その212

キルトログ、種族専用装備を集める(2)

 早朝未明、私とLeeshaは南サンドリアで落ち合い、ラテーヌ高原へと急いだ。谷底にオルデール鍾乳洞の入り口が開いている。

 私たちが使える時間は1週間ある(注1)。出来ればその間に、パーツ4つを集めてしまいたい。期間内に宝箱を開けば、中には必ず魔法の型紙が入っている。もし開けたのがLeeshaなら、中身はギルか、普通の品物だ。「魔法の」と形容されるだけあって、型紙は非常にデリケートなものらしい。

 きらきらと光る滝が流れ落ちている広間に来た。騎士見習い試験の課題を果たした場所だ。幸運にも、石筍の隙間に宝箱を発見した。南へ伸びた隘路にかぶと虫が数匹群れている。Leeshaが攻撃を始めた。このゴリアス・ビートルは、鍵を持っているモンスターの一種なのだ(注2)。道はすぐ崖で行き止まりになっており、上の段にも同種の敵がいる。少し距離があったが、シーフのLeeshaは遠隔攻撃を成功させ、かぶと虫をうまく釣り出した。そのかいあって鍵はすぐ手に入った。私は宝箱をあけ、うやうやしく型紙を取り出すと、ホラの岩まで走って行って、チョコボでジュノへと向かった。第一の型紙、回収おわり。


宝箱を発見する

 ゴブリンの仕立て屋がきいきい声で言った。よし、どこのパーツがいい? 私は悩んだ挙句、両足の部位、すなわちズボンを選んだのだが、このエルダーブラケットは短いパンツで、腿が剥き出しになってしまう。試着してみたが、百人隊長の鎧とあわせると、下に何も履いてないように見える。履き心地は悪くないが、いかんせん恥ずかしい。しばらくはもとの装備で通すとしよう。

 1週間内に型紙を集めるつもりなら、鍾乳洞からジュノへの、3度の往復時間を節約し、タイムロスを減らさなければならない。私たちは呪符デジョンを入手した。コンクエストの戦績ポイントを貨幣がわりに支払って得られるアイテムで、ホームポイント設定をしている場所に一瞬で戻ることが出来る。要は魔法のデジョンの効果をお札に込めたものだ。帰るときはこれでよし。行きは? 「テレポタクシー」を雇った。金銭を受け取る代わりに、各地奇岩までテレポで輸送するという、冒険者商売の一種である。太っ腹なLeeshaは代金を肩代わりした。もの凄く珍しいブーツが2足も手に入って、ひとつ22万ギルで売れたのだ、と、チョコボを駆りたてながら、弾んだ声で話した。

 さて二枚目の型紙だ。一枚目のように、あっさり入手とはいかなかった。先刻の広間に宝箱はない。鍾乳洞内のどこか別の場所にあるか、あるいは誰かが開けたあとで、消失しているのかもしれない(注3)

 私たちは鍾乳洞を巡回することにした。だがこれが一筋縄ではいかない。滝の広間を北東から抜け出て、大きく迂回し、まず本来の「口」へと向かう。これが遠い。誰が彫り出したのか、つるつるとした階段が作られているが、段差がたびたび足に引っかかって私をいらいらさせる。一方Leeshaの方は難なく上り下りをする。さすがサンドリア人。私はそう彼女を褒めるべきなのか、それとも自分の足の短さを嘆くべきか。


彫り出された階段

 オルデール鍾乳洞は、人体を模したようだ、と言われている。確かに個々の部位と似た洞窟が存在するが、相違点もまた多い。例えば対になった広間があり、肺を思わせるけれど、実際には「胃」や「肝臓」のずっと下だ。だから「腎臓」の床に開いた穴を飛び降りると、「肺」に達する、という奇妙なことが起こる。余計な管――脇道――もまた多い。奥へ行けば行くほどモンスターは危険度を増す。ゴブリン・スミシーゴブリン・シャーマンなどの、高位の獣人も鍵を持っている。ためしに戦ってみたが、二体を同時に相手にして、戦局はぎりぎりだった。私たちはすんでのところで奴らにとどめをさし、あまり嘗めてはいけないねえと話したものだ。

 苦労のおかげで、鍵と宝箱を見つけた。これで第二の型紙を入手、呪符デジョンでジュノへ戻った。今度は胴体用のエルダーサーコートを作って貰ったが、防御力は百人隊長の鎧の方がずっと上だ。ガルカの種族専用装備は、魔法の能力を補う効果が高い。すべて身につけた場合、後衛職を務めることも充分可能となる(まあ、タルタル並というわけにはいかないが)(注4)


 第二の型紙探索に3日も費やしてしまった。これ以上時間を無駄には出来ない。しかし早急に移動しなければならない場合に限って、「テレポタクシー」の姿がない。何処かへ客を連れて出かけているのか、モグハウスへ引っ込んでしまったか。「よし!」とLeeshaがおもてを上げる。「白魔道士にチェンジして来ましょう!」

 こうして私は、彼女のテレポでホラの岩へと飛んだ。Leeshaがシーフでなくなったので、敵が鍵を落とす確率は低くなったし、戦闘能力も落ちた。一方で、姿を隠すインビジと、足音を消すスニークの魔法が使えるので、迷宮内をこっそりと見て回ることが、前よりも容易になっている。

