その117

キルトログ、今度はコンシュタットの大羊を狙う

 夕方にラテーヌ高原を抜け出した我々だが、日が暮れる前にコンシュタット高地へ着くことが出来た。

 私とLeeshaは、チョコボに跨ったまま高地を移動して、ハンターの有無と、トレマー・ラムの出現場所を確かめた。やはり幾人か張り込んでいる様子だが、1、2人程度であり、ラテーヌの競争率の比ではない。

 大羊はやはり二つの地点に出没する。バルクルム砂丘へ抜ける出口の手前付近。前回私が対決したのはここだ。もう一箇所はデムの岩の西側。大羊の影を見つけて、霧の中で立ちすくんだ場所である。まだずっと弱い頃は、トレマー・ラムがずいぶん神出鬼没に思えていたが、種明かしをすれば、二つの出現場所の距離が離れているので、大羊がエリア中を徘徊しているような錯覚を覚えたのだろう。誰かを追いかけていく場合は別だが、きゃつらは基本的に、思ったより遠出はしないものなのだ。もっとも専門のハンターが張り込んでいるような現状では、遠出どころか、出現して数歩歩くことですら困難であろうが。

 
 我々は二つの地点を行ったり来たりした。チョコボに乗ったままである。何しろ600ギルである。相変わらず使い古された鞍の感触と、むせかえる大鳥の体臭に、特別な付加価値のあろう筈はないのだが、制限時間いっぱいまで乗り倒してやらないことには、何だかこちらの気が済まないのだった。


 そのうち、我々は自然と二手に分かれた。私がバルクルム砂丘出口前、Leeshaがデムの岩近くに張り込んで、各自トレマー・ラムの出現を待つようにした。Leeshaは手持ちぶさたを紛らわすためか、あるいはウェポンスキルを発動させやすくするためか(注1)、近くにいる普通の羊を倒しているようだ。戦利品に羊の肉などが加わる。我々ガルカは肉を生で食べることができるので、気つけの食事には丁度いい。

「こうやって待ってると、カウボーイみたいですねー」
 
 Leeshaが言い「ラムボーイですけどー」と続ける。正確には、Leeshaも私も「ボーイ」ではないわけだが。


 この間、バタリアで雪の降るのを見た、とLeeshaが言った直後、彼女の目の前に大羊が出たらしい。私が到着する間もなく、一人で片付けたようだが、雄牛の角と毛皮が大量に取れたばかりで、ラノリンは影もかたちもない。私は少々がっかりしたが、収穫は充分であった。角は2500、毛皮は1000ギル前後で取り引きされる。競売所に仕入れるや飛ぶように売れるそうで、チョコボ代の損失を補ってなお余る儲けだ。

 時間が経つうちに、どうやらハンター氏たちは引き上げたとみえて、大羊を狩るのは私たちばかりになったようだ。正確には「Leeshaばかり」と言うべきだが。というのは、トレマー・ラムは、デムの岩の近くにばかり出現して、私の眼前には、尻尾の毛すら見せなかったからだ。遠くからいくさの音が聞こえて、自分がそれに参加していないというのは、何ともやるせない気分である。この不均衡が、彼女との探査能力の差と、出現確率の差、どちらに拠るものであるかはわからない。たぶんその両方だろう。

 彼女は34レベルのシーフで、大羊に遅れを取るとはまず考えられないが、特殊技にかかって不覚をとる可能性は充分にある。それを心がけていてよかった。私が南に駆けて戦闘に参加したとき、Leeshaは石化をくらって動けない状況にあって、あやうく命を落とすところであった。


手負いのトレマー・ラム。
油断は禁物

 この日、ほとんど狩りも終わろうかというとき、やっとトレマー・ラムが私の前に姿を現した。私は大喜びで斧を振ったのであるが、ご推察の通りに、この獲物がラノリンを落とすことはなかった。

 Leeshaもまだ序盤には、バタリング・ラムだってあまり落とさないのだから、とのんびり構えていたが、これだけ戦って一度も当たりがないということは、トレマー・ラムの身体には、そもそもラノリンが付着してないか、あるいは付着していたとしても、現実的でないほどその確率が低い、と考えた方がよさそうである。きっとラテーヌ高原のゴブリンの方が、ここの獣人よりずっと甲斐甲斐しいのだろう(注2)

 従って今回の狩りは、本来の目的からすると失敗だったわけだが、大量の角と毛皮はひと財産であり、その意味では文句なしの大漁である。ラノリンは今度手に入れればよろしい。我々はチョコボを新たに借り出して、ジュノへ帰ることにした。


 ところで旅の最後に、私の目の前を通りかかり、立ち止まって話し掛けてきたヒュームの御仁がいて、名前にまったく聞き覚えがないものだから、読者氏だろうか、と思っていたのだが、人違いであると謝って立ち去られた。誰に間違われたものか、少々興味を覚えないものでもない。


注1
 雑魚敵を倒し、TPをあらかじめ100まで貯めておくと、ウェポンスキルを即座に出すことが出来て有利です。
 また、コンシュタットには、ストレイ・メリーという通常羊のNMが出現するので、羊を倒し続けていると遭遇することがあるかもしれません(運がよければですが)。

注2
 ラノリンは実際に野生羊の毛に付着しており、獣脂蝋燭の原料になる化学物質ですが、ヴァナ・ディールでは、「羊毛から取れる脂をゴブリンが精製したもの」という設定になっています。ゴブリン石鹸の材料になるんだとか。

(03.03.15)
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