その118

キルトログ、パシュハウ沼を通る
パシュハウ沼(Passhow Marshlands)
 周囲を高地に囲まれた中、非常に低い場所にできた一大沼沢地。
 大小無数の沼と繁茂する植物の浮島に、うっかりすると足をとられるため、通過するだけでも容易でない。
 その上、この沼はクゥダフ族の本拠地となっており、旅人はおろか、冒険者も避けて通る恐ろしい場所とされている。
(ヴァナ・ディール観光案内より)
 ジュノへ上がるルートは、私がこれまで説明した二つに加えて、実はもう一つある。

 コンシュタット高地の北東に、パシュハウ沼へ通じる抜け道があることは、その37で説明したが、ここからもロランベリー耕地を抜けて、ジュノへ到達することができる。従って上京経路は全部で三つ――クォン大陸から二つ、ミンダルシア大陸から一つ――あり、それぞれがサンドリア、バストゥーク、ウィンダス出身者に対応している。もっとも一人旅は危険なので、殆どの者は安全を期し、ジャグナーからジュノを目指す「サンドリアルート」を選ぶのであるが。ただしそれすらも油断ならない旅であることは、私が以前皆さんにお伝えした通りである(注1)

 
 実際問題として、ジュノ上京のさい、「バストゥークルート」が問題になることは殆どない。「ウィンダスルート」の方がまだしも現実的である。同じ大陸内にもっと安全な経路があるから、余計に影が薄くなっているのだろう。

 ただ、チョコボに乗れる身分なら、敵に襲われることはない。最短のルートを選んで大公国を目指せばいいわけだ。

「パシュハウには、行ったことありますか?」

 Leeshaが尋ねるから、私はない、と答えた。正確には、入口から少しだけ踏み込んで、沼兎を一羽だけ倒したことがあるが、初めて来たも同然である。Leeshaは、いちどきにグゥーブーとモルボルが見れるなんて、と言ってくすくすと笑う。グゥーブー、モルボルとは一体何であろう?

エリア内では随所に
小さな沼が散見される

 パシュハウ沼は水気の多い場所だ。たまに晴れることもあるそうだが、大抵は年じゅう雨、さもなくば曇りの天気を繰り返しており、地面が乾くということがない。足場の悪さを補うためか、長い板を渡し、歩道を設けてある場所もあるのだが、基本的にはぬかるみである。チョコボに乗っていてよかった。もし自分で走り抜けていたら、モグハウスで具足の泥をたっぷり落とさねばならなかっただろう。

 この地は概して冒険者に人気がない。湿気の多い天候は、気を滅入らせるばかりではなく、しょっちゅうウォータ−・エレメンタルを発生させるので、魔法の使用に神経を使うのだ。そんな危険を冒すくらいなら、他に良い狩場はいくらでもあるので、パシュハウはもっぱら通り道としてだけ利用されている。そういう意味ではメリファト山地に性格が似たエリアだと言えようか。


 空が鉛色だと視界がなお悪く、私は前に進むことだけに専心していたのだが、Leeshaが突然手綱を引き、指を差したので、チョコボを立ち止まらせ、その方向に目をやった。湿原に、図体のずいぶん大きい妖怪が立ち尽くしている。明らかに人間型なのであるが、二本ずつの手足という点を除けば、獣人にも北のジャイアントにも、まったく似ているところがない。

謎の人型生物、グゥーブー

 この生物がグゥーブーである。ずんぐりとした体型で、いやに長い両手と、顔の広さに比してボタンほどの大きさしかないつぶらな両目が特徴である。背中には苔がこびりついて芽を吹いている(注2)。いかにも愛嬌のある容姿だが、実際には獣人同様好戦的な性格だ。奴ら(彼ら?)が結局は何者なのか、ヴァナ・ディールでも解けない謎の一つとなっている。


 ところで、もう一種の
モルボルとやらにもじきに見ることが出来た。先刻のグゥーブーが人間型だったので、いきおい知性的な生き物を期待したのであるが、何のことはない蛸である。ただしその大きさは途方もなくて、胴体――頭というべきか――の部分だけで既に、チョコボに跨った我々を凌駕する。モルボルはずる、ずると音をさせながら、苔色の震える巨体をひきずって移動するのであるが、我らがLeeshaはといえば、そのグロテスクな化け物のそばまで寄って行って「おっきー!」などと言ってはしゃいでいるのである。

 そのうち頭の下へ潜り込んでしまった。「食べられちゃったの図」などと言っている。チョコボに乗っていなかったら、本当に食われてしまうところだろう!


大蛸のモルボル

 アウトポストを過ぎ、我々はエリア北東の端に到達した。ここから隣接するロランベリー耕地へ抜けることができる。

 もし貴方がとんでもなく勇敢か、あるいは同じくらい愚かであれば、大通りをそれて、込み入った小道に踏み込んでみるがいい。クゥダフやゴブリン、グゥーブーやモルボルは、道の狭さゆえにかわすことは困難であるが、もし命が残っていたら、南へと抜けて、クゥダフの本拠地
ベドーへ踏み込むことができるだろう。

注1
 「「サンドリアルート」というような言い方は、私の個人的な便宜上の用語であって、一般的に使われているわけではない。
 ここでは以下のように定義しておく。

【サンドリアルート】
ジャグナー森林→バタリア丘陵の、ノルバレン地方を経由するルート。
【バストゥークルート】
パシュハウ沼→ロランベリー耕地の、デルフラント地方を経由するルート。
【ウィンダスルート】
メリファト山地→ソロムグ原野の、アラゴーニュ地方を経由するルート。」
(Kiltrog談)

注2
「グゥーブーの背中に生える植物はボヤーダ苔と呼ばれる。聖地リ・テロアで発見された光り苔に組織がよく似ているため、グゥーブーの起源にまつわる論争に決着がついた。ただし、それでも謎が多いことにかわりはないのだが」(Kiltrog談)


(03.03.19)
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