その23

キルトログ、ギデアスに潜入する(2)

 ギデアス恐るるに足らずと奮起した私は、後日一人での潜入を試みた。少なくとも用事の半分は済んでいるわけだから少し気は楽なものがある。

 あの無礼なヤグードのほかに、もう一人係員がいるはずである。時間的な問題もあってあれより奥へは行かなかったが、同じ食糧庫、おそらくそう遠くにはあるまい。そう思って地図を見ると、お互いに往来は出来ないが、昨日の食糧庫のあった広場と対になるような場所が、入り口から辿ったもう一つの道の奥にある。これを調べてみない手はないだろう。


 勝算は高かろう、と思っていったら案の定だった。ヤグードは、食べ物を貰ってからゲッゲッと不快な声で鳴いたあと、用事が終わったらさっさと帰るように、と私を追い払う。

ギデアス 奥には洞窟が広がるが……

 前回と同様、ヤグードの傍らに天井の低い洞窟が穴を開けていたので、興味があって覗いてみたら、通路が奥までずっと続いている様子だ。だが地面から巨大な回虫のようなモンスターが屹立していて、ずいぶんと気味が悪い。おまけに近寄ると、あろうことかストーンをかけてくる。斧でぶちのめしたら静かになったが、ウィンダス近隣では虫の分際で魔法を使うものがいるのか、と、帰路の途中改めてその文化の深みに感じ入ったりもする。


 鼻の院へ行き、
リーペ・ホッペに任務完了を報告する。彼は院の屋上で袋をくれた人だが、階段を上る途中で話し声を耳にしたので、来客があるなら邪魔をせぬようにと心がけて静かに段を上がった。

 話の主は口の院院長、アジド・マルジドだった。リーペ・ホッペと口論に及んでいるみたいだ。鼻の院院長に見つからぬよう「鍵」を手に入れてほしい、と頼んでいるようだけれども、リーペ・ホッペはお偉いさんの剣幕に当惑しながらも、断じてこれを受け入れないといった立派な態度を貫いているようだ。


 もれ聞く話から事情を推察すると、どうも以下のことのようである。

 20年前のクリスタル戦争よりもはるか昔、地下水路に
「偉大なる獣」(その名は明らかにされなかった)が存在した。が、戦争の時代を境に姿を消し、同時に地下水路へ下りる水呼びの扉も厳重に封鎖され、鼻の院院長の持つ鍵なくしてはそこへ入ることはできなくなった。

 アジド・マルジドはどうしてもその扉を開き、奥にある
カラハ・バルハの研究室に行きたいらしい。カラハ・バルハという名には聞き覚えがある。天の塔の前にいる演説おじさんが、その業績を称えよ、と声高に主張していた、いにしえの魔道士である。この人は「ショーカン」という偉大な魔法を使ったようだがはっきりしない。アジド・マルジドは、どうやらその失われた魔法に強く魅せられているようだ。魔法実験も元はと言えば、彼のこうした欲求が暴走して行われたものなのである。


 他人が来たのに気づくと、アジド・マルジドはそそくさと階段から去っていった。リーペ・ホッペは、かの男の噂は耳にしていても、実際にその行状を目の前にするのは初めてらしく、院長という要職に就くものがあのようで、どうしてカーディアンたちに逮捕されないのか不思議だ、などとぶつぶつ言っている。

 私は無視をしてギデアスでの成り行きを語った。これからゲートハウスに行ってお達しを受けなさい、との命令を受ける。リーペ・ホッペは「きっといいことがあるッペよ!」と、奇妙ななまりでくすくす笑うのだが、確かにそれは吉報だった。3つの試練を無事やり遂げた私は、ミッションランク2へ上昇し、シグネットの効果延長など、それに応ずる権利を得た。ささやかながら国から功績が認められたという格好である。

 これからはクリスタルを上納したり、各地にあるアウトポストに補給物資を届ける仕事を志願したりして、ミッションポイントを上げなくてはならない。その点数に応じて国がふさわしい仕事を用意してくれる。なるほど合理的なシステムだ。冒険者だって頑張り次第で出世できると言うのは、私のような風来坊にとっても決して悪い話ではない。

 だがとりあえず当面は、私に国からの仕事はないらしい。私は西サルタの門を潜って、またどこかへ武者修行に行こうかなどと考え始めた。

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