その237 キルトログ、結婚する(5) さて、式も終わりに近づいた。最後に残るのは「心の交感」である。二人で練習を重ねたものだ。鏡のように、きれいに動作を合わせられるとよいのだが。 「それでは互いに向き合い、心で誓約の言葉を交わして下さい」 神官さまが言うのを合図に、二人で背中を向け合う。私たちは二本の木が結ぶ線分上に立っている。私は東の大木を、Leeshaは西の小木を見つめる。私が小声で合図を出すと同時に、二人は互いに離れ、三歩歩いて立ち止まる。続いてくるりと向き直り、再び歩み寄って、しばらく身体を重ねる。
折りしも美しく日が暮れて、水平線がオレンジ色に染まり、私とLeeshaのひとつになった影が、長く長く地面に姿を落とすのだった。私たちが口づけると、客席から拍手がまき起こった。二人がこの場で何を誓い合ったのか、敢えて公表はすまい。夫婦間の秘密とさせて頂くことにしよう。 喝采が静まるのを待ってから、神官さまは「よいでしょう」とせきばらいをする。 「星の神子の名において、ここにKiltrogとLeeshaを正式な夫婦として認めます。星の大樹のように、2人が末永く時を共にせんことを…」 「さあ、歩み始めるのです。祝福に満ちた道への第一歩を!」 このかけ声を合図に、私たちは客席に向き直り、列席者の間に作られた道を、肩を並べて、しずしずと歩むのだった。左右から拍手が注がれる。嵐のような祝福は、いつまでもいつまでも続くかのように思われた。
以上で式は終了であるが、Sifの余興で、ブーケトスを行うことになった。花嫁が花束を投げる儀式で、これを受け取った未婚の女性は、次の結婚運を授かるとされている。Leeshaの手にしたカーネーションを、皆でロットインして取り合う。女性限定だというのに、男性もちらちらと――神官さままで!――混ざっているのがおかしい。福を受け取ったのは、Stridemoonの友人であるミスラ、Minna(ミンナ)嬢であった。祝福を下さった皆さんに幸多からんことを。
式が落ち着いても、まだまだ祝宴は終わらない。もっと気楽に騒げる場所として、私たちは二次会の会場をセッティングした。 場所は石の区にあるジュノ大使館である。前日に口の院、鼻の院などを見てまわり、LeeshaやSenkuと相談ののち決めた。こういうときには、人が訪れる可能性を考え、第一に迷惑のかかりにくい場所を選ばねばならない。最も冒険者が少ないのは石の区であり、最も訪問客が少ないのはジュノ大使館である。入り口の石畳がステージの役割を果たし、外庭は軽く30人を収容できる。私は庭を会場にするつもりだったのだが、説明が遅れて、皆が中に入ってしまっていた。屋内の方がいい、というのでそのままにした。大使と受付嬢には申し訳ないが、全員入ることが出来たし、カウンター前に小舞台も見出すことが出来る。 食べ物や飲み物などの余興はすぐに尽きて、最後には私が壇上に上がり、妻との出会いの経緯と恋の苦悩を――拳をふりあげて――語ることになった。当日来て頂いた人に感謝したい。来て頂けなかった人にも。未熟な夫婦であるけれど、これからもご指導のほどを、宜しくお願い致します。
(04.03.09)
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