その11

キルトログ、東の魔法塔に潜る(1)

ホルトト遺跡(Hortoto Ruins)
 サルタバルタ平原に点在する塔状の遺跡群の総称。何のために作られた施設なのか定かではないが、まだ強力な魔導エネルギーを発生する装置が生きており、機能の一部は使用可能であるため、タルタル族は熱心に研究している。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 6レベルの自分はそう簡単にやられない、という自信はあるが、遺跡はまったく未知の領域であり、どんな危険がひそんでいるか知れない。ここは仲間を募っていった方が賢明というものである。

 サルタバルタで鍛錬を重ねている誰かをスカウトしよう、と歩きまわっていると、西の門前で私に声をかける者があった。見慣れぬ白い鎧を身にまとったヒュームの女性は、果たしてMareであった。彼女は自分よりもうとうに強くなって、タロンギ大峡谷へ出向いている日々だと言う。もっとも「弱くてすぐ死ぬ」というのだからまだまだ世界は広い。

 少し世間話をしてから、遺跡のことを聞いてみた。彼女は首をひねって、モンスター単体ならじゅうぶん相手はできようが、怖いのはゴブリンが
リンク(注1)してくることだと言う。そしてお仲間を探すのであれば遺跡の入り口辺りで同士を募った方がいいかも、とアドバイスしてくれる。
 
 こういう情報はありがたい。別れがけに彼女はプロテス(注2)を自分にかけてくれた。私はひとしきり礼を言ってから東サルタへ赴いた。遺跡の位置はこれまでの冒険で既にチェックしてある。


 遺跡の中や近辺に人はいるのだが、ほぼ私よりつわものばかりで、なかなか自分と同じくらいのレベルの冒険者がいない。そこでできるところまで自分ひとりで潜入することにした。

 このダンジョンは、正確には東の魔法塔と言う。ホルトト遺跡の魔法塔は、サルタバルタ東西のいたるところに点在しているので、このようにウィンダスからの方角で区別されるのである。

 旧文明の産物らしく、ひねくれた形をした石の塔なのだが、ウィンダス周辺の木々もたいがいひねくれているので、景色に溶けてしまい、近くに行って見上げなければ気づかないことが多い。塔というくせに地下に通路が伸びているのもふざけている。ただ中は、しめっぽい空気が漂うものの、魔法の力なのかやわらかい緑の光が満ちており、思ったほど暗くはない。石か煉瓦か、あるいは大理石か、きっちりと組み上げた通路は、既に滅んだ文明のものとは思えないほどだ。

ホルトト内部 遺跡内部の様子。
緑の光が周囲を照らしている

 手始めに3匹のコウモリが私を出迎えたが、こいつらは攻撃をしかけない限り襲ってはこないようだ。仲間がいたらまた違おうが、余計な騒ぎを起こしてゴブリンを招きよせるのも馬鹿馬鹿しい。無視をして奥へ進むと果たして獣人がひたひたと歩いている。私は物陰に隠れながら近寄ってたちまちとどめをさした。弱いやつなのですぐにうめき声を出して息絶える。各個撃破に問題はないようである。

 遺跡にはいくつか祭壇らしきものがあったが、調べても特別反応があるようには見えない。入り口のガードが「壁に仕掛けがある」と言っていたので重点的に探す。すると触れただけでスライドする壁面が見つかった。奥に通路が続いていたのはいいが、抜けた広間にはゴブリンが2匹かたまっていて、どうしても同時に相手しないではすまない。しかも一人は私と同じくらいの強さのようだ。もう一つ脇に通路があったがこちらは行き止まりだった。一人づつおびきよせて……とも考えたが、今は偵察だけなので無茶はしないことにし、ひき返す。頼りになる仲間がいれば突破できるだろう。


 耳の院で古代文字の解読に苦しむ職員がいた。遺跡に出向している助手の意見を欲しがっている。そこで西サルタバルタのある遺跡を訪れ、助手にメモを渡し、情報を持ち帰ると、職員はホルトト遺跡の地図をくれた。これは今の自分にはまことにありがたい。あとは仲間を募ってあのうす暗いダンジョンに赴くのみである。



注1
 戦闘が起こったときに、それを察知して近くにいる仲間が参戦してくることをリンクといいます。
 リンクは基本的に同種の仲間内で起こります。例えばクロウラーと戦っているとき、近くにいた別のクロウラーは攻撃してきますが、マンドラゴラは何もしません。ただし、攻撃的な生き物である獣人(ヤグードやゴブリンなど)が参戦してくることはあります。これは彼らの好戦性によるもの(冒険者を見るなり襲いかかってくる)であって、厳密に言うとリンクではありませんが、レベルが低いうちは同じことかもしれません。
 獣人にはくれぐれも注意しましょう!

注2
 プロテスは防御力を上げる白魔法で、一定時間続きます。パーティ全体にかける同種の魔法にプロテアがあります。
 魔法は使えば使うほど熟練度が増しますので、プロテスを鍛えるためには片っ端からかけるしかありません。通りすがりの冒険者にプロテスをかける行為を辻プロテスといいます(同種に辻ケアルがあります)。
 かける側、かけられる側の両者にメリットがあるのですが「一方的にかけることは失礼」という認識が蔓延してか、少なくともフェニックスワールドでは、昔ほど頻繁に行われてはいない模様です。

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