その37

キルトログ、コンシュタットで羊を狩る
コンシュタット高地(Konschtat Highlands)
 バストゥーク共和国の北方にあたる草原。
 バストゥーク山脈にしては、珍しく高原性の草木が豊富に生育しており、動物層も豊かである。
 また、この一帯には、オーディン風と呼ばれる強風が吹き付けるため自動化された風車群が設置されており、ここで製粉された小麦粉は、協約に従い、サンドリアとバストゥークの双方に輸送されている。
(ヴァナ・ディール観光ガイドより)
 コンシュタット高地は、どことなくタロンギ大峡谷を連想させる場所である。

 もちろんコンシュタットの方がずっと緑が豊富なのだが、エリア南部は岩に囲まれた迷路が続き、北へ抜けるととたんに視界が開ける、といった構造上の共通点がある。また、ウィンダスないしバストゥークから港町へ抜ける途上にあって、モンスターの強さもさして違わない。タロンギにはトレマー・ラムのような凶悪な化け物がいないが、大きな違いというとほとんどそれだけといった気がする。

 南の迷路は大半が隘路で構成されていて、時に広い場所に出る。私は東側の野原で鍛錬をして、ついに12レベルに成長を遂げた。

 ここで相手にするのは、ストローリング・サプリング(うろつく若木)という地下茎のお化けである。球根から双葉をつけた短い幹がまっすぐ伸びており、見た目は台所に放置しすぎたたまねぎといったところだ(注1)。一見ユーモラスだが、この幹をぶんぶん振り回すので意外に手ごわい。ただし致命的な特殊攻撃をしてくるわけではないので、いい訓練相手になる。他には丘の地面から顔を出したロック・イーターや、手ごろな強さの
ミスト・リザードなど。視界が開けているのでリンクしづらく、数匹うろついているクゥダフにさえ気をつけていれば、それなりに経験が稼げる。私は遂に自分のレベルにあった場所を見つけた、と思って快哉を叫んだのだった。

 いちど街に戻ってから、ずっと一人で戦うことに退屈を覚えていたので、誰か仲間を探すことにした。

 ちょうどいいことに、コンシュタットに私と同じレベルの赤魔道士がいたので、直接声をかけて組んでもらった。ヒュームの彼はVictor(ヴィクトル)という。私は東の野原で敵を狩りましょうと提案し、二人いさんで戦場へと出かけていった。

 ところが時間帯が悪かったか、この界隈には手ごろな敵がさっぱりおらず、どれも楽に倒せるモンスターばかりである。一人のときなら、こうした敵を次々倒していれば、着実に経験がつめるし、もっと強いやつが現れるまでのよい時間稼ぎとなる。だが二人だと実入りが少なすぎて、あまりに馬鹿らしい。とりあえず手近なクゥダフ2匹に挑んだが、実は死角に3匹目がいて、さほどの強さではなかったにもかかわらず、私は瀕死の重傷を負った。戦士の切り札マイティ・ストライク(注2)まで使ってしまった私は、先行きに不安を覚えた。だが敵がいないことには仕方がない。Victorはトレマー・ラムをしきりに気にかけていたが、こうなったら多少の危険を冒してでも北へ上がるしかない。


 開けた場所に出ると、目前に白い大きな建造物がある。地図にはデムの岩と記載されているが、明らかに人の手が入っており、一見したところ寺院か城のようにしか見えない。何のための存在なのだろうか? この近辺で手ごわいミスト・リザードを相手にしているとき、再び私は重傷を負った。救いの回復魔法をかけて貰えなかったら、敢えなく死んでいたに違いない。

 親切な人の名はNazca(ナスカ)といって、7レベルの戦士をサポートにつけた14レベルの白魔道士。ヒュームの女性である。一人で戦っているようだったから、Victorと相談ののち仲間になってもらった。彼女はケアル2をはじめとして、バパライラ、バエアロラ(注3)など多彩な魔法を覚えていて、Victorと二人で感嘆したのだった。彼がケアルしか使えなかっただけに、回復魔法についてはたいへん心強いものとなった。


 しばらくコンシュタットでミスト・リザードを中心に狩っていたが、思うほど経験が入らない。Nazcaが「バルクルムに近い方が敵が強い」と言ったので、そちらに場所を移すことにした。砂丘入り口のサンドリア兵にHP設定をしてもらってから(注4)、高地へと引き返した。だが手ごろな敵がやっぱり見つからない。このまま時間ばかり過ぎ去っていくのだけは避けたかったので、深入りせず、危険があれば迷わず南へ逃げるようにしましょう、と言い伝えて、私の判断で(嫌な思い出がある)砂丘のモンスターを相手にすることにした。

