その201

キルトログ、ノーグの入り口で蟹狩りをする

 Leeshaとの関係に決着がつき、暫く経ってから、私は彼女に結婚を申し込んだことを、手記のかたちで公表した。

 手記は大反響を呼んだ。

 恋愛というのは注目を集めやすい。ヴァナ・ディールにおいても、好いた惚れたの話題に関して、いかに多くの人が興味を寄せていることか! しかも私はLeeshaの返答に言及していなかったので、読者を生殺しの状態においていたのだ。はやばやと祝福の言葉をかけてくれる人もあったが、やはり結果が知れないことには、どういう態度に出てよいか判らない方が大半だったようで、ただ静観している人もあり、堪えきれず直接尋ねてくる人もあり、友人たちの反応は十人十色だった。

 私が絹糸集めを続けていると、Senkuははるばるジュノからやって来たあげく、私に向かって小さい手をひっきりなしに叩き、「よく言った! よく告白した!!」と言って、こちらが困惑するほど賞賛するのだった。一方Sifは、私がLeeshaと二人でいるところを見つけて、意味深な笑みだけを残して通り過ぎていった。Apricotなどはもっと手が込んでいた。いろいろな状況証拠を重ね合わせ、この二人はうまくいったに違いないと見当をつけて、あつあつですね、などと冷やかしの言葉をかけてくるのだ。さすがというべきか、Leeshaがウィンダスに移籍している点も、抜け目なく看破していた。彼女の眼力の鋭さには全く恐れ入ってしまう。


 婚約から少し日をおいてLeeshaに会った。驚くべきことに、彼女は数日間で、私がこなしてきたミッションをすべてやり遂げたらしく、はやばやとランク3となっていた。あっという間に肩を並べられてしまった。何となくだが、この経験の違いがある限り、私は一生彼女には敵わないだろう、という気がする。

 幸い白魔道士のレベルは、私とほとんど違わない。だから一緒に鍛錬に出ることが出来る。私たちはジュノへ上がった。いつもは誘われるのを待っている私が、リーダーとしてメンバーを募るのだ。狩りの経験と知識の薄さから、パーティを主導で集めるのには、どうも二の足を踏むのだけれど、Leeshaが隣で発破をかけてくる手前、そうそう腰が引けてばかりもいられない。

 さすがに白魔道士がいると、募集にはさほど困らない。短時間で6人のうち5人が早くも決まってしまった。

 ヒュームのHendrik(ヘンドリック)。 戦士33、モンク16レベル。
 ヒュームのVilla(ビジャ)。吟遊詩人32、白16レベル。
 ヒュームのTadatomo(タダトモ)。シーフ32、戦士16レベル。

 何だかヒュームばっかりである。

 赤魔道士を探すのには少し難航した。いるにはいたが、ヒュームのNighthorror(ナイトホラー)(赤魔道士32、)は、ノーグに用事を持っていて、同地で鍛錬の真っ只中であった。そういうわけで、本人はパーティ参加希望をうたってはいるが、海賊の巣窟の近くで鍛錬を願えないだろうかという。我々は協議し、これを了承した。もともと具体的な狩場は決まっていなかったのだ。ノーグ近郊というと、これまで何度か滝裏の洞窟で、サハギンや怪魚マカラを相手に戦ってきた。33レベルとなった今は、敵として少し物足りなくなってはいまいか。彼に直接聞くと、Naighthorrorはよく判らないという。少なくとも狩場の知識に関しては、私たち二人はあまり差がないらしい。

 飛空挺に乗ってカザムへ向かった。森の中でさんざん迷ってしまい、冷や汗をかきながら、何とか滝の裏へ到着した。驚くべきことに他のパーティが常駐していない。周囲のマカラの強さを調べたならば、今の我々が狩っても十分実のあるレベルだ(一方でサハギンは一段落ちていたが)。ところがNighthorrorがこちらへ向かおうとして、モンスターにやられてしまい、再び海賊のねぐらに戻されたので、我々が彼のもとへ向かうことになった。Leeshaのスニークを利用して、足音を殺して駆ける。ノーグ門前を照らす松明は、相変わらず鬼火のようにゆらゆら揺れて、洞窟を赤く染めているのだ。

ノーグ入り口前
蟹を攻撃する

 一同で一番レベルの高いのは私、あるいはHendrikである。しかし敵を釣って来るのは、ひとつレベルの低いTadatomoで、私が替わろうかと言っても、聞こえたのか聞こえなかったのか、釣り役をやめようとしない。だから放っておいて彼に任せることにした。

 この洞窟に住む蟹はアイアンシェルという種である。私は両手斧を――念願叶って!――振り回し戦ったが、恐ろしく甲羅の硬い敵だった。しかしLeeshaが興味を持っているのは、明らかにその下にある肉の方である。幸いにして、Tadatomoが連れてくる敵のうち、大半が蟹だったので、彼女の願いは叶えられることになった。ところがLeeshaはロットイン(注1)に弱く、せっかくの肉も他のメンバーに取られてしまう。私もくじ運がいいとは言えないのだが、彼女に協力することにした。私が引き当てた陸ガニの肉は3片あった。材料を渡すとLeeshaは大喜びで、「ゆでガニ作ろうっと!」などと言ってはしゃいだ。ガルカは肉を生で食べることが出来る。蟹とて例外ではないのだが、やはり上手に調理して貰ったものを、美味しく頂く方がよいのは言うまでもない。


 私は無事成長し、34レベルとなった。ノーグで解散して飛空挺で帰った。考えてみたら、カザム発ジュノ行きの船に乗るのは初めてのことだ。こちらへ来る便と違うのは乗降口で、ジュノへの降り口になる反対側のタラップが開いている。私たちはそこへ並んで腰かけ、青空を眺めた。こんなふうにゆっくりと過ごせたらいいな。私は潮風を浴びながら、ささやかな日常の喜びに身を任せていた。


注1
 戦利品の分配を決めるための、くじ引きのようなシステム。敵が落とした品物ごとに参加でき、各自ランダムで3ケタの数字が表示される。一番高い数値の者がそれを貰う。


(03.11.27)
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