その178

キルトログ、Ragnarok一行と旅立つ

 Ragnarokとの旅を終え、モグハウスに戻ってきてから、私はこれを書いている。恐ろしい旅であった。冒険者ゆえ、命にかかわる危険は数々体験しているが、彼が眠りに就きたいと言った場所への道程は、私の想像を越える危険に満ちたものとなった。だが同時にそれは、ヴァナ・ディールという世界の深遠さを知り、人という存在の卑小さを感じさせられた旅でもあった。

 私は一部始終をここに記す。私が目撃したものだけでも膨大な量になろうが、やらねばならぬ。これは驚異の旅の記録である。Ragnarokへの手向けの花である。読者諸氏は等しく「世界は神秘に満ちている」という、当たり前の真理を再び思い返すだろう。


 始まりはやはりジュノでなくてはならぬ。Ragnarokとその補佐を務めたLibrossは、上層にあるアルタナ教教会を待ち合わせ場所に指定した。今にして思えば随分意味深なことである――が、我々は深い考えもなく、ドラゴン退治のときにしたように、女神像に手を合わせてめいめい旅の無事を祈っていた。


 今回の話はそもそも、長い眠りに就かなければならなくなったRagnarokが、ある場所での就眠を希望したことから始まった。目的地へは大変な危険が待ち構えている。以上を承知したうえでの参加である。レベルはいくらでも構わない。それはすなわち、強さがどれくらいであろうとも、危険であることには一向に変わりがないことを示している。

 それにしても、レベル30での参加は如何なものだろうか。

 Ragnarokと教会で落ち合う少し前だった。私はジュノ港の競売役員のもとへ忍び、秘密の買い物をしていた。こっそり済ませるつもりがLeeshaにはすぐ見つかってしまった。多分彼女は私が何を手に入れているか知っていただろう。そもそも前日、ノーグから戻った後、クフィム島で鍛錬を手伝ってくれたのは、全てが今日のためだったからだ。

 私たちは買い物を済ませると、Sifと合流して教会を訪ねた。Sifが一番乗り、と言って扉を開けたが、中には既にSenkuが待っていた。主催者であるRagnarokとLibrossの姿はなかった。肝心の主賓はバストゥークにいて、飛空艇に乗ってこちらへ向かう予定だという。

 二人ほど紹介しなければならない。ヒュームのUrizane(ウリザネ)が白い鎧をまとって現れた。彼はRagnarokの旅に同行することを既に申し出ていた。彼とは前日会った。クフィムで魚相手に剣を振るっていたとき、声をかけられて、本日の待ち合わせの約束ごとについて話した。UrizaneはKewellの友人でもある。懐かしいKewellよ。レベルがいくらでもいいというのなら、彼女にもあらかじめ今日の連絡をしておけばよかった。いかにも彼女が心惹かれそうな旅であるのに。目的地から戻ったいま、その考えはいよいよ強くなり、私は後悔の念に駆られるのだった。

 閑話休題。

 レベルの話に立ち返ろう。Urizaneは69レベルのナイトだった。全部で8人になったパーティの中でも最高の強さである。一方私は30で、29レベルの白魔道士であるSenkuと並んで、最低ランクだった。みな気にはすまい。そう判ってはいるのだが、やはり肩身が狭く感じるのだった。とはいえ、私にとってレベル30は精一杯の強さで、これでも頑張ってやっと前日にランクを上げたのだった。

 教会は別の人々の待ち合わせ場所でもあったらしく、別の一団が入って来て、逐一我々に声をかけた。我々はそのたび違うと答えねばならなかった。だから私は、板金を重ねた鎧を着たガルカ氏が現れたときも、てっきり人違いだとばかり思っていた。しかし彼は紛れもなく我々に向かって頭を下げ、自分はRagnarokの友人であり、今日の旅を共にするのだと語った。彼の名前はEuclid(ユークリッド)という。彼も戦士であったが私より14も高い44レベルであった。

 教会の集団が陣容を組んだころ副主催者のLibrossが現れ、彼らが旅立ったころ主催者のRagnarokが現れた。彼は申し訳なさそうに頭を下げて、私を目に留め、や、やと目を丸くした。私はにっこりと笑って彼に敬礼した。私の首から下を包んでいるのは、Ragnarokが以前プレゼントしてくれた百人隊長鎖帷子だった。百人隊長というのはバストゥークの役職だ。この装備は、戦績を積んだ同国の冒険者が、ポイントと引き換えに本国から支給を受けるものである。百人隊長の装備には兜も篭手も下穿きも長靴もあって、私はそれを先刻の競売で入手した。そして――これが大事なことだが――百人隊長装備一式は、レベル30以上にならないと身に着けることが出来ないのだ。

 昨夜遅くまで鍛錬をしていたのはそのためですか、とSenkuが(背伸びをして)耳打ちする。私はもちろん、と答えた。Ragnarokを送り出す日に、彼から貰った鎧を着ていくことは、ささやかな恩返しになると思ったからだ。鍛錬に協力してくれたLeeshaとLibrossに――そしてもちろんRagnarokにも――私は感謝の意を捧げたい。


教会にて記念撮影。
前列左からSenku、Leesha、Ragnarok、Sif、Urizane。
後列左からLibross、私、Euclid。

 さて旅立ちの準備は全て揃った。しかし教会を出て何処へ行けばよいやら判らぬ。Ragnarokたちが敢えて目的地を秘密にしているためである。彼はチョコボを借りようと言った。上層にある厩舎へ向かいながら、レンタル料が高くないといいが、と思っていたら、124ギルとことのほか安い。我々は満足して大鳥の背中にうち跨り、国の外へ出た。バタリア丘陵からソロムグ原野に大回りをする。我々の取った針路は南西、まずは先日石碑を探しに行った、メリファト山地目指して走るのだ。

(03.10.07)
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