その193

キルトログ、ヨアトルの大森林でマンドラゴラを狩る

 ある晴れた日、私はカザム行きの飛空挺を待っていた。

 私の仲間は一人を除いてとうに機上の人であった。なのに私がジュノ港に留まっているのは、パーティのリーダー、タルタルのWonderboy(ワンダーボーイ)(赤魔道士31、白15レベル)が、何故か突然姿を消してしまったからだった(注1)。飛空挺に乗っていないことは明らかなので、再び彼が現れるまで、誰か一人残っていた方が親切だろうということになった。それで私が今こうしている。いわば前回と逆の立場になってしまったわけである。


 もともと私は今日鍛錬に出る予定ではなかった。タロンギからマウラへと拠点をうつし、両手斧の修行を続けていた。ここで同じく弓矢の腕を鍛えているSifと会った。矢が尽きて(何しろ消耗品だ!)Sifが帰ってから、Wonderboyから声がかかって、31レベルの戦士が足りないのだが、協力しては貰えまいかと言われた。私はしばらく耳を疑った。というのは、マウラからジュノまでは結構な距離があるからだ。それに「求職中」の戦士やナイトなどはジュノ近辺にごろごろしていようから、わざわざ私に白羽の矢を立てた理由が、なおさらよく判らないのだった。だから、鍛錬に出かけるのにやぶさかではないが、合流するのに時間がかかっても構わないなら、と答えた。すると彼はちょっと待ってと言い、おそらく仲間たちと協議していたのだと思うが、少なからず時間が経ってから、それでいいから奇岩のところで待っていてくれまいか、迎えに行くからという意味のことを言った。

 だから私は、タロンギ大峡谷に駆け戻り、メアの岩のワープ・クリスタルの力場で彼を待った。瞬間移動してきたWonderboyは、私を仲間に加えて、デジョンの魔法でジュノへと戻った。デジョンというのは、ホームポイント――すなわち、戦闘不能になったときに復活する場所――にワープする魔術だ。私が最後にホームポイント設定をした場所がジュノだったので、こういう送迎が可能だったのである。

 テレポメアは36レベルの白魔法、デジョンは17レベルの黒魔法である。両方を使えるということは、Wonderboyは少なくとも両方をこの水準以上に鍛えていて、私を迎えるために、白魔道士に一時的に鞍替えし、黒魔道士をサポートにつけて飛んできたに違いない。そして鍛錬に出るために、改めて赤魔道士に着替える。そこで時間を使ったものとみえる。飛空挺が入港してきたとき、彼は明らかに遅れていた。Wonderboyが現れるまで、私は飛空挺をもう一便やり過ごさなくてはならなかったのだが、以上のような理由で、例え姿を消さなくても、結局彼は最初の船に乗れなかっただろうと私は思う。

ヨアトル大森林

 我々が目指したのは、ユタンガに隣接するヨアトル大森林である。ちょうど森が切り替わる地点に陣取り、マンドラゴラを狙う。この歩行する植物は、ヨラン・オラン博士が研究しているように、ミンダルシア大陸ではなく、エルシモ島の原産であるらしい。すなわちウィンダスの周辺に存在するのは、カザム近隣に生息するマンドラゴラの末裔、あるいは亜種に過ぎない。サルタバルタのタイニイ・マンドラゴラにいたっては、素人同然の冒険者の練習相手にふさわしいほど弱体化しているが、ここヨアトルの原種は、いぜん血が濃く、厳しい環境にさらされているせいか、我々のような30レベル前後の冒険者が、まとめてかかっていってようやく勝てるような相手なのだ。

 前衛は私、ヒュームのKvarius(クヴァリス)(モンク31、戦士15レベル)、タルタルのEea(イア)(シーフ30、戦士15レベル)である。なるほどモンクとシーフが前衛ならば、戦士の私が呼ばれたのも納得できる。彼らの装備は薄く、敵の攻撃を受け止めるためには、鎧で身を固めた戦士やナイトがどうしたって必要になるからだ。

 我々は森の小道に腰を落ち着けた。頭上を太い幹が横切っている。踏み固められた道はゆるやかな坂を作っている。後裔の3人はその下側へ座り込んだ。エルヴァーンのChain(チェイン)(白魔道士30、黒15レベル)と、ミスラのTibbs(チッブス)(黒魔道士30、白15レベル)、そしてWonderboyである。彼は暇を見つけては煙草をのんで、美味しそうに煙を吐き出している(注2)。飛空挺の中でもそうしていたので、彼はよっぽど煙草が好きなんだろうと思う。


 実際にマンドラゴラと戦ってみると、奴らは例の滝周辺のマカラや、サハギンと同じか、あるいは少し劣る程度の実力だ。攻撃力に関しては大幅に落ちる。マンドラゴラが私の装甲を破り、命を危うくさせるような場面は、数えるほどしか訪れなかった。これは私がガルカであり、なおかつ業物の百人隊長鎧一式を身に着けているからだろう。

 念のために言うが、これはむろん6人で戦うからで、私一人の功績ではない。単にマンドラゴラと戦ったとき、物理的な盾の役目を、比較的楽に果たせたというのに過ぎない。敵に与えるダメージに関しては、むしろ自分は控えめだった。Kvariusの爪の一撃や、後裔の3人が繰り出す黒魔法の方が、ずっと強力だったのではないか。何しろファイアが命中すると、私の視界がきかぬほどに噴煙が渦を巻いてあがり、モンスターを身体の芯まで焼き焦がすのであったから。そうして我々は多くのマンドラゴラを屠ったのだった。

 鍛錬の収穫は上々で、我々はみんなレベルを上げた。その度ごとにKvariusは、手持ちの小型花火を出して、仲間を祝うのだった。間違いなくハロウィンで、お菓子のお礼に貰ったものだろう。私に捧げられたそれは、地面に突き立った筒で、ぽんという音とともに火玉がとびあがり、やがて小さな落下傘となって、揺れながら舞い降りてくるのだった。

 私はこうして32レベルへと成長した。

注1
 要するに回線が落ちて、再接続するのに時間がかかったのです。

注2
 煙草を吸う顔文字です。ヴァナ・ディールにもちゃんと喫煙の風習があります。その189の碑文を参照。

(03.11.10)
Copyright (C) 2003 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送