その207

キルトログ、騎士見習い試験を受ける(1)

カッファル伯爵邸

 Leeshaと話す用事があったので、私はチョコボに乗り、サンドリアへ赴いた。彼女は故郷でひとり獣使いの修行をしていたのだ。

 懐かしい街を二人で歩いた。南サンドリアの西端に建つ、カッファル伯爵邸に出向いて、見事な造形の大邸宅――傷みが少々目立ち始めているが――や、数々の美術品の鮮やかさに、ほおと感嘆の息を漏らした。伯爵邸は現在ヒナリー未亡人が一人で暮らしており、中央に大きな階段がのびている玄関ホールと、広々とした前庭とを、冒険者の結婚式場として提供している。

 厳粛なサンドリア式には気がひける、とLeeshaは言う。彼女は、同じアルタナ教下にあるといっても、のんびりしたお国柄がにじみ出るウィンダス式や、そもそも宗教色からして薄いバストゥーク式の、自由でのびのびとした式典がお気に入りだ。従って、新郎新婦二人が並び、大階段をしずしずと下りながら、左右から友人たちの拍手を受ける日は、残念ながら訪れそうにない。Leeshaは階段に敷かれた赤い絨毯に特別の愛着を覚えている。この綺麗な会場を諦めなくてはならないというのは、私にとっても少し残念である。



試験官バラシエル

 南サンドリアには騎士の試験官がいる。バラシエルという名の白髭のエルヴァーンで、横丁の塔の上に住んでいるのだが、何故このような場所にいるのかは謎だ。彼の出す試練をクリアすれば、ナイトになることが出来るらしい。ナイトの試験は、まず見習いになることから始めなければならない。血統という裏打ちのない冒険者たちは、何をおいても実力で彼を納得させなければならないのだ。だからこそバラシエルは渋面をつくり――彼本来の性格でないとすればだが――常に毅然とした態度を保っているのだろう。

 彼と話したら、反魂樹の根を持って来い、という課題を出された。入手方法は自分で考えろ、と冷たい。どうやら競売で買ってきても良いようだが、それでは後ろめたいので、Leeshaについて貰って、竜王ランペールの墓まで足を運んだ。


 近ごろヴァナ・ディールには、異国の言葉を話す人たちが多く流入している(注1)。彼らはまだこの世界に慣れないので、我々が街やフィールドにいると、しばしば話しかけてくることがある。私の異国語は頼りないが、簡単な意志の疎通なら、片言程度で十分だ。極端な話、単語の羅列でも言いたいことは伝えられる。問題はヒアリングで、ニュアンスを察するのに少し時間がかかる場合がある。この間も「君たちはトキオに住んでいるのか」と意味不明なことを聞かれたので、「No.We live in Vana'deal.」と答えてやった。

 サンドリアを拠点にした異国の冒険者たちは、少なからずラ・テーヌや、ランペールの墓で修行中である。Leeshaがプロテス2とシェル2を使うのを目の当たりにして、そういう魔法はどこで手に入るのか、とあけすけに尋ねるエルヴァーン氏がいた。Leeshaが困惑しているので、港町セルビナに行ったら買えるよ、と教えた。彼は続けて言う。どうやらこのエリアのどこかで、何某という冒険者がモンスターにやられたらしく、自分が助けを求められたのだが、あいにく蘇生魔法を使えるレベルではない。出来るなら代わりに助けて貰えまいか。私たちは快諾して先へ進んだ。

 さて、当の被害者の名前が判らない。あるいはもうホームポイントまで戻ってしまったかもしれない。「誰か、レイズを必要としている者はいるか!?」と、どら声を張り上げて歩き回っていたら、傍らの戦士がぼそぼそと何か口走った。この意味がよく判らなくて、しばらく思案していたが、どうも彼はこういうことを言いたかったらしい。

「俺がレイズを必要とする頃には、もうあんたらは奥の方へ行ってしまってるんだろうな!」

 解読に時間を使ったせいか、被害者は見つからなかった。できれば緊急のときには、余り紛らわしいことを話しかけないで貰いたい。


 竜王の墓石の周囲には、夜中になるとスプークというお化けが出現する。こいつが反魂樹の根を落とすのだが、一匹目であっさりと手に入った。私の試練は終了した。

 あまりあっけなく終わったので、ただ帰るのが勿体無いとばかり、無目的に周囲のモンスターを狩っていたら、王家の墓のカギが転がり出た――。俄然、Leeshaが張り切りだした。宝箱探しが始まった。

 墳墓の地下には洞窟が広がっている。中には固い石の扉や、どうやらカタコンベと思しき方形の広間が、かび臭い臭いを放っている。洞窟のいたるところでコウモリが羽音を響かせる。我が物顔で闊歩している鎌や剣を構えた骸骨たちは、竜王に殉死して浮かばれなかった霊たちなのだろうか。


地下墓地らしい部屋

 宝箱が見つからない。ここは自分にとっては庭のようなもの、とLeeshaは、考えようによっては不気味なことを言って胸を張るのだが、その彼女が太鼓判を押すのだ。おそらくシーフがいて鍵無しで開けてしまったに違いない。宝箱は常にあるというものではなくて、一度誰かに開けられてしまうと、おおよそ一日近くも見つからないということがままある(注2)。実際、さんざうろついてようやく発見したが、その頃には沢山のモンスターを退治てしまっていて、私たちは鍵を既に3本も見つけていたのだ。中から出てきたラピスラズリを懐にしまってから、私たちは余った鍵を遠くへと投げ捨てた。

 箱の中の宝石よりも重宝した宝がある。洞窟の袋小路で、私たちはゴブリン・グルールを発見した。こいつはスライム状の生き物で、グルール(粥)という名前の通り、ゴブリンが調理していた怪しいお粥が、何の冗談か生命を持ってしまったものだ。奴は主人のもとを逃げ出し、墳墓の洞窟に潜んでいる。滅多に見つからない敵だ、とLeeshaが言う。そのモンスターを倒して、希少な耳飾り――ヴァラーピアス――を手に入れた。Leeshaの耳に同じものが光っている。収穫物は私が貰った。入手元が少し気にならないではないが、折角のお揃いのアクセサリーなのだから、野暮なことは言わないようにしよう。

注1
 北米にてFF11のサービスが始まったので、フェニックスワールドにも外国人プレイヤーが流入しています。

注2
 ヴァナ・ディール時間の一日は、現実の約1時間に相当します。


(03.12.11)

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