 砂丘には180人からの冒険者が集結していた。いやな予感はした。ナイト・バットを相手に戦って、手ごろな経験が得られたので、みんなで「これだ」と言ったものだが、率直にいって理想的な戦闘はこの一度きりだった。皆で回復している最中、どこからともなく現れたゴブリンに切りつけられ、ターゲットとなった私は――皮肉にも自己の忠告通り――南のコンシュタットへと逃げたのである。気を取りなおして再度挑んだけれども、敵は強い、モンスターは見つからないの二重苦である。しまいには強すぎる
ヒル・リザードに倒されてしまって、私はまた不幸な思い出をひとつ重ねるはめになった。


 砂丘はすっかり懲りた私は、経験が多少少なくてもいいから、コンシュタットで戦おうと腹を決めた。仲間を増やそうか、という話が出たけれども、人数が多くなればなるだけ、どんどん強い敵と戦わなくてはいけない羽目になるのはわかりきっていた。そこでターゲットを羊(マッド・シープ)とミスト・リザードに絞って、あくまでも3人で高地をうろつくことにした。

 結果的にいって、この狩りは正解だった。密かに心配していた、シープソングで皆が眠りこんでしまうようなこともなかった。一人で戦うよりも特別効率がいいというわけではなかったけれども、戦闘スキルがぐんぐんと成長していくし、リズムよくモンスターを倒していくのは心地よかった。マッド・シープは目立つから見つけやすいうえ、そもそも1ランク上のモンスターだから、強さも手ごろなのが我々にとって幸いだった。

 あんまり調子がいいので、高地の北東にあるパシュハウ沼へも足を伸ばしてみた。ここは途切れることなく雨が降り続く場所で、本来なら砂丘よりもずっと強い敵がごろごろいるところだ。入り口の兎を相手にしてみたら確かに強い。割と苦労して倒した割りに、得られた経験がさほどでもなかったので、ここはただやって来たということだけを記念にして高地へ戻ることにした。

沼 パシュハウ沼

 Nazcaが「グスゲン鉱山が近いけど、いってみる?」と言った。名前だけは聞いたことがあったけれども、何処にあるのかは知らなかったので、場所だけでも、と思い案内してもらう事にした。彼女はデムの岩の東側を抜けていきながら、ゴーストに会ったらいちもくさんに逃げるから、と念を押す。その口調にはVictorが大羊を相手に言うのと同じレベルの畏怖が感じられる。ゴーストはこの近辺に出る特殊な怪物で、強力な魔法を次々にかけてくる厄介な死霊の一種なのだ。

 道すがら南下していく途中、丘の上にぼろぼろになった黒い毛布のようなものが浮かんでいた。Nazcaが悲鳴を上げ、きびすを返して駆け出していく。みなまで説明は要らぬ。これが問題のゴーストであると知って、私たちは一目散に北へ逃げ、安全な位置に落ち着いてから額の汗をぬぐった。

 ここに来て、私のシグネットが遂に切れた。Nazcaはまもなくレベルが15になるという。さすがに3レベルも差がついては、私たちが得られる経験は乏しくなってしまう。切りもいいので、ここで解散することにし、私は二人にひときわ大きく手を振ってから、北グスタベルグへの道をひとり遡っていった。

注1
 ストローリング・サプリングはタロンギにも出没。その18でTroiaが「根っ子」と呼んでいたモンスターです。

注2
 マイティ・ストライクは、効果持続時間中すべての攻撃が会心の一撃となります。戦士が最初に覚えているジョブアビリティ。

注3
 語頭にバのつく魔法は、主に耐性を身に付けるもの。語尾のラは集団にかけるものを表します。
 従って、バパライラは、パーティのパライズ耐性魔法、バエアロラはエアロ耐性魔法です。バスリプル(スリプル(=眠り)耐性)のように、語尾にラのつかない魔法は、ほとんどの場合自分一人にしかかけることができません。

注4
 アウトポストと異なり、要所に旗を立てて、そのリージョンを支配している国のガードが立っていることがあり、シグネットとHP設定が受けられます。エリア切り替え付近に多いのですが、地図には場所は記載されていません。

(02.07.27)
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