| その１９９ キルトログ、Leeshaと二人きりで話す 水の区の門に向かって歩きながら、私はたびたび足を止め、振り返った。Leeshaが近くにいるのは判っているのに、何度も振り返った。目を離したら、彼女が何処かへ行ってしまうのではないか。あるいは、今までのことはすべて夢で、モグハウスで朝を迎えた私は、またひとり斧を担いで、狩りに出かけるだけなのではないか。そんな漠然とした不安が、私の胸を襲った。しかし彼女はちゃんと側にいたし、おそらくはこれからも、ずっと側にいてくれるだろう。 門に入ってから、さて、と姿勢を正した。静かで、景色のよいところへ行き、二人で話したい。何処がいいでしょう、と彼女の意見を求めると、ウィンダス育ちのKiltrogさんが決めて下さい、と意外な切り返しをされた。試されているのだと知り、焦った。鼻の院の庭園はどうだろう？ あそこはハロウィンのときにみんなで話したから。いや、それだけに新鮮味がないかもしれぬ。私が迷っていると、Leeshaに突然平手で叩かれて、「しっかり！」と叱られたのだった。こんな調子では、結婚しても尻に敷かれそうだ。 ようやく「飛空挺会社屋上へ行きましょう」と彼女に告げた。ウィンダス広しといえど、ここほど眺めのよい場所を私は知らない。私たちが建物の外階段を上ると、まさに目の前に飛空挺が、しゅんしゅんとプロペラの音を響かせて、降りてくるところだった。眼下に広がる海は、エメラルドの美しい色あいを保っている。すでに太陽は空高く上がっていたが、再び夜にもなれば、水平線から竹の子のように頭を出している山の頂上が、タルタルたちの魔法でオレンジに輝くのが見えるはずだ。
「ここはKewellさんをお連れしたところなのですが」 Leeshaは私の記録を読んでいる筈であるから、つまらぬ事を隠しても仕方がない。私は明けすけに告げた上で、この屋上には、まだ自分が駆け出しのころの記憶が色濃く残っているが、Leeshaと二人で来て、改めて大切な女性との思い出に染めたいのだ、と説明した。それにしても、よくこんな恥ずかしい台詞がしゃあしゃあと言えるものだ、と、自分で自分に感心するのだった。 話したいことも、話さなければいけないことも、山のようにあった。冒険者の私婚は自由に認められている。従って私たちも、互いに夫であり妻であると認めた瞬間、もはや夫婦なのである。しかしどうせなら、きちんと書類で申請をして、公的に結婚式のサービスを受け、互いの一生の思い出としたい。私の意志を伝えると、Leeshaも喜んで賛成した。そのために決めなくてはならないこと――付添人の決定や、日付、式場の希望――は多かったが、それはおいおい相談することにした。ところで、これまでは私が浮かれて話す一方だったが、Leeshaの側から、何か聞いておきたいことや、確認しておきたいことはないのだろうか。私が尋ねると、彼女はすぐには思いつかないようだったが、やがてぽんと手を打って、こう提案するのだった。 「リンクシェルを買いに行きましょう！」 さては覚えていたのか、と思った。ハロウィンの夜、リンクシェルをつけた夫婦の話をしたのは、まさにこの私だったからだ――。 解説 冒険者同士の結婚について FF11においては、意中の冒険者（PC）と結婚することが出来ます。 結婚による法的な特典はありません。苗字は（あるとしても）変わりませんし、同じモグハウスに住むわけではないし、子供が作れるわけでもありません。結婚は、新郎新婦のための記念のイベントに過ぎないのです。それでも「結婚をシステムに取り入れて欲しい」という要望が止まなかったため、スクウェアが遂に導入に踏み切ったのでした（ゲーム開始当初は、公的なサービスを受けることは出来ませんでした）。 結婚するにはいくつかの条件があります。 １.結婚する二人のPCの性別が異なっていること。 （異種族同士の結婚は構わない。なお、ガルカは男とみなす） ２.新郎新婦それぞれのジョブのうち、いずれかが２０レベルを超えていること。 ３.結婚できるキャラクターは、プレイヤーIDひとつにつき一人。 以上は、結婚式のサポートを申請する際の条件です。しかし、公的なサービスを受ける気がないならば、冒険者は自由に「結婚」して構いません。単に自分たちが、夫であり妻であると宣言すればよいのです。「結婚は法的な特典を持たない」と先に述べましたが、申請はオフィシャルな結婚式を開いてもらうためにするのであり、結婚したことを報告するものではありません。従って、「籍を入れる」ための申請は必要ないのです。 私婚と公婚との違いは、マリッジリングの有無です。これは冒険局から新郎新婦に贈られる指輪で、贈答や売買は出来ません（列席者にはお祝いのクラッカーが配られますが、クラッカー自体は別のイベントでも入手できます。従って、交換する指輪さえ自前で準備してしまえば、私的に結婚式を企画することも出来るでしょう） 新郎新婦が、公式の結婚式を望んだ場合、以下のような手順を踏みます。 まず、結婚する当事者は申請をすることが出来ませんので、第三者に付添人になって貰い、手続きを頼む必要があります。その際、挙式の予定日と開始時間、会場を、サポート申請用のフォームから申し込みます。予定日は、申請した日の２週間後〜３ヶ月後の間から選びます（申し込みは先着順なので、予定日が重なる場合には、受理されないことがあります）。開始時間は１７時、２１時、２５時の３通りからセレクトします。 おそらく、一番の悩みどころは会場ではないでしょうか。４国に様々な場所が用意されていますが、収容人数の違いで使用料金が違ってきます。また結婚式には、各国の特色が色濃く出ます。例えばサンドリアでは、サンドリア国教会公認の儀式ということで、正騎士の立会いのもと、荘厳な式が開かれます。一方ウィンダスは、タルタルの文化が影響するのでしょうか、神子の代理の神官が立ち会いますが、式の性格はほのぼのとした愉快なものです。宗教色の薄いバストゥークは、もっと自由な雰囲気で、列席者には大統領から飲み物が振舞われます。サンドリアでは誓いの武器、ウィンダスでは食べ物など、新郎新婦があらかじめ用意しなければならないアイテムも違っています。会場は収容人数の違いによって３段階に分けられていますが、各国の気風と会場の雰囲気の違いによって、同じ規模の式でもずいぶん印象が異なってくることでしょう。 【少規模】１０名まで。使用料２万ギル 【中規模】１１〜１８名まで。使用料３万ギル 【大規模】１９〜３６名まで。使用料８万ギル
ちなみに、一番人気が高いのがドラギーユ城で、次にジュノの女神聖堂だそうです。実際の結婚式の雰囲気に近いからでしょうか？ なお上記以外の場所でも、申請によって任意の会場が認可されることがあります。ただし、人が少ない、危険なモンスターがいない、他のプレイヤーの邪魔にならないなどの条件を満たさなくてはなりません。 (03.11.22)
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