その229

キルトログ、デルクフの塔で駐在大使を探す(1)

 デルクフへ出かけるのに、友達の力を借りることにした。失敗が許されない状況だし、単身で乗り込むには、あまりにも危険すぎると判断してのことである。

 Leeshaの協力は当てにして良い。彼女との関係からすると、むしろ期待しない方が失礼だろう。他に、Senkuである。彼は弟を連れていってもよいか、と訊く。Sig(シグ)という名前である。どういういきさつで国籍が分かれたのかわからないが、タルタルには珍しくサンドリア出身で、30レベルの白魔道士である。私やLeeshaとは10レベルの違いがあるのだけれど、どうせ塔の深部に入ってしまえば、我々とても魔法の手助けがなくば危ない。どうせ危ないなら30も40も同じことである。聞けば、Sigもやはり大使を探しに行くんだそうだ(両国そろってとは珍しい。何かの陰謀かもしれぬ)。

 頼もしい仲間は他にもある。Sifは戦士としての参加である。レベル35であり、私とは5レベルも違う。それでも彼は私に合わせてくれたのだ。ナイトのSifとはずっと差が開いているから、彼がそちらのジョブでくると、小競り合いは全て彼に頼りっきりになってしまう。話は楽でいいが私の気がすまない。

 Urizaneも戦士である。43レベルと比較的私に近い。彼は彼の仲間たちと用事があるそうで、それまでには私の用事を終わらせて戻りたいという。

 そしてRodin(ロダン)である。彼女のことはまだ紹介してなかったように思う。獣使いを生業とするミスラで、親密さを表現をするのに、尻尾をすりすりと相手にこすり付ける癖がある。何故か私を先生と呼ぶ。照れるからやめて下さいというのに改めようとしないから、私もそのままにしている。師弟としてではなく、友達として付き合いがある。一緒に冒険に行くのは今回が初めてだ。

 こういういきさつで、私を含めた7人が揃った。パーティを組むのは6人以内が原則だから、我々は5対2に分かれて、アライアンスを編成し、クフィムへと続く洞窟を抜けていった。


 クフィム島に来るのは久しぶりであるが、相変わらずの銀景色である。空は鉛色で、一向に晴れる気配を見せない。白い粉雪が、風に吹かれた羽根のように舞い落ちる中を、我々はデルクフ目指して駆ける。足の下で霜がさくさくと鳴く。氷につまづいて滑りそうになる。つま先が早くも冷たくなった。体温を失って、じんじんと痛み出すのも時間の問題だろう。

 デルクフの塔は、ホラ・メア・デムの三大奇岩を思わせる建造物だが、中に入れるという点が唯一違っている。以前鍛錬のために探索したことがある(その110参照)。その時には、1階と2階を繋ぐ階段に陣取っただけだが、Senkuの話によると、ここは恐ろしく階層が多いのだという。聞けば地上は10階を数え、かつ地下までフロアが広がっているとか。私は思わずうへえと唸ってしまった。

 このような大迷宮を、案内もなしに歩き回るのは愚行である。そこで、道に詳しいというSenkuに、先導をして貰うことになった。


巨人との対決

 塔の中には、巨人やコウモリがうろうろしている。こいつらは好戦的で、獲物を見つけるなり襲いかかる。さすがに命が惜しいのか、獲物の方がずっと実力のある場合は、無視を決め込んでいる。幸い、1階や2階にいるようなのは、私をそっとしておいてくれた。

 ところが、私よりレベルが下の者は大変だった。SigとSifである。Sigは実力不足であることを理解しているので、自ら用心し、インビジやスニークを使って切り抜けていた。戦士のSifはそうはいかない。悪いことに、ナイトである頃の感覚が抜けない。ナイトのSifにとっては、デルクフの巨人たちなぞは、無視して通り過ぎてもよい相手なのだ。それが35レベルになると、相手の方で放っておいてくれない。歩くたび歩くたび巨人に襲われている。連続で戦闘をすると、やはりみんなの消耗が酷い。「思ったよりまずいのでは……」と、Sifが小声で呟いた。一同の顔に、不安の色がよぎる。

 Senkuが私に囁いた。自分は今から引き返し、友人のGorasと交代してこようと思う。Kiltrogとレベルが合うとは言い難いが、彼なら腕が立つし、最悪の事態は避けられるのではないか(注1)
 
 私は了承した。Senkuは離脱し、一人でジュノへと戻っていった。


ワープポイント。
コウモリはRodinのペット

 Rodinの技で感心させられたことがある。モンスターの目星をつけて「君に決めた!」と宣言し、獲物を一時的に支配下においてしまうのである。あやつるという能力で、獣使いの獣使いたる由縁だ。

 「ペット」に出来るモンスターは限られている。獣人など、知性の高い敵はまず無理だという。だとしたら巨人は除外される。塔内では、彼女はいつもコウモリを連れ歩いていた。命令を下して、別の敵と戦わせる。これがペットの本来の使用法だが、コウモリが思わぬ役に立った。

 デルクフに入って、少し深い位置に来ると、我々は前以上にスニークや、インビジを駆使するようになった。足音はともかく、姿を消してしまうと、誰が何処にいるのか判らなくなってしまう(注2)

「コウモリを目印にして」 

 なるほど、Rodinの姿が見えなくても、ペットは消えない。Rodinの傍らを離れず飛んでいる。他のコウモリと混同さえしなければ、実に手ごろな目印になるのである。

 いま何階を歩いているだろうか。ここまでは階段を使ってきたが、数えなくなって久しい。今度の終点は、小さな階段のついた台座であった。紫色の、花弁のような文様が、地面に輝いている。ワープポイントだ。先へ行くには、ここに飛び込まなくてはいけない。

 まだ道程は半分も来ていないと思う。気を引き締めてかからねばならないのは、むしろここからなのである。

注1
 SenkuとGorasは同一プレイヤーが操っています。

注2
 インビジのかかった相手は本当に見えなくなります。パーティメンバーが視界の中に留まっていた場合には、画面右下のメンバー表にカーソルを合わせることで、その人の位置を知ることが出来ます。

(04.02.08)
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