その176

キルトログ、獣人サハギンと戦う

 私はチョコボの背中に跨り、ユタンガの大森林を駆け抜けている。Karpin(戦士29、暗黒騎士14レベル)が前を走っている。彼は私と同じチェインメイルだが、とても同じ鎧には見えない。背中には両手斧を背負っている。それも私の片手斧の方が二回り大きいというしまつ。

 少し鍛錬でもするかとジュノに戻ってから声をかけられた。我々は皆カザム行きの飛空艇パスを有していたので、ユタンガで狩りを行うことになった。森のはずれに滝の見える場所があり、近辺に獣人
サハギンが住んでいるという。話だけは聞いている。何でもとげのある背びれと鋭い爪を持つ、魚を連想させる生き物だという。

 もちろん私はサハギンと戦うのは初めてである。ミスラのBeelzebul(ベルゼブル)(白魔道士30、赤15レベル)もそう言っていた。先導役はエルヴァーンのSeres(セレス)(シーフ29、忍者12レベル)だが、何しろ迷路のような場所、たびたび道を間違えた。何度来てもこの森には慣れない、とチョコボの背中で彼は愚痴をこぼす。

 段差を二箇所ほど立て続けに飛び降りると、これまでの屋根に覆われたような森林が嘘のように、開けた場所に出た。遠くへ見える崖から二本の滝が白く糸を引いている。とかくユタンガの風景は暑苦しい熱帯のそれだが、たちまち身体が涼しくなった。ここちよいところだ。危険なモンスターさえ徘徊していなければ、ジュノ辺りの金持ちがこぞって別荘を建てるかもしれない。

滝が見える
裏側にある洞窟へ

 我々はチョコボを下りず、滝の裏側に口を開いた洞窟へ走りこむ。その途中に陣を張って、獲物を誘い込むという算段だ。滝の近辺には前述のサハギンや、マカラという凶暴な魚が生息している。鍛錬の相手としては最適だというのだが、それだけに他の冒険者も狩りにやってきて、密集状態になっているのが玉に瑕だ。人気のある場所はどうしても人が多くなる。冒険者生活を続ける限り、この手の不便さとはうまく折り合いをつけねばならない。

 洞窟の奥へ向かうとどうなるのか、と私は尋ねた。ヒュームのRivera(リベラ)(黒魔道士29、白14レベル)が返答する。ここは海蛇の岩窟と呼ばれるサハギンの巣窟に直結しているという。さらに奥へ進むと海賊の根城であるノーグへ到着する。岩窟の踏破は危険であるが、スニークがあれば問題はない。というのは、サハギンはアンティカ同様視力が弱く、主に足音で標的の有無を判断しているからである。

 Karpinが滝の外へ飛び出していって獲物を釣ってくることになった。私は洞窟の入り口で待ち構え、ターゲットの注意を途中でこちらへひきつける。敵の的を移し変える格好だ。これはKarpinが仲間のもとへ到着するまでに、敵の攻撃を食らいすぎてしまうのを防ぐためである。この日も注意を怠ったために彼が犠牲になってしまった。

 Karpinはタルタルである。私はガルカである。このときは片手剣のグラディウスを装備し、盾も構えていたので、防御力の面では彼をしのぐ。従って盾役となるには最適だ。私が釣り出しに行かないのは、Karpinの方がひとつレベルが高いので、獲物の実力を私よりも的確に見極められる、というのが理由だ。尤も彼が一度やられたあとは、私も釣り役を担当したが。この頃には私も29レベルになっており、強さでは彼と肩を並べたので、目利きの面で問題はなかった。程なくKarpinが再びレベルを上げるとまた交代した。私はひきつけ役に戻った。ガルカは頑丈なので、タルタルなら即死状態に陥るほどの一撃を受けても、何とか踏ん張っていられるのだ。正直私には実感が湧かないが、Karpinともうひとり、タルタルの
Miona(ミオナ)(赤魔道士29、白14レベル)が感服していた。悪い気はしないが、魔力に関しては立場が逆になることを考えると、威張る気にもなれない。

死体となって横たわるサハギン。
青い皮膚、黄色い皮膚の2種類を目撃。
左はKarpin

 サハギンは間近だと一層凶暴そうに見える。水辺に生息するということで、猫背がひどく手足も細く、いかにも陸上での安定性を欠いているように見えるが、何の、その敏捷で手ごわいこと! 両手の爪の一撃が肌を鋭く切り裂く。いかなガルカとてこんな攻撃を長く受けてはいられない。ものの本では、サハギンはクリスタル戦争に局面的に介入したに過ぎなかったようだが、こんなのが大陸に大挙してやって来なくて助かった。地方獣人は総じて凶悪である。それでもまだかろうじて我々が相手を出来るだけ、サハギンというのは弱いクラスの獣人なのだ。

 サハギンとマカラの戦利品はあまり芳しくない。時おり高級食材のシャル貝を落とすことがあるが、その程度だ。もっといっぱい取れればいいのに、とはMiona。彼女は誰かに似ている。エルシモフロッグという珍しい蛙が取れたときも、これは食べれるのかしら、と言っていた。ミスラなら生でも食べられるはず、と誰かが言うのだが、Beelzebulは露骨に嫌そうな顔をしていた。他の人間たちは忘れがちだが、そもそも食べられるということと、美味しいということは根本的に別の問題なのである。

 ガルカの胃袋は頑丈なので、生肉を食べてもあたることはないが、血の滴る肉塊をそのまま饗されても困る。私もカエルは勘弁だと断ってから、「個人的な好物はタルタルだ」と言ってやった。途端にKarpinがどっと汗を流した。ソースをかけて食べるのだ、と追い討ちをかける。むろんこれは、タルタルソースという単なるジョークなのだが、Karpinはガルカの両手に抱えられ、雑巾のようにねじられたあげく、エキスを搾り出されるという場面を想像したらしい。彼はマッチ棒のような両手斧を振り回して、食ったら腹の中でシュトルムヴィントを食らわせちゃる、などと逆に私を脅すのだ。

 こういう雰囲気に明らかなように、Karpinが二度ほど敵にやられたことを除けば、狩りは成功だった。中でも、同じ敵を相手にしているにもかかわらず、回を増すごとに戦闘がスムーズになっていくのには、特別の醍醐味があった。慣れて互いの役割がかっちりと噛み合い始めたのである。最初のうちは、私とKarpinがてんでばらばらに攻撃して、Selesにたしなめられた。彼はシーフなので、不意打ちを直撃させることが出来るが、そのためには、彼に対してモンスターが背中を向けていなければならない。だから私たち二人が一つところに固まって、敵を挟んでSeresと正対することにした。こうすると敵が私たちのどちらに標的を定めていても、常にSelesに背中を向けることになる。細かい約束事を重ねていくことで連携が上がったのだ。我々は満足だった。


 ノーグへ行ったことのない私やBeelzebulのために、仲間たちが案内してくれることになった。観光してから解散しようという。時間を貰えるのは大変ありがたい。Ragnarokと冒険に出かける前に、どうやら別の新天地を皆さんに紹介できることになりそうだ。


(03.10.04)
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