その15

キルトログ、トレインに遭遇する

 南西の魔法塔を探すうち、日が暮れてしまった。焚き火をしているヤグードを見つけたので、ぶちのめそうと思い乱入したら、ご友人が2人も同席していて肝を冷やした。さいわいみんな弱いやつだったので、1対3でも何とか倒すことができたが、さすがに戦闘終了時には体力が半分以下にまで減少していた。あんまり無茶をするものではない。

 せっかくだから体力の回復を待ちつつ、暖かい座席を満喫していたら、冒険者が一人近づいてきて、ずいぶんとでかいヤグードだと思った、と言うので二人して笑った。ガルカだと知ると彼はさよならを言って去っていった。私は周囲を警戒しながら朝を待ち、再び塔の捜索に出かけた。南西というのだから最初の遺跡よりはずっと南にあるはずである。


 夜にはわからなかったものが、明るい光の下で発見できるという話はよくある。朝が来ると目当ての魔法塔は何ともあっけなく見つかった。

 入り口にミスラが立っていて、ここはお前のようなものが来るところではない、と警告する。警告されても仕事である。無視して中に入ると、階段の手前にポレ・オーレという名のタルタルのガードがいて、南東の星の札というアイテムをくれた。球に魔力を込める魔導器のスイッチは奥の隠し部屋にあるらしいが、札がないとそこに入ることすらできないのだと言う。彼に話しかけなければ途方に暮れていたに違いない。せっかくの探索もあやうく無駄足に終わるところであった。


 ここには冒険者の姿をちらちらと見ることができた。私を含め、どうも一人でいる者が多いようだ。9レベルの戦士が立派な身なりで私の前を歩いている。私が例の祭壇――これが
魔導器だ――に球を込めている間、先客の剣戟の音が騒がしく響きわたる。しかしどうした雲行きか彼は苦戦しているらしく、やがてきびすを返していちもくさんに逃げ出した。

 私は珍しいものを見た。戦士のあとを追いかけるゴブリンだが、次々に逃走経路上にいる仲間が参戦して、ちょっとした隊列を作りながら連なっていく。この現象はトレインと呼ばれて恐れられている。雪崩のようなものだ。流れに巻き込まれては命が危ない。
 
 私にはヤグードの一件があったので、少し強気になっており、戦士を救おうとトレインの後から追いかけた。が、モンクは遠隔から攻撃するすべがなく、両者の差はまったく縮まらない。戦士は快脚で何とか入り口の近くまで逃げてきたが、無残にも階段の途中で倒されてしまった。

 私は後ろから獣人どもに突撃した。おりしも冒険者のパーティが、こちらへ下りてくるところであった。数体のゴブリンは前後をはさまれてたちまち壊滅、弔い合戦はあっけなく終了した。冒険者一行は何ごともなかったかのように迷宮の奥へと歩いていく。私は座り込んで体力の回復を待った。生命を救えなかったのは無念だが、亡き戦士もこれで少しは浮かばれるかもしれない。


解説

トレインについて

 トレインはFF11だけではなく、あらゆるオンラインRPGで使用される共通単語です。敵が連なっているさまが列車に似ているからこの名がつきました。
 ここでのトレインはゴブリンのレベルが低いこともあって、大した被害をもたらさずに済みましたが、一般にたいへん危険な現象であり、通常巻き込まれれば命はありません。そのため、トレイン現象を発見したプレイヤーは、そのむねを周辺のPCに迅速に伝えるのがマナーだとされています。
 このトレインを引き連れた状態で街などに帰ってしまうと、街の出口に獣人がうようよいる現象を引き起こしかねませんので、注意が必要です。あえて生贄になれとまではいいませんが、周りのプレイヤーに迷惑をかけないように、誠意をもって対処することが必要となるでしょう。

 なお、故意にトレインを発生させて他のプレイヤーに迷惑をかける行為は、処罰対象であり、最悪の場合、ゲーム登録が抹消されることもあります。

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