その7

キルトログ、スターオニオンズに邂逅する

 口の院に到る途中に飛空艇乗り場があったが、定時にならないとやってこないのだという。ぼさっとしているのも何なので国の用事をすますことにした。

 口の院は魔法学校の中核をなすというだけあり、港では最も大きな建物である。ものものしく入っていって話を伺うが、かんじんの院長の姿がない。東サルタバルタの北東にある遺跡から戻ってきてないのだという。直接そちらへ出向いてくれと言われたが、どうにもまだ戦闘力に自信がない。それを察してか、「お友だちをさそっていきなさい」というアドバイスをくれた。そう言われても、私は天涯孤独の身なのだが。


 ウィンダス港では船着場につけた数隻の船の中で商売が行われている。国に来て100ギルを手に入れたとはいえ、武器も防具も高すぎて手が出ない。ふらふらと店を出てうろついていると倉庫に出た。カーディアンがひとり、あやしい人影を見たら通報するように、と例の奇っ怪な声で警告する。何ともぶっそうな話だ。

 だがふと倉庫の裏側を覗くと、かわいらしいタルタルの女の子の姿が見えた。もっともおばさんかもしれないのだが、この場合は幼くて正解だった。彼女をまたぎこして(!)行くと、5〜6人の小さな人影があり、一人は木材を積み重ねた壇上に上って演説をぶっていた。天の塔の
演説おじさんかと思いきや、いつぞや自分を救ってくれたスターオニオンズの一行である。

スターオニオンズ スターオニオンズの集会の様子。
最上段にいるのが団長

 スターオニオンズのモットーは「愛と平和とたまねぎと」なのだそうだ。たまねぎが何の立場なんだかよくわからないが、愛と平和というのは私もおおいに賛同するところだったので、自分も入れてくれないかと少し冗談をこめて言う。すると小さな団長どの、真剣になって、部下を集めてまる聞こえの相談を始めた。

 私はスターオニオンズが正規のガードなのだとばかり思い込んでいたが、実際には正義感に燃える子ども同士の集まり、といったものらしい。と言われても、やはり大人と子どもの区別はつかないのだから始末がわるい。
冒険者優待券などをくれるから、てっきり役人なのだとばかり思っていた。オニオンズ団のメンバーには宿屋のむすめなんかも含まれているので、おそらく役人の子どもか何かがどこかで手に入れてきたものだろう。

 団長は大いに悩んだらしい。小さなタルタルの少年少女(ミスラもいるが)に、巨大なガルカが混ざろうと言うのだから、悩んで当然だとは思う。それでもここは寛容さを見せるべきだと考えたのか、「しっぽ」を持ってくればメンバーに入れようという。
 このしっぽというのがよくわからない。話によると宿屋のおかみが欲しがっているのだという(これは実の娘がそう言うのである)。正義漢とはいえ子どもであるから、肝心の秘密を隠しているのが楽しいらしく、おし黙ったままくすくすと笑う。どうも自分を試しているかのような風情だ。そこで少し腹が立って、このわんぱくどもに大人の――あるいはガルカの――意地というのを見せてやらねば、という気になってくる。


 謎は簡単に氷解した。
『ララブのしっぽ』亭というのが宿の名前なんである。ララブのしっぽ(注1)ならモンスターとの丁々発止で既に手に入れている。遠回りをしたが、モグハウスを使う身で宿屋には縁がないから、少しだけ中を覗いてみようか、と思い扉をくぐった。

 カウンターの向こうにいる
チャママという女性がおかみだと思われる。娘と似ているようにも見えるが、姉とか妹とか嘘を言われても、とうてい看破は出来まい。何気なく話したら、ララブのしっぽ漬けを作るのに使う漬物石が割れてしまって、困っているという。店の名前になっているくらいだから名物なのだろう。それはお気の毒に、とまた難事を引き受けてしまった。力仕事に多少の自信はあるが、何の石を拾ってくればいいのか全然見当がつかない。


 ともかくしっぽはあるわけだから、団長どのに手土産を渡そう。そう思って倉庫へ向かおうとしたが、この時きびすを返した私を後ろから呼び止める者が現れた。


注1
 ララブは野うさぎのことながら、ララブのしっぽとは、ブルーピースをクリスタルの力で発酵させた食材で、言葉の意味どおりの「しっぽ」ではありません。
 野兎の尻尾というアイテムはこれとはまったく別のものです。


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