その161

キルトログ、クフィムの池で戦う

 前回の冒険を終えて私はマウラで休んだ。モンクのレベルは19に届いている。このまま船に乗って、需要の多いバルクルム砂丘へ向かうか、あるいはウィンダスに戻ってジュノへ上京するか、思案のしどころだったが、何となく後者を選んだ。いちいちウィンダスへ戻らなくてはならないのは、モグハウスで戦士にジョブを変えないと、レベル不足でチョコボには乗れないからである。もっとも免許の有効レベルは20からなので、じきにこうした煩わしさからも解放されるに違いない。

 ジュノで狩りをするのは随分と久しぶりである。戦士の修行を一時的に放棄したのは、刻々と移り変わる戦況・戦術に対応しきれなくなったからだが、やはりこういったものは継続的な知識と経験の積み重ねがものをいうので、モンクのレベルが戦士に追いつこうとする頃には、再び盾と斧を、今度は自信を喪失することなく手にすることが出来るかもしれない。

 入京してまもなく、エルヴァーンのNeoz(ネオス)(忍者19、戦士9レベル)に声をかけられた。各自シグネットをかけて、最下層であるクフィム島の入り口に集合せよという。私はル・ルデの庭にあるウィンダス大使館に足を運んだが、驚いたことにはガードの姿がない。ならば誰にシグネットを頼めばいいのだろう。私はさっそく無知ぶりをさらして、結局そのまま集合場所へ馳せ参じた。大使館はジュノの最上層にあるが、皆そこまで上がった様子がないので、どうやらジュノ上層か下層辺りのどこかでシグネットをかけて貰えるのだろう、と推測する。

 ヒュームのRed(レッド)。吟遊詩人19、戦士9レベル。
 タルタルのNats(ナッツ)。戦士20、モンク10レベル。
 タルタルのAdny(アドニイ)。赤魔道士19、戦士9レベル。
 そして「ジュノ周辺で狩りをするのは初めて」というエルヴァーンのMyua(ミュア)。白魔道士19、赤9レベル。

 
 獲物の話を聞いていなかったが、経験の豊富な彼らには周知の事実のようだ。海底洞窟を抜けた先で立ち止まり、地虫系のランド・ワームを狩るという。ランド・ワームとは要するに「ミミズ」である。私がシャクラミで長々と相手にしていた獲物である。暗い土の下、白い雪の上で、冒険者は好んでミミズを狩る。既に先客がおり、しばらく行った先でやはり地虫を取り囲んでいる。こんなふうに狙われるミミズどもの哀れなことよ。だが同じことを私以外の誰かが考えたとしても、やはり地虫のもたらす豊富な経験値の魅力には抗しがたいだろう。

 前線で身体を張るのはNaozとNatsと私である。いつものように挑発を仕掛けて敵の的を絞らせないようにするのだが、いちどランド・ワームとの戦闘が終わったあとで、Naozは苦々しい顔をしながら、自分が空蝉の術を使っているときには、挑発は仕掛けないでくれ、という。

 恥ずかしながら私は自分の専属以外のジョブに疎い。調べてみて納得した。空蝉の術とは、紙兵という形代(かたしろ)を用意し、これに術をかけ、術者自身の幻影を作り出す忍術である。これによって敵の直接攻撃を3〜4度も避けることが出来る(注1)。従ってNaozに空蝉の術がかかっているときには、我々が挑発をかけて敵の注意を引く必要はない。ばかりか怪我をするばかりで損である。白魔道士にも悪い。モンクもただ殴ってばかりいればいいものでもないらしい――当然のことではあるが。


クフィム島中央にある池

 ライバルが多いので我々は河岸を変えた。クフィム島中央には小さな池があって、厚い氷が水面を覆っている。どうやらこの冷たい水の下にも魚がいて、釣り糸を垂れると引っかかることがあるらしい。

 クフィムの上空は鉛色の雲で、時おり寒雷が轟くのを聞く。池の周辺にはミミズがたくさんおり、目下のところライバルもいない。我々はこの周辺で狩りを続けた。これだけの情報だと理想的な狩場に思えるが、夜20時を過ぎて朝が明けるまでは、生ける骸骨が湧き出してきて危険地帯と化す。何故ワイトどもが大量にここに出現するのかは謎である。池の周囲に枯れ木が群生していることから考えて、もしかしたら過去にはこれほど気温が冷涼ではなかったのかもしれない。世に死霊の無念が募らない場所など皆無であろうが、人の多く流通する土地だったのであれば、何か深い因縁話が根付いていたとしても不思議ではないように思えるのだ。

 ところで池の氷は人間が乗れるほど十分に分厚いものである。Adnyがちょこちょこと氷上を走ったのを見て、Neozがこっそり乗ってみた。私もこっそり乗ってみた。割れない。私が乗って割れないならかなり丈夫である。ガルカは4人分の体重があるからね、とNeozがひどいことを言う。私は、以前定員オーバーで舟が動かなかったときの、仲間たちの視線を思い出した。いくら何でもヒューム4人分には達しないだろうが、もしそれがタルタルだとすると確かにお釣りが来るに違いない。何だかタルタルとガルカが比べられるときには、いつも我々が損な役に回っているように思われるのだが……。

 そのタルタルの話である。Redがきりにしたいというので、ジュノへ戻って解散した。私は上層へあがってガードの姿を探し歩いた。すると酒場前が黒山の人だかりである。いったい何が行われているのだ、と思って覗き込んだら、人ごみの中にRagnarokの姿がある(注2)。彼の言によれば、これから大道芸が始まるのだそうだ。なるほどタルタルがふたり出てきて、動きをあわせ、歌と踊りを披露する。観客はやんや、やんやの大喝采である。私も拍手を贈ってから酒場の前を離れた。


タルタルが芸を披露する

 結局、ジュノ上層入り口の門にて、偶然に会ったSifに教えて貰ったのだが、三国のガードたちは既に本国へ帰参しており、今ではジュノの衛兵が、冒険者の所属国を問わず、シグネットをかけてくれるそうなのである。空蝉といい、シグネットといい、こうした細かな知識を積み重ねて、私は長いブランクを徐々に埋めていかなくてはならないのだ。

注1
 「空蝉の術:壱」「空蝉の術:弐」など、レベルに応じて段階があります。

注2
「お互いに気づかなかったが、実はNaozとは初対面ではなかった。Ragnarokと初めて会ったとき(その121参照)に、彼と一緒にいた友人が実はNaozである。世界とは狭いものだ」
(Kiltrog談)


(03.09.01)
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