その41

キルトログ、Denissと再会する

 バストゥークで懐かしい顔に出会った。

 実際に顔を合わせたのはずいぶん話してから後だったが、ウィンダスで釣りをしているものとばかり思っていたDenissが、こともあろうにバストゥークへ出てきて、パルブロ鉱山で亀を相手に奮闘しているという。

 ずっと音信不通だったので、あるいは彼女はヴァナ・ディールからいなくなってしまったのではないかと思っていたが、そうではなかったようだ。私も当面は急ぎの用事がないし、せっかく近くにいるのだから、彼女に協力することにした。幸い戦士12とモンク12でレベルの問題はまったくない。それは私がいかに成長していないかということでもあるのだが、やみくもに戦闘だけに勤しむには、ヴァナ・ディールは広大すぎ、魅力的に過ぎるのだ。私にとっては。


 Denissは鉱山の奥で、亀と戦いながら通信をよこしていた。

 鉱山の入り口を潜った私は、彼女とパーティを組んだが、地図を見ても居場所がつかめない(注1)。それもその筈でずっと奥の方にいるのだ。一人で無茶をするものだ、と思いながら走った。私のレベルが上がり、かかってくるクゥダフは若干少なくなったが、さすがに無人の野を駆けるというふうにはいかない。気づかずにトレインを巻き起こしたら問題なので、少しでも強いやつは順次片付けながら進んだ。手前は難なく乗り切れるが、さて、奥の方が問題である。

 私が以前倒れた辺りにさしかかると、魔法使いと思しき
ヒューム女性と、印象的に長い名前のモンクのコンビが、3匹のクゥダフと一戦を交えていた。腕試しに複数を相手にしているのではない、と判断した私は、アメジスト・クゥダフに挑発を仕掛けた。この亀は単細胞なヤング・クゥダフと違って、魔法を仕掛けてくるから、同じくらいの強さでも少しだけ厄介なのだ。そして混戦になると、戦闘そのものが長引くから、弱体魔法のダメージが徐々に徐々に効いてくる。

 私が乱闘に励んでいるあいだ、不幸にもDenissも複数の敵に囲まれたらしく、たどり着く前にやられてしまった。魔道士嬢に礼を言われた私は、お互いの旅の無事を祈り、無茶をしない程度に周辺のクゥダフを片付けていた。Denissはめげることなくグスタベルグを走って鉱山に戻ってきた。ここで二人ともずいぶん久しぶりに顔をつきあわせることになったのである。


 Denissの目的は小銭稼ぎであった。リンクシェル(注2)を買いたいのだという。この品物は購買客が多ければ多いほど値段がつりあがるという厄介な傾向がある。もともとの価格は6500ギルだが、国によっては既に10000ギルを越えているらしい。ちなみに彼女はまだ1000ギルしか持っていないのだそうだ。気の長い話である。

 鉱山で戦う理由は明白だ。モンスターの中でもギルを持っているのは――考えてみれば当然だが――獣人だけである。一度の戦闘で手に入る額はわずかでも、いろいろな戦利品を落とすので意外にいい儲けになる。クゥダフの背甲や甲羅の盾などは100ギル以上で売れるので重宝する。10000ギルとなるとかなり地道にやらなくてはいけないが、地道にこつこつと貯めるのが結局は一番近道だったりするものだ。

 Denissはここの敵が以前ほど手ごたえがなくなったことを通じ、自らの成長を実感しながら、次々に獣人を屠って奥へ進んだ。とはいえ若干二人に過ぎないのだから、中へ踏み込み過ぎるのは危険だ。私のように挟み撃ちをくらう可能性もある。だから手ごろな強さのクゥダフがいた洞窟の前で休憩をとり、順次沸いてくる亀を倒すことにした。場所こそ違うが以前Daichiと採ったのと同じ戦法である。 

 途中一人の冒険者が数体のクゥダフを相手にしていたので、Denissが助けに走っていってしまった。彼女はあとで見境のない行動を詫びたものだが、窮地に立っている人を見かけたら、冒険者という人種はほとんどがそんな行動をとる。思えばKewellもそうだったし、私もそうだと思う。役に立つかどうかは別として、時に厳しそうな戦闘をしている人を見かけたら、傍らでしばらく見守ったのち、勝てそうな戦なら本人の手柄に任せ、健闘に拍手をして立ち去る。時には自分の命を危険にさらしても、人を助けようとする人がいる。冒険者はそれでいいと思うし、それがいいと思う。


 この戦いでクゥダフがしばらくいなくなったので、私たちはもう少し奥へと踏み入った。私には完全に未知の領域である。するとキノコに昆虫の足の生えたようなのが4〜5体、不気味にかたまっている。擬態動物なのだろうか。冒険者仲間がいちように「きのこ」と呼ぶモンスターの話を聞いたことがあった。おそらくこのケイブ・ファンガーという化け物がそうなのであろう。

 強さも丁度よいようなので、私は「ためしに一匹に挑発をかけてみようか」とDenissに話した。きのこはおいしい敵らしいよ、と彼女が言う。そしてこう続けた。「ただしギルは落とさないけど」

 そうか、と思ったが、私は既に挑発の姿勢に入っていた。恐ろしいことに、その行動ですべてのケイブ・ファンガーが一斉にこちらを振り返り、節足を蠢かせながら襲い掛かってきた! 心臓が凍りついた。この位置から逃げられるわけはないし、これだけの数を相手に勝てる望みもまるでない。

 ひとおもいに殺してくれればまだよかったのだが、私たちが死ぬまでには思ったより時間がかかった。その間に一匹のクゥダフが、復讐を果たすかのように参戦してきた。ケイブ・ファンガーの雪崩のような攻撃に混じって、きゃつは心なしか嬉々として私たちを切り刻んでいるかのように見えた。


 まず私がやられた。ついでDenissがやられた。私が目覚めたのは何とセルビナの港であった。祭りから戻ったときに設定しなおすのを忘れていたらしい。さすがに遠く離れたので、Denissとはこれでお別れとなる。私は気を引き締めながら、砂丘を抜け、コンシュタットを抜けて、命からがらバストゥークの街へと逃げ帰った。


注1
 パーティを組んでいる相手の位置は、地図上に青いマークで示されます。

注2
 リンクシェルに関しては、その13の解説を参照して下さい。

(02.08.04)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送