その223

キルトログ、クフタルの洞門へ出かける

 ラバオの中央にあるオアシスのほとりで、長髪のヒューム男子がひとり、腕を組んで思案している。彼の頭を悩ませるのは一体どんな哲学だろうか。

「新しい商売を始めようと思う」

 いかにもヒュームらしい答だ。
 
「レベル40以内の6人で、クフタルの洞門へ行ってくれ。入ってすぐの崖のところに、相棒のホーク・ノーズが待っている筈だ」


 殺風景なアルテパ砂漠にて、男は敢えて観光事業を企てたのだった。クフタルの洞門は、ガルカの伝説に深く関わっている場所で、男は古代文明のノスタルジイを売りに、パッケージ・ツアーを企画しているらしい。余談だが、バストゥークにも同じような観光事業がある。5レベル以下の6人が、グスタベルグを横断し、歩いて臥竜の滝まで行こう、というもので、やはり冒険者がモニターとして雇われていた。彼らのような新事業家にとっては、我々のような何でも屋は使いやすい存在なのだろう。

 さて、ここから前回の続きである。我々はレベル39、40のパーティである。ちょうどクフタルのモニターの条件に合うではないか! 砂漠を横断するわけだから、いかにも危険な仕事のように思えるが、ラバオにも人間が増えてきて、チョコボ厩舎のサービスも始まったので、鳥の背中にまたがってしまえばあっという間に目的地だ。報酬がどれくらいかは知らないが、狩りの終わりのついでに過ごすには、適当な冒険だと言えるだろう。

 ラバオに到着するまでちょっとしたトラブルがあった。何かに気をとられていたのか、あるいは眠っていたのか、Noxがしばらく動かなかったし、砂漠の途中でFernandoがモンスターにやられて、ジュノへと戻ってしまった。私たちはオアシスで欠員を補充した。大声で募集してみたらば、2人の冒険者が返事をくれた。モニターに必要な人数は6人。7人では超過になってしまう。まあ、1人くらい何とかなると思って、パーティをアライアンスに編成し直し、我々はチョコボに乗って、一路クフタルの洞門へ向かった(注1)


 ラバオを出て西に行き、北上する。物理的な距離はさほどない。ただし砂漠には、アンティカをはじめとする好戦的なモンスターが徘徊している。おそろしいマンティコアを目の当たりにしたときには、息が詰まった。チョコボに乗っていてよかった。チョコボなら駆け足の二倍のスピードで移動できるし、厄介なモンスターにも襲われないから、一石二鳥というわけである。

マンティコア
クフタルの洞門内部

 クフタルは広大な洞窟である。足元の土は固い。黄色い砂が吹き込み、湿り気を帯びた上に、踏み固められたからだろう。眼前は崖となっていて、転落防止のためか、ロープを張って簡易的に柵が作られている。その向こうには、洞窟が奥まで続いているわけだが、風は殆ど吹いてこない。壁面の穴から差し込む陽光とは対照的である。光の方向から、もう日暮れに近いことがわかる。帰りはどうしても徒歩になるから、急いで用事を済まさなくてはならない。

 我々が柵前に集まっていると、崖下からおおい、と言う声が響いた。こんなところで何をやってるんだ、と我々を叱り飛ばすのは、つばの広い帽子をかぶった一人のガルカである。

ダッタの野郎から観光モニターを頼まれて来たって!」

 ホーク・ノーズは崖の下から声を張り上げた。

「冗談じゃない、こんなところ観光できるもんか……。何でも大昔、ガルカが逃げ込んで全滅したところらしいじゃないか!」

 アンティカ族との戦いに敗れたガルカたちが、ゼプウェル島から脱出するとき、この洞窟が発見された。一説には、蟻獣人が掘った罠とも言われる――ここを通った一団は、奴らの待ち伏せを受けて、コロロカを上回る多大な犠牲を出したからだ。狡猾なアンティカは、屈強なガルカがしんがりを務め、扱いやすい老人と子供が先頭になることまで見抜いていたという。

 私は崖下を覗き込んで、ぞっとした。亡霊がうようよといる。どうりで空気が澱んでいる筈だ。ホーク・ノーズは、あんたらも逃げた方がいいぞ、と忠告して、ひとり走り去ってしまう。我々もおとなしく洞窟を後にした。


崖下に亡霊が……

「おかしいなあ!」と、企画者ダッタは首をひねっている。
「姉貴がバストゥークで、観光事業をやっているんだ。クフタルって伝説の場所だろ。同じようにいくと思ったんだが……」

 伝説の中身が問題だとは、彼は考えなかったようだ。まあそれがなくとも、クフタルは観光地には向くまい。現実問題として、あの気持ちの悪い場所に、人が好んで寄り付こうとは思えないからだ。

「ほら、これが代金……」

 きっと彼は大損しただろう。事業家も大変なものだ。私とLeeshaはそれぞれ8000ギルを貰って、彼のもとを離れた。

注1
 6人で洞窟内のある場所をクリックすると、個人がそれぞれイベントムービ−を見ることができます。6人パーティのクエストなので、7人目は参加することが出来ませんが、イベント後に一人と交代すれば問題ありません(同じキャラクターは、ムービーを一度しか見れません)。


(04.01.22)
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