので、我々はすべすべした岩の突き出ている軒下に陣取った。私が以前、KarpinやJudeらと拠点にした場所からは、入り口を軸にして正反対に位置するところであった。

 獲物を釣って来るのは、25レベルの戦士が良い、とReepが言った。それは私だったし、私しかいなかった。自分はこういう手際のあまり上手くない方だが、これも経験のうちだと考えて、雪上に突き出た骨に沿って走り、手ごろなモンスターを探した。

 詰まるところ、例のクリッパーであるとか、巨人などしか捕まえられなかった。みんな、特にYashinなどは、岩のそばに漂うダンシング・ウェポンを釣って来ることを熱望したのであるが、私が仲間と獲物を確認し合っている間に、たいてい横あいから誰かがかっさらって行ってしまうのであった。むろんもたもたしている私が悪いのだが、これでは有効に時間を使えない。そこで、デルクフの塔の中で巨人を狩ろう、という案に落ち着いた。釣り係が首になっていささか残念であったが、未だ足を踏み入れてない塔に入るのは、心躍る体験であった。


 塔という言葉には、人造的なニュアンスが漂う。人によってはジュノ上層の時計塔のような、洗練された建造物を連想するだろう。

 だがデルクフの塔の造りは、ずっと原始的である。例の三奇岩の中身をそのままくり抜けば、かくもならんというような、随分のっぺりした印象だった。装飾は殆どなく、ホールはやたらと広い。これだけの空間を確保するには、むろんそうするに足る理由があったはずなのだが、隙間を埋めるものは何もなく、ただ巨人たちとコウモリだけが、窮屈な思いからは解放されて、わがもの顔で歩き回ったり、飛び回ったりしているのだった。

 私たちはモンスターの間を縫って走り、一個中隊がまとめて突撃できそうなほどの幅広い階段に達した。DouelyaやYashinによれば、この真ん中に陣取って、敵をおびき寄せては倒す作戦だった。モンスターはふつう階段を越えて動こうとはしないものだし、またこうして中腹にいるからには、上の階からも下の階からも、獲物を釣って来られる、という按配だった。何と言う賢い方法であろう。


デルクフの塔内。
2Fへ通じる階段
息絶える巨人

 塔の中は静かで、巨人の足跡とコウモリの羽音が時に響くだけである。先客のパーティもどこかへ去ってしまった。

 私たちは狩りを開始した。

 釣りを担当したのは、私同様、この塔に入るのは始めてというDemetriusだった。彼は買ったばかりのブーメランを持っていた。それを小器用に巨人に投げつけて誘い出すのだ。私がその手際を褒めると、Demetriusは、ブーメランは矢や弾丸を消費しないので、安上がりで済むのだ、と効能を説明してみせた。

 前衛三人のうちで、唯一ビートルハーネスを着ているMercuriusは、そのせいで防御力こそ弱かったが、4、5種類の武器を使いこなす達人だった。どんな連携もおまかせ、というわけだ。ところで彼が両手剣を構え、私が格闘武器を握ったのでは、三人のうち二人もが盾を持たないことになり、回復が大変なのではないか、と私は思った。だがReepが言うには、

「ガルカはタフだから、助かる」

 そう、人類最強の体力と怪力、それがガルカの長所である。だから、我々は死ななかった。むろんReep、Douelya、Yashinが適時回復してくれたからだが、死なない、戦闘不能にならない、ということは大切である。この日は誰ひとり、命からがらの状態にすらならなかった。前衛と後衛がお互いの職務を忠実に遂行したからである。素晴らしいことだ。

 ただし、デルクフの塔で戦った敵が、このレベル帯の6人が積極的に狩りたいような、旨味のある獲物でなかったのもまた事実だった。巨人たちは、エインシェント・バットシーカー・バッツなどのコウモリとそう強さが変わらず、大して手ごたえがあるわけではなかった。


 欲を言えば、自分たちよりやや「強い」だけの敵と連戦し、調子を整えた上で、「とても強い」敵や、「とてもとても強い」敵と、矛を交えていくのが望ましかった。まあそこまでは言うまい。上達までわずかだった私を皮切りに、6人のうち5人がレベルアップを果たした。鍛錬としては、上々の成果と言うべきだろう。


(03.02.13)
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