その133 キルトログ、山奥の秘湯につかる(2) ゲルスバ砦も、エレベーターに達するまではそうでもなかったが、崖に上がってからは、途端にオークたちの数が増した。29レベルというのが幸いして、私に襲い掛かって来るようなのは一匹もいなかったが(驚くなかれ、Leeshaの方はシーフ40レベルなのだ)。 崖下のそれより幾分か豪華な、何となくバッドギットの天幕を思わせる一戸建てが建ち並ぶ。入り口の両柱に頭蓋骨を飾り、床の間にはしっかりした板を張ってある。中には屋内で尖った松明を燃やしていたり、部屋脇に酒甕を置いてある家もあった。オークといえど、身分によって豊かな暮らしをおくる者がいるのだ。 門柱のしゃれこうべは、ぞっとする奴らの風習の一つだが、幸いなことに人間のものではないようだ。Leeshaと傍らに立って比べてみたら、ガルカやヒュームの頭ではとても大きさが及ばない。きっと奴らの同胞のものだろう。頭蓋骨のサイズはオークと完全に一致する。もっともLeeshaが疑問に思ったように、鼻の穴の有無という問題は残るわけだが。
オーク「貴族」の住宅地を過ぎて、我々はユグホトの岩屋へ入った。この天然洞窟を通り抜けて、我々は外へ出たが、前方から漂ってきたのは、湿り気を帯びた暖かい空気だった。そう、終点だ。我々は無事に山奥の秘湯へとたどり着いたのである。
岩の間から熱湯が染み出して、天然の湯桶に注ぎ込まれている。温度もちょうどよい。Leeshaははしゃいで、肌着だけになって湯につかった。私もさっそくその真似をした(注1)。 この岩場は膝ほどの深さである。Leeshaくらい小柄――というのは、私から見て――だと、屈んだとき、ちゃんと肩まで湯につかるのだが、私の場合は腰に届くか届かないかで、半身浴にもならない。この湯に精神的なリフレッシュ以外の、どのような薬効があるのかはわからないが、Leeshaは「お肌すべすべ」と言って喜んでいる。なお小柄なApricotなら、顔まですべすべになっているかもしれない。 クリルラの薬ビンを湯に浸して採取する。おそらく飲用にするのだと思うがどうであろう(注2)。 温泉の端は切り立った崖になっていて、若干怖くはあるが、それだけに景色は素晴らしい。残念ながら夜中の3時である。空も曇りがちで、せっかくの見晴らしを満喫したとは言いがたい。それでも身も心もぽかぽかになって、我々はまた鎧と武器をつけて、来た道を戻っていった。オークどもに占拠されてさえいなければ、さぞかし療養地として評判を呼んだことだろうに、と思う。 夜が明けて、我々は無事サンドリアに戻った。私はさっそく女将軍のもとへビンを届けに行った。 彼女は礼を言って、私のもの問いたげな視線に自ら答える。この湯を何に使うのか? 彼女は、絶対に内緒だと念を押してから、自分の秘密を語り始めた。 剣技大会の決勝で、トリオン王子と対戦した彼女は、見事彼を打ち負かしたが、その時の傷がもとで、片目を失明してしまったのである。 今でもその傷が痛むことがある……。それを彼女は、自分への罰だと考えているようだ。すなわち「ひたすら名声を追い求めた愚かさに対する当然のむくい」として。 なるほど、彼女の片目を覆い隠している前髪には、そのような秘密が含まれていたのだ……。 私は余計なことを言わず、報酬のリンクスバグナウを貰って、神殿騎士団の詰め所を後にした。 注1 このゲームでは、全装備を解除しても、下着を身につけているので、全裸のグラフィックにはなりません。 注2 日本の温泉は、温泉法という法律に定められた基準を満たすものを言います。 「温泉とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。」(抜粋) (別表では、「温度が摂氏25度以上」「リチウムイオン、ストロンチウムイオン、水素イオン、遊離炭酸など、19種類の物質のうち、一つでも規定以上を有する」と定められています) ちなみに、火山国である日本では、温泉は一般に浴用とされますが、欧州では飲用に使うことも珍しくはありません。 (03.05.04)
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