その4

キルトログ、同族に出会う

 森の区に戻る途中、オークションハウスの前辺りで、一人のガルカとすれ違った。装備品からしても明らかに駆け出しではない。果たせるかなレベル18のつわものであった。私がぶしつけな視線を送っていると、彼が一礼したので、私も恐縮して深々と礼を返した。言葉をかわすことはなかったがあやかりたい。私も早く強くなりたいものだ。


 ガルカは全体の冒険者としても少数派だと言う。ほんらい鉱山国バストゥークを本拠地にする種族だから、ウィンダスではなおのことその数が少ないのだろう。

 我々は一般的に熊のような巨体と体毛、四本しかない指、とかげのように伸びた尻尾で認知される。ダンジョンをのしのしと闊歩するガルカを見ると、すわ獣人か、と勘違いして逃げていく他種族も少なくない。そのせいだかどうか知らないが、ガルカの本国バストゥークでは、ヒューム連中に冷遇されていると聞く。貧富の差が激しくなり、種族間の溝がますます深まっているというのが現状のようだ。

ガルカ ガルカ。
長命かつ転生という生態を考えれば、個体数が少なくて当然か

 ただし種族差別はバストゥークの専売特許というわけではない。あらゆる国が内側に不穏な空気を抱えている。

 のどかなウィンダスも例外ではない。ミスラたちは族長ペリィ・ヴァシャイの、親タルタル的な方針に従っているだけで、彼らに対する感情こそ友好的ながらも、獣人ヤグードとの提携路線には疑問を感じ、おおむね反発を覚えている。サンドリアに到っては王位継承問題を巡って、エルヴァーン同士でいさかいが絶えない毎日だと言う。


 ただ救われるのは、こうした緊張感はおおむね国家間に存在するのみで、我々冒険者にとっては、ほとんど無縁だという事実である。


 モンスターを倒す日常の中では、敵か味方かという線引きだけが重要視される。我々は種族という表層的外見より、その中身、魂のかたちを重要視し、ともに手を携えて戦う。人は一人では生きられない。過酷な野外ならなおさらだ。戦士とモンクの腕力、赤魔道士の万能さ、白魔道士の治癒の力、黒魔道士の攻撃呪文、シーフの生存能力……我々には一長一短がある。力を合わせなければ生き残れない。どれほど剣の腕や格闘術に自信があろうが、魔法でしか傷つかない敵など世界にごまんといるのである。

 例えば私はガルカであるが、その前にKiltogという一個の存在である。冒険者はKiltrogが仲間としてどういう責任を果たすかにしか興味を覚えない。そこに種族的蔑視の入り込む余地はない。

 どのような種族にも好漢と悪漢がいる。それは個人的な問題である。単純な事実だが、既成の価値観にとらわれていては、ことの本質を見抜くことは難しい。冒険者は流浪の生活を経て自然と達観を身につけたものとみえる。おそらくあらゆる権力から自由に距離をおいている身分の、これは一つの特権というものだろう。


 ところで森の区の広場には大道芸人の一座がいて、5つの種族が仲良く芸を披露している。ウィンダスほど美しい国はないと言う彼らも、旅に生き、諸国の立場を外から眺める機会に恵まれたのだろう。火炎を吹くガルカに少し声をかけてから、彼らから何かおみやげでも買おうと思ったが、これは私の貧乏から結局実現せずにしまった。

ガルカの大道芸人

解説

ガルカについて
エルヴァーンについて


 このプレイ日記の主人公Kiltrog(キルトログ)は、ガルカという特殊な種族です(ちなみにキルトログというのはあるゲームの登場人物で「怠け者のろくでなし」という意味があります)。
 ガルカの外見的特徴は上に述べた通りですが、「雌雄が存在しない」というのが他の種族と最も違っている点でしょう(注1)。ガルカは公式設定で「転生という特殊な方法で子孫を残す」とされています。他の種族からしてみれば、外見的にはまったく男性以外の何者でもないわけですが……(そのせいか、Kiltrog自身も他のガルカを頻繁に「彼」と呼んでいます)。
 ガルカはたいへん興味深い種族なのですが、いかんせん資料が少なすぎるので、いま考察を行うのはやめておきます。バストゥークに行って情報が集まったら、何らかのかたちで発表できるかもしれません。

 ガルカはもともと砂漠に一大王国を築いていましたが、600年前、蟻獣人アンティカに滅ぼされて流浪の民となり、大多数が周辺諸島へ逃れました。大陸へ残った一部がヒュームと組んで建国したのが、現在のバストゥーク共和国です。
 ヒュームは人間とほとんど同じと考えてさしつかえありません。実際の人間同様、ヴァナ・ディール中で最も個体数が多く、発達した経済の観念で勢力を伸ばしています。技術革新によって成長しているため、旧来の職人技を重んずるガルカとは、貧富の差が広がる一方のようです。
 ちなみに、ヒュームは一般に自分たちのことを指してのみ「人間」と言うようですが(笑)、キルトログが「人類」「人間」と言うときは、ヒューム、ガルカ、ミスラ、タルタル、エルヴァーンの5種族全てを含みます。

 残されたもう一つの種族、エルヴァーンについても解説しておきましょう。
 エルヴァーンは長身痩躯、尖った長い耳、切れ長の目という、ファンタジー世界のエルフと同じ特徴を持っています。ただし魔法よりは剣技に才能が傑出しているうえ、特に長命というわけでもないようです。

エルヴァーン エルヴァーンの男性。
彼らの母国サンドリアは、500年以上の歴史を誇る最古の王国

 エルヴァーンはバストゥークの北にある、ヴァナ・ディール最古の王国サンドリアの主要構成員です。彼らは誇り高い反面、閉鎖的で、優れた文明をもちながら次第にヒュームの勢力に押されています。「滅びゆく貴族階級」というイメージが強いようです。伝統があるだけあって、チョコボに騎乗した騎士団には威厳が感じられます(ヴァナ・ディールには馬が存在しないので、騎士の乗り物はチョコボと相場が決まっているのです)。

 ところで、エルヴァーンの美しい容姿はプレイヤーになかなか人気が高いようです(とはいえ、ヒュームも美男美女が揃っていますが)。タルタルの可愛さ、ミスラの奔放さにも押されてか、男くさいガルカはある調査によると全体の3パーセントにも満たないそうです。みなさんもっとガルカでプレイしましょう!

注1

 正確には、ガルカは男性のみの種族です(開発スタッフのインタビューより)。この真意は不明です。ガルカが生物学的な意味での「男性」なのかどうかによって、この種族の正体は大きく変わります。詳しくは「世界研究」のガルカの項目をご覧下さい。

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