 それでも私たちは、面倒な奥地へ踏み込むことを避けて、滝の広間に宝箱が移動してくるのを待っていた。前述のゴリアス・ビートルや、キノコのモンスター、シュリーカー(金切り声で叫ぶ者、の意)を狩っていた。こいつはマヨイタケという食材を落とす。せしめた茸は片っ端からLeeshaの手によって塩焼きへと変えられていった。

 私たちが「待ち」の戦法に入ったのは、どうやら私以外にも、型紙を探しに来たガルカがいるようだったからだ。彼が型紙を取った直後、滝の広間に箱が移動する可能性は充分あった。ここは最も出口に近く、人通りの多い場所なので、宝箱の「寿命」も短い。反対に、「肺」の部屋にある宝箱は、人が少ないせいで非常に見つかりにくい。肺の部屋はここから最も遠い位置にあって、近くには凶暴な大蛸が徘徊している。危険度の点でも対照的である。

 私は何度も、奥地に探索へ出かけようと考えたが、この場を離れている間に、宝箱が出現する可能性のことを思うと、決心が鈍った。私が見てきましょう、とLeeshaが言う。インビジとスニークがあるので、彼女の方が隠密行動には向いている。宝箱が出現してしまったときのために、私はここへ残る。鍵はすでに敵から入手していた。

「見つけたら、合図を送りますから」
「気をつけて!」

 やがて、奥地でLeeshaが怒鳴った――「宝箱だ!」その声は、最も遠い「肺」の部屋から響いてきたのだ。


 よりによって、最も遠い部屋だ! 私は舌打ちをしたが、どうにもならない。考えている暇はなかった。時間をかければかけるほど、宝箱が開けられたり、別の場所へ移ってしまう可能性は高くなる。私は走り出した。間に合うといいが。真剣に心配しなくてはならないほど、お互いの距離は離れていた。しかもこちらは一人だ。きっと雪崩のようなトレインを引き起こすだろうから、敵に見つかる危険は犯せない。私は気の遠くなるような距離を駆け抜けて、「腎臓」にたどり着き、「肺」に向かって飛び降りた。目指す宝箱はすぐ目の前だ!

 落ちた穴の脇に、大蛸が忍んでいて、襲い掛かってきた。

 私の斧にどれだけ怒りが込められたか、想像頂けるだろう。無粋な奴! 畜生はこれだから嫌いだ。私は慌てて戦闘を終えて、周囲を見回した。Leeshaが座り込んで回復を図っている。「宝箱は?」と尋ねたら、首を横に振った。直前に別の人に開けられてしまったらしい。私は倒れそうになった。

 傍らにエルヴァーン氏がいて、宝箱を探しているの、と聞いて来た。傍目にも私が意気消沈していることが判ったのだろう。もしこの場所に出てきたら、教えてあげるという。私たちは親切に感謝して、滝の部屋へ戻った。帰り道は簡単で、少し通路を走ったあと、崖を飛び降りればいいだけだ。例のかぶと虫がいた、段差の上と繋がっているのである。段は戻ることが出来ないから一方通行だ。これだけの融通が利かないために、私たちは鍾乳洞の中を大回りに回ってこなくてはならないのである。

 
腎臓の部屋の落とし穴

 キノコ狩りを続けたあと、もう一度奥地を見て廻り、宝箱を発見した。第三の型紙入手。ただしこの時点で残り1日を切っており、ジュノと往復ののち、宝箱と鍵を見つけるのは殆ど絶望的だった。

 私たちは滝の洞窟へ戻った。ふと視線を移せば、広間の片隅に宝箱があるではないか! おそらく私が先刻開いたので、こちらへ移ってきたのだろう。Leeshaがぎりぎりと歯ぎしりをした。もう遅い。私は鍵を持っていない。かぶと虫を今から片付けて、首尾よく鍵を入手したとしても、すでに型紙を持ってしまっているから、2枚目を所持することは出来ない。ああ、あとせめて1日あったなら! こんなふうな結末だったから、余計に悔しさが募ったのだ。

 それでも、1週間でパーツ3つというのは上々の成果である。エルダーサンダルを作ってもらった。残るは腕だけだ。16週間後にシャクラミの地下迷宮である。グスゲン鉱山にまでは持ち越したくないから、絶対に今度でこのクエストを終わりにしたいのだが。


注1
 つまり、8時間(ヴァナ・ディールの一週間は8日)。

注2
「同じエリアの別のかぶと虫にダング・ビートルというのがいる。ゴリアス・ビートルは凶暴で、人間を見るなり襲い掛かってくるが、こちらはおとなしい種類だ。強さもやや劣り、何より宝箱の鍵を落とさない。ちなみにダングとは獣糞の意である」
(Kiltrog談)

注3
 各迷宮内部で宝箱の出現するポイントは、あらかじめ決まっています。宝箱は複数のポイントのうちどこか一箇所に、ランダムに出現します。
 誰かが宝箱を開けた場合、箱は消えうせ、20分間出現しなくなります。ただし中身が型紙だった場合に限り、すぐさま別のポイントに出現します(種族専用装備は時間的条件が厳しいので、競争を緩和するためにそうしているのでしょう)。
 ですから、もし型紙を探していそうな同種族の冒険者が、同じエリアにいたときは、下手に場所を動かないというのも一つの戦略です。先に開けて貰う事で、自分の目の前に宝箱が出現する可能性があるからです。
 なお20分間、誰にも手付かずで開けられなかった宝箱は、同じ迷宮内部の別の場所に(自動的に)移動します。

注4
 ガルカの種族専用装備を全て身につけると、MPが全部で96も上がります。

(03.12.18)
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