その219

キルトログ、クロウラーの巣の奥へ進む

 私とLeeshaは、鍛錬をもくろみ、ジュノでメンバーを募集した。しかしいつもは溢れかえっているはずの、36、37レベル辺りの冒険者の姿がほとんど見当たらない。どうやら副業を育てていた人たちは、大半がレベル70以上の本職に戻って、狩りに出かけているようなのだ(注1)。どうりで閑古鳥が鳴いているわけである。

 Leeshaがサンドリアから戻ってくる前に、エルヴァーンのBash(バッシュ)(赤魔道士36、黒18レベル)と契約した。それで気づいたのは、戦士や侍、ナイトなどの前衛職より、魔道士などの後衛職の方が、多く余っているということだった。特に白魔道士が超過している。ジュノ近辺にいない者もいるものの、このような事態は異常だ。前衛を集めるのに苦労するとは! それもその筈で、レベル70以上は300人以上いるのに、36、37レベルとなると、50人を切ってしまう。もちろんこの中には既にパーティを組んで、鍛錬に出かけている者も含まれるのである。

 モグハウスの前にSteelbearがいて、何か手伝うことはないですか、と言った。ちょうど彼は36レベルの吟遊詩人だったので、後衛として協力して貰うことにした。ヒュームのEdo(エド)(シーフ36、忍者18レベル)は、ただこんばんはと話しかけるなり「行きます!」と鼻息あらく返事をした。我々は戦士、侍、ナイトを探したのだが、エルヴァーンのCrush(クラッシュ)(暗黒騎士36、戦士18レベル)に落ち着いた。Leeshaは、装甲のうすい暗黒騎士をむかえて、回復が間に合うかどうか不安がったが、背に腹は変えられぬ。そのかわりに若干やさしめの狩場――少し物足りなくなってきていたクロウラーの巣へ出かけることにした。もっとも、ここしか行ったことのない私は、他の狩場の知識なんかないのだが。

 前半戦のことはあまり思い出したくない。手ひどい失敗をして叱られ、すっかりしょげてしまった。やはりこのレベルで私がリーダーというのは荷が勝ちすぎているように思う。地図がないし、狩場の知識もないし、横からのだましうちが御法度となって、戦術がまた少し変わっているときている。パーティ全体の信頼に関わるから、リーダーがわからないことを無邪気に聞くのも難しい。それで、せいいっぱい背伸びをして、墓穴を掘ってしまった。まあ私の勉強不足が悪いのだが、それにしても雇われで加わっていたら、もう少し率直にふるまえたかもしれない、と思う。


 だが、少なくとも来たかいはあった。私とLeeshaを含む何人が、レベル37にあがって、入り口近くのクロウラーがいよいよ雑魚になったころ、Edoが、もう少し下層へ行こう、と言ったのだ。遂に奥へ!と感激の声を漏らしたのは、果たしてLeeshaだったかBashだったか。

 我々は奥へ進んだ。これまで巻きひげと、綿あめのような繭が点在しているだけの、狭い通路だけだったものが、突然に視界が開け、ドームのような広い空間が広がった。一段低くなったところに、巨大なざくろの実のようなものが、並んで宙に浮かび、どくんどくんと脈打ちながら明滅している。床に目をやると、街頭めいた青白い光が点々と輝いている。なんらかの植物が放っているのだろう。私はボヤーダ樹の中の小世界を思い出した。


眼下に広がった世界は……
白い繭の上に立つふたり。
Crush(左)とEdo。

 白い繭のようなものが、地面をところどころ覆って、こんもりとなだらかな丘を作っている。そっと足を乗せてみた。さぞかしブーツの裏にべとべと張り付くのだろうと思いきや、意外に固くてしっかりしている。これなら足場として頼りになりそうだ。だがいずれにせよ、このような気持ちの悪い虫の巣窟では、まともな素材であろう筈がない。ざくろの付近からは――まさかざくろだから、というわけではなかろうが――果物が腐ったときに放つ、あの特有のつんとした臭いが漂っている。

 我々はクロウラーと戦った。なるほど、入り口付近にいた奴らとは比べ物にならない手ごわさだ。しかし時間がおしていたので、数匹を倒したところできりにした。さて私は次回から、こんなぞっとしない場所で戦わなくてはならないのだろうか。そう思うと何だか寒気がしてきた。もちろん、また戦闘に慣れない不安もあるのだが……。


注1
 先日のバージョンアップで、育てられるレベルの上限が、70から75に上がったため、プレイヤーがそちらに集中したようです。

(03.12.27)
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