その47

キルトログ、メアの岩を調査する

 例えば幼な子が、火はなぜ燃えるのかとか、水はなぜ高きから低きへ流れるかに疑問を抱くように、私もずっと、ヴァナ・ディールがどのように出来上がったかについて興味を持ち続けてきた。

 そんな私にとって、タロンギのメアの岩は絶好の研究材料である。自分のような浅い頭脳で何が解き明かせるかはなはだ疑問ではあるが、探究心を満足させるために渓谷へひとり赴く。古代人の叡智に触れたいという思いは大いにある。力への渇望ということを別にしたら、私の気質はアジド・マルジドとそう大差ないのかもしれない。


 デムの岩をして、誰かが「貝殻」と表現したのを聞いたことがあるが、なるほど白地に薄い桃色がさした様子は、桜貝のおもてに見えなくもない。階段の上には、想像したとおり見覚えのあるクリスタルが静かに回っている。記念にこのかけらを拾っておいた。階段は3つあるが、いずれも同じ力場であるようだ。確かめたわけでないが確信をもって言える。デムの岩にも三箇所、同じような台座がこしらえてあるに違いない。おそらくはまだ見ぬラテーヌの建造物にも。

 さてタロンギの興味深いのは何もこればかりではない。メアの岩の北に出ると砂に半ば埋もれた巨大動物の骨が横たわる。その大きさはダルメルごときの比ではない。あぎとだけでゆうに私の身長を越えるのだ! 牙の一つ一つが私の手のひらほどもある。古代に消えてしまった生き物のなれの果てか、「偉大なる獣」の末路か。あるいは近頃うわさのドラゴンの眷族ででもあるのかもしれない。


骨 得体の知れない巨大生物の骨

 私はあるパーティの盾役として雇われ、ブブリムに出撃したが、例の目まいを起こし、失礼を言って舞い戻った。回復後は目ぼしい獲物を求めてタロンギをうろついた。ダルメルは他の人が狩り出しているから、主に獣人を標的にする。特にマウラへ抜けていく旅人たちを狙うゴブリンやヤグードのたぐいである。

 一人のタルタルが私の傍らを駆け抜けていった。次いで現れたゴブリン・ブッチャーが、わき目を振らず彼の後を追っていく。私は挑発を仕掛けてこれを迎えうった。体力のある相手ゆえ少々しんどいかな、と危惧していたが、この小さな善行を見てくれた人より、ケアルやらプロテスやらをかけてもらって、ずっと楽に獣人に天誅を下すことができた。ありがたいありがたい。

 お互いに休息をとりながら、18レベルシーフのヒューム氏と、逃げていたタルタル氏(白13、黒6)と話した。冒険者という根無し稼業において最も喜ばしきことは三つある。一つは前述したような知的好奇心を満足させること、一つは戦の興奮でおのれの獣性を満たすこと。最後に志を同じうする者と語らうことである。今がまさにそうだ。傍らでまた悲鳴が上がったので、三人揃って駆けつけると、別のタルタルが別のゴブリンのえじきになるところだった。ヒューム氏が率先してこの仇をとった。彼の無念そうな表情は忘れられない。

 さてそこに大風が吹いて、
エア・エレメンタルが音も無く流れてきた。これは魔法に反応して襲ってくる超自然の生き物である。気づかずにケアルなどを使うとおおごとだ。これに気づいた者はみな悲鳴を上げて逃げ出していく。私も後に続く。せっかくの交流も無粋なモンスターのせいで尻切れに終わる。混乱のうちに二人はすっかり姿が見えなくなってしまった。

 タロンギを下ると、一人のタルタルが「根っ子」と戦っていた。どこかで見覚えがあると思いきや、いつぞやサルタバルタのアウトポスト前で、毒に苦しんでいた私を助けてくれた恩人である。戦闘が終わるのを待って厚く礼を言った。タルタル氏は困惑しているようで、私のことも思い出せないらしい。確かにあれはずっと以前のことであるし、白魔法で誰かを助けた経験も日常茶飯事であったろうから、記憶になくて何の無理もない。

 ところでこの日は石の区でPoporonとも会ったのである。何だか懐かしい日々を思い出させる一日であった。
(02.08.19)
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