その28 キルトログ、バストゥークの外に戦いに出る
自然に調和したウィンダスは、天然の素材を活かしたつくりである。悪く言えば田舎だ。道路は踏み固められた土のままだし、店だって高床式の小屋であり、海に浮かんだ小舟である。ミスラとタルタルが多いせいか、住民はみなおっとりとしている。ヤグードへの政策は確かに不安材料だが、生来楽天家な国民の気風がそれを感じさせない。不思議に心落ち着くのはお国がらによるものだろう。 バストゥークで見られるのはもっと雑然とした空気である。街が石作りというのも大きいかもしれない。灰や白、茶系統を基本にした町並みは決して派手ではないが、その素材の頑健さからくるイメージもあるだろう、質実剛健の気風が満ち溢れているようだ。 かつてこの土地には何もなかった。全て一から始めなければならなかった彼らは、苦境を弾き飛ばす力強い開拓者精神に支えられ、こつこつと文明を切り開き、名を捨て実を取る文化を育んでいった。その蓄積が、ヒュームの商人たちの飽くなき上昇志向へと繋がった、とみるのは、少々うがち過ぎであろうか。
まずは冒険者としてすべきことがある。モグハウスを借りねばならぬし、連邦領事館に挨拶にいって、シグネットをかけてもらう算段などを立てねばならない。 ウィンダスは超自然のテクノロジー、魔法に多くを負っているが、バストゥークは科学に傑出する。とりわけ建築技術の粋を集めた大工房には圧倒された。これは商業区にある一大建造物で、行政に関わるあらゆる施設が集合した、この国の心臓部に当たる。24時間稼動しているリフトで、うす暗い上下階を自在に行き来できる。どことなく鉱山を連想させるのも偶然ではあるまい。バストゥークは土を掘り進む技術によってここまで成長したのだから、そのノウハウが生活面でも活かされて当然だろう。
大工房の2階、というより屋上には、各国の領事館が仲良く軒を連ねる。ウィンダスの国旗を見かけて入っていったけれども、領事は退屈しどおしのようだ。領事などと言うと立派だが、実際には閑職がいいところらしい。もっとも他国の事情にまで私は精通してはいないので、これがのんびりしたウィンダス人特有の気質だとしても、全然不思議ではないのだけれど。 シグネットをかけて貰ったので、外に出て少し戦闘してこようかという気になる。バストゥークは街中に鉱山の入り口がある……。もっともこのツェールン鉱山は、生活に密着しているぶん敵も強くはないだろう。そう思って外へ出ることにした。 北グスタベルグというのは非常に不便なところで、東西が大きく分断されたかたちになっている。私の知る限りでは、断層があって互いに行き来できない。東の部分はバストゥークの北門を抜ければすぐだ。西へ行くには、一度南の門から出て、南グスタベルグを通り抜けて、大きく迂回して来なくてはならない(注1)。 私が入国したのは、後者の経路によるものである。つまりそちらへ行くと、コンシュタット高地からバルクルム砂丘へと繋がっていくわけだ。 Solについて来た段階では気づかなかったが、北グスタベルグの西には大きな橋がかかっていて、東側に巨大な滝が雄大な姿を見せている。絶景だ。これでクゥダフやロック・リザードがうろついていなければ完璧なのだが……。
私は獣人を倒しながら北へ北へと進んだ。何のことはない、鳥が亀に変わっただけである。あちこちに焚き火のあとがあるので、文化程度も似たようなものだろう。コンシュタットに近くなると徐々にクゥダフが強くなっていく。これは何となく、タロンギとの境にいたヤグードたちを連想させる。 だがかんじんの高地の手前には、大勢の冒険者がたむろしていて、エリアを越えるようすがない。何でも大羊が入り口付近にいて、危険で入れないのだという。仕方がないので引き返すことにした。この街の近くに、どこか手ごろな敵の頻出する地域はないであろうか? 注1 南グスタベルグからは、北グスタベルグの東西どちらの側へも抜けることができます。
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||