その247

キルトログ、怪談話を聞く(1)

 以下の話は、私の体験談ではなく、ある人物から話してもらったものである。私がジュノに上がったり、結婚したりしているうちに、ウィンダスでは何が進行していたのか、知るよすがになるかもしれない。(Kiltrog)


 英雄の家にナナー・ミーゴ現る、という通報を受けて、スターオニオンズの面々は、さっそうと倉庫裏のアジトを飛び出した。

 英霊カラハ・バルハが帰って来ないのを幸い、泥棒ミスラが同家屋を秘密倉庫に使っている――コーラロ・コロ団長以下全員、その情報を掴んではいたが、いつも扉に魔法の鍵がかかっており、入ることが出来なかったのだ。今回が千載一遇のチャンスというわけである。

 血気にはやったスターオニオンズの面々は、団長の号令を合図に、奇声を発しながら突撃した。めいめい自分たちが一番かっこいいと思う叫び声をあげたので、全然統一が取れてなかったのである。

「またあんたたちなのぉ?」

「ジャジャーン!」の声高らかに登場した6人の子供たちを見て、ナナー・ミーゴはかっくりと肩を落とした。

「とうとう追いつめたぞ!」

 団長は強気だ。

「ナナー・ミーゴ! もう悪いことはしませんって反省するまで、ここから出してやらないぞ!!」

「子供って直線的で暇を持て余しているからキライよぉ」

 泥棒ミスラが毒づくと、団長はまなじりを上げて息巻いた。

「僕たちはすごく忙しいんだぞ! 大人が知らないふりをして目を瞑っている、ウィンダスの悪い部分を直すんだから!」

 彼は小さな胸を高々と張るのだった。

英雄の家

「何よ、それじゃああたしが悪者みたいじゃないの……」

 ナナー・ミーゴはしゃあしゃあと言って、

「あたしなんかより、口の院院長を何とかしなさいよ。口の院院長はね、星の神子が禁止している魔法を復活させようとしているのよ。でも相手は院長だから、大人のタルタルたちはほったらかし……あっちの方がよっぽど悪者よ。これをスターオニオンズ団が放っておいていいのかしらぁ?」

 仇敵と定めていた相手から、矛先を反らされたかたちになった。団長は困ってしまった。もともと口論には弱い。しかも海千山千の泥棒ミスラである。これは相手が悪かった。

「もうちょっと大人の勉強をしてから出直しなさいな……子供の世界ほど単純じゃないんだからね」

 じゃあね、と手を振って、ナナー・ミーゴは扉へ歩み寄った。団長は口負けしたままだし、彼女の行動は、あまりにも大胆で自然だった。全員がそれを呆けて見ていた。彼女の尻尾にでも飛びつこうとするメンバーがいなかったのも、当然と言える空気だった。

 泥棒ミスラが扉を勢いよく閉める。続いてかちゃ、という小さな音。

「……いま、カチャッっていった……?」

 誰かが呟いた。呪縛が破れた。ミスラの子供が二人、入り口へ駆け寄った。

「やられたよ!」、がりがりと扉をひっかく。
「閉じ込められたニャー!」

 外で甲高い笑い声が響いた。

「大人の世界を知らないからこうなるのよ!」

「くそう……出せっ」

 団長ほか2名が駆け寄って扉を叩くが、びくともしない。

「ハハハ! ここは魔法の家だから、騒いでも誰にも聞こえないわよ。噂によると、お化けが出るそうじゃない?」

 オバケ、と聞いて皆の顔色がさっと青ざめる。

「坊やたち、お化けに食べられちゃいなさいな……バイバイ」

 ナナー・ミーゴは行ってしまった。呆然と佇む6人が残った。スターオニオンズははたして、英雄の家から無事脱出することが出来るのだろうか。


(04.05.02)
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