その158

キルトログ、モグ祭りのお土産を買う

 ある日の夕方のことである。ウィンダス連邦のモグハウスの中で、水音を聞きながらくつろいでいると、突然にモーグリ君が話しかけてきた。この忠実な下僕が自分から話を始めるのはまことに珍しい。

「モグ祭りが近いクポ」

 そう彼は言った。モグ祭りとは果たして何ぞや。

「ブロンズベッドで寝てたら、何だか故郷が恋しくなっちゃったクポ」

忠実なモーグリ君。
故郷は何処にあるのか?

 私の部屋は質素で殺風景だ。内装を豪華にする時間も金もない。唯一の家具であるベッドは、今なきChyrisalisから貰ったものである。部下のモーグリ君があるじの寝床で休んでいるとは知らなかった。正直その事実にはかちんと来たが、それ以上に、彼の話の内容に強い興味を覚えた。

 モーグリ君はしばらくの暇乞いをした。帰郷に際し、両親に土産を持っていきたいという。父は弓術大会に出る。母はおしゃれをする。従って、モグパパにはパワーボウを、モグママにはビートルリングを贈るつもりだ。しかし彼はどうやってこれらの品物を手に入れればいいかわからぬ。「これじゃあ帰れないクポ……」そう言って切なそうに私を見つめるのである。

 モーグリ族は日頃からかいがいしく働く。報酬を要求せぬし、文句も言わぬ。冒険者は等しく彼らの世話になっている。しかし時に、恐ろしいほどあつかましい態度を見せることがある。


 いつぞやモーグリ族が集団で旅行に出かけたことがあった(注1)。ヴァナ・ディール中で迷子になったモーグリを救わんと冒険者たちが立ち上がった。私も彼らに混じって探索を手伝った。ようやくバストゥーク大統領府で一匹を見つけた。彼が私に言った言葉はこうである。
「でもどうせなら、もっと大勢で来てくれた方が嬉しかったクポ」


 私はかぶりを振りながら外へ出た。競売所へ出かけてみたが、ビートルリングもパワーボウもない。やはりジュノへ行くべきだろう。逆にあの国で入手できないなら、モーグリ君には手ぶらの帰郷を我慢して貰わねばならぬ。

 モグハウスで戦士にジョブを変えた(モンクでは未だ20レベルに届かず、チョコボに乗れないからである)。本来なら戦士の装備をきちんと身に着けるべきであったが、面倒に感じたので、着のみ着のままで飛び出してきた。ガルカが単騎、ジュノへ駆ける。しかし裸同然の騎乗では文字通り格好がつかない。

 ソロムグ原野で出口を間違えたので、ロランベリー耕地を迂回し、バタリア丘陵からジュノ上層へ入った。上層には百人以上の冒険者が群れていた。この国には相変わらず人間が殺到している。以前は競売所のあるル・ルデの庭とジュノ下層に人が集中していたが、競売員を各エリアに置くようになってから、混雑が緩和されるようになった。要するに港と上層に人が流れ込んだので、結局ジュノはどこもかしこも人でいっぱいの街になったのである。

 その競売員から二品を買い求めたとき、友人のLibrossに見つかってしまった。身ぐるみでも剥がされましたか、と言われたのには赤面するしかなかった。何処で誰に見られているかわからぬ。やはり多少面倒でも身だしなみくらいはきちんと整えるべきである。


 モグハウスに戻って土産を渡すと、モーグリ君はたいそう喜んだ。私の留守に暇を見つけて里へ帰るという。数日後、彼は新しい金庫を担いで戻った。これは前のより広々として荷物が多く入る。50個だった貯蔵量が60個になったのである。これは嬉しい。少々面の皮が厚い部分もあるが、やはりモーグリ君は主人思いの心優しい従者なのであった。

注1
 スクウェア主催の最初の公式イベント。時間内にモーグリを一匹見つけるごとにポイントが増え、その数に応じて装備アイテムのベルトが貰えました。ちなみに一人よりも大勢で見つけた方が多くポイントを貰えたので、モーグリは文中のような発言をしたのです。


(03.08.20)
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