その252

キルトログ、ベドーへ潜入する(1)

 クゥダフ本拠地のような危険な場所へ一人で行く手はない。私は友達に協力して貰うことにした。思ったより人間が集まり、9人所帯となる――これには私と、私ともども大公邸の指示を受けたLeeshaも含まれている。

 我々はチョコボに跨ってベドーを目指した。天晶堂のタルタルの言葉が思い出された。ベドー奥地へ潜入するには、アルドから貰った銀の鈴の他に、あと2品が必要であるという。彼はそれを既に持っていて、クゥダフの呪符およびト占甲と交換してくれるらしい。これらの呪術用具は現地で入手できよう。ということは、少なくとも私は一度、ジュノへ戻ってきて、品物を揃えてから引き返さねばならない。何と面倒な話!

 全員でベドーへ踏み込む。相変わらずの曇天である。晴れるどころか頻繁に大雨が降り、時に雷鳴すら轟く。度重なる雨で足元の赤土はすっかりぬかるみ、歩くたびべちゃべちゃと泥滴が撒う。幾重にも張り巡らされたバリケードが行く手を遮るが、金属で出来たそれはすっかり錆び、赤い涙を流している。クゥダフがパルブロにこだわる理由はこれだ。強力なベドーの湿気に対するため、錆びない金属ミスリルが大量に必要なのである。

 なるほどこのように、すっかり腐食したバリケードでは、敵の行軍を遅らせる役にも立つまい。余計なお世話だが、それならせめて頼りになる斥候を置くべきだ。我々のレベルは少なくとも40を越えていて、入り口辺りのクゥダフは練習相手にもならない。もっともおかげですんなり奥に行けるのではあるが。

 パーティの内訳は以下の通りである。

 戦士:私、Illvest、Urizane
 ナイト:Ragnarok
 侍:Raiden

 つづいて、

 白魔道士:Leesha、Landsend
 黒魔道士:Senku
 吟遊詩人:Steelbear

 狙ったわけではないが、前衛と後衛がきっちり分かれているのだった。


青白い光を放つ装置

 ぬかるみの中をひた走って洞窟に飛び込んだ。ようやく屋根の下に入ったわけだが、足元の赤土は湿っているし、洞窟内の湿気も凄くて、快適な気分にはほど遠い。亀の巣の嫌なアンモニア臭もする。買ったばかりの新しい鎧――ブリガンダイン――にも泥はねがついてしまった(注1)

 獣臭をこらえて奥へ進むと、通路脇に、玉葱型をした石が立っていた。青白く点滅している。夜光虫でも群がっているのかと思いきや、内側から光っているのがわかった。何らかの魔法装置なのである。

 私がそっと手を触れると、脳がくらくらとして、舌先にしびれが走った(注2)。声がどもってしまう。これでは呪文を唱えることはできまい。しかしLeeshaを初めとする魔道士諸君はおろか、前衛の仲間たちも嬉々として装置に触っていくのだった。きっと何か理由があるのだろうと思って、私もそのまま彼らの後を追った。

赤い光を放つ装置

 洞窟の外へ出たら、すっかり夜中になっていた。小雨の中を全員で走り急いだ。広場を抜けていくさい、突然に気分が悪くなった。目が回り、ものが二重に見えてくる。ぞっと鳥肌がたった。ここには強力な負の思念が存在している――底知れぬ憎悪が私に向けられているのだ!

 私は叫びだしそうになった。だが喉から出るのは、くぐもった音だけだった。それで若干落ち着きを取り戻した。傍らに目をやれば、先刻見たのと同じような装置が、今度は赤い光を放っていた。これは近づく者を呪うという恐ろしい効果を持つのだ。だが最初の装置に触れて、沈黙していれば逃れられるらしい。仲間たちが嬉々としていた理由がわかった。全員それを知っていたものと見える。

 とはいえ、沈黙が続いていては魔法が使えない。魔道士たちはやまびこ薬を使って回復に努めた。魔法を使わない私は弊害が薄いが、同じような仕掛けがまだこの先にあるという。

 ベドーおそるべし。


クゥダフと対決する

 夜が明けると、これまでの曇天が嘘だったかのようにからっと晴れ上がった。苔や赤土がぬるぬる滑って、足元は相変わらず不快なのだが、太陽が出るとやはり気分が違う。下草の生えた平地が続いており、クゥダフが互いの間を空けずうろついている。しばらく弱い敵が続いたが、ここからは奴らの実力も高く、我々を見るなり襲いかかってくるという。

 リンク上等!

 我々は雄叫びを挙げて敵に切りかかった。世に先手必勝という。各個撃破は戦術の基本であるとも。すなわちこの二つを能くすれば敵を打ち崩すに難なし。スニークで足音を、インビジで姿を消すのもよい。しかし一見無策に見える強行突破が、最も安全というときもあるのだ。特に、大人数では難なく倒せる敵が密集している場合には。

 我々はクゥダフ族の英雄を討ち取った。ほら吹きゴ・ブ首集めのデ・ビュである。ゴ・ブは弁舌に長けるだけのずるい奴だが、デ・ビュの方は大した実力者で、殺した人間の首を収集していると噂される。今度は自分の首を狩られたというわけだ。

 奴ら二人が呪符とト占甲を持っていた。条件は揃った。Senkuにデジョン2をかけてもらう。私はあっという間にジュノに戻る。これから奥に進むに必要な品を手に入れ、再びベドーへ向けて引き返すつもりである。


注1
「ブリガンダインはオレンジの市松模様がお洒落だと評判であるが、Leeshaには「市松の面積が大きい」と笑われてしまった。タルタルが着ると柄が小さく可愛らしい。もっとも彼らは何を着たって似合ってしまうのだが」
(Kiltrog談)

注2
沈黙という状態異常です。これに陥ると、魔法を使うことが出来なくなります。やまびこ薬を使うか、白魔法サイレナをかけてもらうことで回復します。


(04.05.06)
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