| その６ キルトログ、臨死の体験をする いかな知能の低いモンスターとはいえ、ガードが守る門の前にどうどうとたむろするほど馬鹿ではない。私は敵を探して遠くへ出歩いた。そして、それが命とりとなった。 気づいたら日はとっぷりと暮れており、ぬか星が砂を撒いたように、ちらちらとまたたいている。きれいだなと呑気なことを考えているうち、燐（りん）のように薄い光をまとった、まがまがしい骸骨（マジックト・ボーンズ）の姿が視界に入った。 もちろんひとめで敵だということはわかったので、私はいっさんに逃げ出した。背後で呪文を詠唱する声が聞こえる。身体に強い衝撃が走った。骸骨は続けてポイズン（注１）を唱える。毒をくらってはさしものガルカもひとたまりもない。 何も起こらないのでどうやら逃げ切ったかと安心していると、魔法が発動し、たちまち脱力感に襲われた。おそろしい勢いで体力がへりはじめる。 私は必死に門まで走った。が、今まさにアーチをくぐらんとしているとき、力尽きてどうと倒れた。強烈な眠気が私を支配した。 私は惨めな死を迎えた。
気づいたら、広場の片隅に立っていた。 街は何ごともなかったかのように日々の呼吸を繰り返している。夜中なのでささやかではあるが、道行く人も特に私を気にする様子もない。 傍らには輝くクリスタルの柱が立っている。この柱は冒険者からホームポイントと呼ばれている。これに触っておけば、不思議な理力に支えられ、命を落としても再び戻ってくることができるのだという。半信半疑だったが、触っておいたかいがあった。まこと冒険者の守り神だ。 ホームポイントに手を合わせた。私は生きている。おそらくまだなすべきことがあって、大いなる力に生かされているのだろう。 ヨラン・オラン博士に双葉を見せにいったが、欲しいのはこれではないとにべもない。どうもこの程度では彼の学者精神を満足させられないようだ。 骸骨に遭遇するまえに相手した野うさぎ、サバンナララブが、破れたラブレターを持っていた。オークションハウスの役人に渡すと、５０ギルをくれた。しかし手紙というのはまだまだあるらしく、続けて回収をしてくださいと言う。私もできるだけのことはするつもりだ。 夜が明けてきたのでウィンダス港へ向かう。ここには口の院が経営する魔法学校がある。噂では飛空艇が離着陸する乗り場もあるそうなので、話のたねにその光景を見ておくのも悪くない。 注１ ポイズンは敵に毒を吹き込む黒魔法。解毒（自然治癒あり）までのあいだ、徐々に体力が減り続けます。 解説 戦闘不能について ホームポイントについて 心ならずもＨＰがゼロになり、敵に破れてしまった場合、冒険者は戦闘不能と呼ばれる状態に陥ります。Kiltrogはしばしばこれを「死」と表現しますが、キャラクターが復活してゲームは続くので、文字通りの死滅を意味するものではありません。 戦闘不能になると、その場所に倒れこんで動けない状態になります。 冒険者は、現実時間で１時間以内にレイズなどの蘇生魔法をかけて貰えば、無事復活することができますが、レベルの低いうちはあまり現実的ではありません。多くの場合は、設定したホームポイント（ＨＰ。説明は上記に譲ります）に戻ることを余儀なくされるでしょう。 ところで、戦闘不能になることのデメリットは二つあります。 １）死亡場所のリージョンにおいて、所属国のコンクエストの成績が下がる ２）獲得した経験値が減る 戦闘不能になってＨＰに戻ったキャラクターは、次のレベルに達するまでに必要な経験値の１０分の１を失います（レイズなどの方法で蘇生した場合はいくらか軽減されます）。 これはさほど深刻でないように思えますが、レベルが上がれば上がるほどペナルティの負荷は増大します。特にFF１１では、どれほど強い敵を倒しても一回の戦闘で手に入る経験値は、２００がせいぜいです（一人で戦うと頑張って７０、しかも中盤以降からは３０も難しくなります）。６０レベル前後になると、レベルアップに要する経験値は数万です。この状態で死んだときのロスは、１０レベル程度で死んだときの比ではありません。 レベルアップすると経験値はゼロに戻り、次のレベルの目標値まで積み重ねていかないといけません。もし敵にやられたとき、獲得している経験値よりペナルティの方が上回っている場合――すなわち経験値がマイナスになった場合――レベルがひとつ下がってしまいます。防具は殆どの場合レベル条件が厳密ですので、レベルが下がったことにより装着できなくなった、ということのないように、少し前まで使っていた防具は処分せず、しばらく取っておくことをお勧めします。 なお、冒険者が１〜３レベルの間は、上記ふたつのペナルティが免除されています。
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