その34

キルトログ、ダングルフの枯れ谷へ出かける
ダングルフの枯れ谷(Dangruf Wadi)
 ダングルフ火山に近い渓谷。
 なかでも、火山に近い地域では、地熱による高温の湧水が見られ、昔はガルカ族に温泉として利用されていた。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 知る人ぞ知る、商業区に、自身の健康をうりものにしているヒュームの老人がいる。

 近くにいるガルカの話では、この老人は冒険者から骨くずを買い取って、粉にしていたのだと言う。もしやそんなもの――死――を食べてまで生を得たいのか、と言って、彼は哀れげな顔つきをしていたが、真相はさにあらず。老人は、骨という死の象徴を身近に置くことで、逆説的に生きる糧にしているという。私が骨くずを持参すると、老人は、若い者には難しいかもしれないが、と言って呵呵大笑するのであった。

 なるほど生は死の対極ではあるが、ガルカにおいてはいささか事情が異なる。我々は転生するからだ。ガルカにとって死とは、文字通り「長い眠り」に過ぎない。もちろん死ぬことに対する恐れはあるのだけれども、ガルカはヒュームよりも長い寿命(注1)、約束された第二の生によって、死の認識が他種族ほど逼迫してはいない。老人の哲学は興味深いが、そうした観点から、他種族の生に執着する姿が、時に愚かしく見えることもまた事実である。

 骨くずの褒美というわけか、
ダングルフの枯れ谷の地図を貰った。先日Antaresらと旅したとき、狩場の候補に上がっていた場所である。

 同地は南グスタベルグの南西にある。枯れ谷に近くなると、煮えきった水たまりが増え、地面からところどころ水蒸気が噴きあがるのが多く見られるようになる。おそらく火山帯に近いのだろう、幸いバストゥークの近くに活火山がある、という話は聞かぬけれども、あからさまに生態系が変化していく。熱い地域は苦手というわけか、クゥダフの姿はこの近辺ではほとんど見つけることができない。

 中へと踏み込む。狭い岩道が続いているところが、どことなくギデアスを連想させる。草花の色は毒々しく、ひどく蒸し暑い。ロック・リザードがねり歩き、
ホーダー・ヘアという名の兎が飛び跳ねている。少し広いところでは、お馴染みゴブリンの姿も見られる。一人では何かと心細いし、何より楽しくもないので、何とかして仲間を探そうと思ったが、手ごろな強さの冒険者がいない。先日の砂丘の件で、大人数での役回りに自信をなくしている。同じほどのレベルの連れが、一人ないし二人ほど欲しいところだ。

間欠泉 吹き上がる間欠泉に乗って、上段へ上がる。
その先は敵が段違いに強い

 間欠泉の手前で、
Daichi(ダイチ)というヒュームの冒険者に声をかけたら、快く協力してくれることになった。彼はレベル10で、レベル5の黒魔道士をサポートにつけている。戦士の私としては願ったりかなったりである。

 意気揚揚と間欠泉に乗った。熱泉だったら大火傷を負うところではあるが、足元から吹き上がる泉は、常温以上の熱さがなく、安全に冒険者を上まで運んでくれる。ここから先は敵が強いですよ、とDaichiが警告するが、望むところである。先日頑張って11レベルに上がったものだから、少々私も気が大きくなっているのだ。

 だが、確かにこの先の敵は手ごわかった。特に徘徊するゴブリンは、戦いが終わるたび、どちらかが必ず瀕死の重傷を負っているほどの実力だ。Daichiのエアロ(注2)には随分と助けられたが、一桁台の体力をかろうじて残して勝つことが二度続き、容易ならざる状況に改めて気持ちを引き締めるのだった。

 
ジャイアント・グラブという、地面から顔を出した巨大な虫がいる。ギデアスの例の虫や、バストゥーク周辺にいるストーン・イーターと同種の生き物だけれども、バインド(注3)やストーンをかけてくるくらいで、さして強くない。各個撃破すれば相応の経験が得られるので、これを集中的に倒した。バインドがかかった状態でゴブリンに見つかったら死は免れないが……。私たちは間欠泉のある方へ逃げておきたかったが、強いゴブリンに見つからぬよう逃げて――悪いことに――奥へ奥へと行かざるを得なくなった。

 結局、奥から来た別のゴブリンに見つかり、奮闘空しく二人とも生命を落としたのである。ただし失うよりも多く経験を得ていたのでよしとするべきだろう。


 私は商業区に復活した。Daichiが北グスタベルグにHPを置いていたので、彼がバストゥークに帰ってくるまでの間、急いで領事館に走り、シグネットをかけてもらった。
 
 二人で行き先を相談した。もう一人雇って枯れ谷へ戻るか、という案も出たけれども、どのジョブの人間を加えても戦力に偏りが出るような気がした。二人のままなら、敵がリンクしづらい開けた場所の方がいい。しかしコンシュタットは大羊が出るし、人も多そうだ。どこも一長一短である。最終的には、できるだけリンクを起こさないよう注意して、パルブロ鉱山でクゥダフを狩ろう、という話に落ち着いた。結局安穏と鍛錬できる場所などないのである。
 


 ご存じのように、パルブロ鉱山のクゥダフは、序盤は弱い。実力差がありすぎるのだろう、最大で5〜6匹の群れを見たけれども、積極的に襲ってくる様子はない(注4)。それでも獣人がうようよといるのは気分のいい光景ではない。我々はさくさくと奥まで進んだ。少し歯ごたえのある亀2匹を倒したと思ったら、その先に3匹。ようとは覚えていないが、おそらくここが以前、私が生命を落とした場所であろう。

 我々はそれ以上深入りせず、3匹を倒しては戻って2匹をやっつける、という作戦に終始した。釣り役はDaichiが行った。枯れ谷ほどめざましい稼ぎではなかったが、一人で黙々と獣人をぶちのめすよりは、こうしてお互いにコミュニケーションを取りながら鍛錬をした方が、人脈も広がろうし、第一だんぜんに楽しい。

 途中
慎重なシーフ、元気のいい女モンクの二人が通り過ぎていったが、通行人と言えばそれくらいだった。間違ってリンクを起こしてやられるまで、狩りは延々と続いた。クゥダフ人形の頭というアイテムが手に入ったのだが、お互いに必要ないようだ(注5)。奴らの文化程度からすれば、祭祀用なのだろう。いずれにせよ、こんな気味の悪い人形――しかも頭部のみ――を持っていても仕方がない。誰か欲しがる冒険者がいれば、と思って、いやいやながらこの戦利品をモグハウスへと持ち帰った。 

注1
 公式設定によれば、ガルカは200年生きたのちに転生します。詳しくはその35を参照。

注2
 エアロは、風で敵を切り裂く魔法。

注3
 バインドは、敵を足止めする魔法。効果が持続しているあいだ、地面に足がはりついて動けなくなってしまいます(手の届く範囲に攻撃はできます)。黒魔道がバインドを使い、敵を足止めしてから、攻撃魔法を雨あられとぶつける、という作戦でほとんどの強い敵を倒していたので、スクウェア側が修正を行って弱体化しました。

注4
 自分から見て「練習相手にもならない」強さの敵は、近づいても襲ってはきません。ただし座っての回復中や、リンクした場合は別。

注5
 クゥダフ人形のパーツ(4つ)は、バストゥークのミッションで必要となる品。その29の「(鉱山には)ミッションを受けた冒険者が集う……」というくだりの原因となるものです。Daichiはクリア済、Kiltrogは外国人なので、ここでは二人とも特に欲しがらなかったというわけです。


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