その16

キルトログ、Harlockとタッグを組む

 傷が癒えて階段を下りたさい、またしてもトレインに遭遇し、入り口に戻ることを余儀なくされた。しかししょせんは下っぱのゴブリンであるから、修練を積んだ冒険者が何人かでかかればたいして怖くはない。

 派手な戦が終わったあと、私と同じように体力を回復しているエルヴァーンの若者があった。名を
Harlock(ハーロック)という。実を言うと街で見たことがあった。ガルカ同様、ウィンダス出身のエルヴァーンというのもけっこう珍しいのである。

 ミッションを遂行しにいくところか、と尋ねられたので、そうですと返事をする。Harlockは9レベルの赤魔道士である。どうも自分は赤魔道士に縁があるような気がしていけない。

 せっかくだから一緒に行こう、とどちらからともなく話がまとまる。私も願ったりかなったりであるが、彼は首をひねって

「二人では
ボムは難しいだろう」

と懸念している。ボムというのは体力が少なくなると自爆して、周辺に大きなダメージをまき散らかす厄介な怪物だ。彼の話では奥に2匹ほどいるという。ミッションを解決するなら、まず避けて通れないそうだ。


 私の方がレベルが一つ下なのだが、そこはガルカでありモンクである。北東の魔法塔でも見せたように体力と攻撃力はいささか自信がある。というよりそこにしか取り得がない。

 ひとしきり戦ったあと、ガルカモンクは勇敢だねと言われたので、ヤグードの野営地に殴りこんで3匹を倒した話をした。Harlockは感心している素振りだったが、もしかするとあきれていたのかもしれない。

 彼はこの迷宮――というほど広くもないけれども――をクリアしたことがある様子で、魔導器を次々と見つけていく。辺りをうろついているゴブリンをやっつけた後「どうぞ」と私を祭壇に促す。そんなだからことはてきぱきと進んだ。

 問題のボムの部屋の一つに行き着いたが、怪物の姿はなく、回復を試みている一人のミスラがいるだけだった。おおかた彼女がやっつけてしまったのだろう。Harlockは残念そうであったが、戦々恐々としていた私にはありがたかった。同じようにもう一つのボムの部屋も先客が相手をしていた。「近寄らないで、自爆するから」と警告までしている。そういうわけで私は怪物に怯えることなく用事を無事にすますことができた。


 奥の部屋でスイッチを入れる。これで魔導球にエネルギーが充填される。あとは回収するだけだ。6つの魔導器を順々にまわって、今度は球を取り出していく。

 その最中「ボムはあの人がねらってるんだろうね」とHarlockが言う。もちろんさっきのミスラのことだろう。
ボムの灰めあてなんでしょうか」と私が答える。
「何に使うものかな」と彼が言う。
 私が返す。
シャントット博士が欲しがっていましたが……」

 そう、読者諸氏よ思い起こされたい。あの可憐ながら可愛げのないタルタルの女博士が要求したものを。ボムの灰と骨くずが二つ。私はご存じのようにこれをまだ果たしていない。

 ミスラ嬢が見落としたものか、ボムがまだ健在の部屋があった。大きなボール状の怪物で、たぎったマグマのような色をしている。調べてみたらたいして強くないようで、じっさい二人でかかるとあっけなかった。自爆はしたが、さほどのダメージも受けなかった。残念ながらこのボムは灰を落とさなかった。私たちは座り込んで体力の回復を待った。

 回復している間、骨くずの話をした。いきおい髪飾りに話題がいったが、私がギルドにたたき売って儲けた話をすると、

「冒険者に転売して稼ぐわけじゃないんだ」

と驚いている。ギルドに290ギルで売れるのだから、利潤を追求するならそれ以上の値で売らねばならぬ。自分で80ギルで簡単にこさえることができるものを、300ギル程度で買う者はあるまい。また髪飾りは兜と同じ扱いであるから、頭部を守る防具としてはいささか頼りなく、その意味でも購買客もきっと少ないはずなのである。じっさい似合う似合わないの問題はさておき、私みたいなモンクが買ってもたいして役には立たないのだ。

 だがHarlockは、「髪飾りなら自分は買うよ」と言って笑う。なぜですと聞き返すと、耳が隠れてしまう防具はおことわり、と言う。そういえば彼は頭に防具をつけていない。「エルヴァーンは耳を出さなきゃでしょ」と彼は胸を張る。種族ならではのこだわりと言うわけだ。
 私は膝を打っておおいに感服した。


 魔導球を集めて階段を上ると、ちょっとした事件があった。
 ポレ・オーレに用事が終わったと話をしていると、3体のカーディアンが私の前に立ちふさがり、球を全部よこせ、と脅迫を始めた。カーディアンにしては言葉がずいぶん流暢だなと思っていたら、ポレ・オーレは震え上がって、いいから渡しなさいとのたまう。言うとおりにするとカカシたちは去っていった。

「奴らは
エースカーディアンだ」と彼は言う。
「とてもじゃないがかなう相手じゃない。この一件は私が手の院に報告しておくから心配しなくていいよ」

 任務を完遂できなかったことは少々残念であったが、外の開放感は格別であった。残念ながらHarlockは用事があるので、ここで別れることになった。私は感謝の意を述べ、頭を下げた。彼の姿が見えなくなってしまうと、単身ウィンダスに急ぐ。とりあえずことの顛末を、早急に
アプルル院長に伝えておかなくてはならぬと思ったからだ。


 私がたどり着いた時には、すでに女院長は成り行きをご存知であった。

 カーディアンたちのことに話がおよぶと、院長は悲しそうな表情をした。魔導球のエネルギーというのは、およそ2年たったら消えてしまうのだそうだ。カカシに生命を吹き込むのには、どうしたって魔道士の力が必要である。おそらく彼らは「死んだ」仲間を何とかして生き返らそうとしているのだろう。だが他人の心臓や脳みそを集めてきても、人間の生命を復活することは決してできないように、そんなことは最初から試みるだけ無駄だと言うのだ。

 カーディアンはそれを知っているのだろうか。知っていてやっているのだとしたら、これほど哀れなことはない。私がやり切れない気分になっていると、院長は
「あの野良カーディアンたちは、私がいつか必ず何とかしなくては」
と使命感に燃え、決意を新たにしている。


 私は複雑な気分で手の院を退出した。私の二つめの仕事はこうして終了した。

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