その257

キルトログ、オズトロヤ城へ忍び込む(1)

 ミッションの首尾はどうか、と声をかけてきたLibrossと、ジュノを歩いていて、ばったりと出会ったSifが、パーティに加わってくれることになった。これで所帯が11人となった。

 魔晶石を奪取する上で、オズトロヤ城は最も危険だと言われる。インビジとスニークの隠密行動は有効なのだが、通路が狭く、敵が密集しているので、一度見つかってしまったら大リンクを巻き起こす可能性がある。しかも秘密の扉の前――必ず立ち止まらなければならない――に、手ごわいヤグードが群れているという。危険度は推して知るべし。

 メリファト山地には、今日も乾いた砂風が吹き荒れている。我々は異形の門を見上げ、めいめいに気合いを入れてアーチを潜る。禍々しい邪教の巣窟に、我々は11人で挑むのだ。


オズトロヤ正門

 城内には様々なからくりが施されているらしい。落とし穴の扉はその一つである。慎重にレバーを回して扉を開き、ぽかりと口を開いた罠に落ちないようにしながら、奥へ進む。レバー2本の正誤は日によって変えられており、どちらかが常に正しいというわけではない。従って、結局回してみなければ真偽はわからないのだ。何というひねくれた城であろう。

大広場

 途中、大きな広場の張り出し通路を通った。池が湛えられ、中央の小島に、ワイングラス型の塔が立っている。ギデアスで見かけた高僧の住居を思わせるが、これほど大規模なものではなかった。中には、特別なヤグードが住んでいるのだろうか。あるいは集団用の家屋なのか。

 曲がりくねった道を辿る。ヤグードのいない場所はどこにもない。奴らのペットなのだろうか、時に蝙蝠を見かけることがあるが、こちらもずいぶん好戦的な性格のようだ。幸い我々のレベルには遠く及ばなくて、襲ってくることはないが、ぱたぱたと羽音を響かせている隣を駆け抜けるのは――魔法がかかっていても――気分のよくない体験だ。万が一騒ぎ出して、ヤグードに気づかれたら、などと考えると、気が気ではない。
 
 オズトロヤの道は分岐が多い。どちらを辿っても狭く、曲がりくねり、鳥人に満ちている。ベドーは敵と打ち合う爽快感があったが、息を殺さなければならない隠密行動は、ストレスがたまる。悪いことにこの城は、奥へ行くほど地下に潜っていく構造になっており、閉塞感がどんどん強くなっていく。だから、ようやく大扉に到達したときには、本当に救われた気分だった。安全のために、周囲のヤグードを片付けておこう、ということになって、今までの鬱憤を晴らすかのように、私は存分に斧を振るったのだった。

魔晶石に通じる扉

 1階にある仕掛け扉は、レバーを引くものだった。罠が仕掛けられていることは既に説明した。こちらは手前に灯明台があるきりで、表立って仕掛けがあるようには見えない。とりあえず火を点せばいいのだろうか?

 マックビクスが特製だと説明した、ヤグードの松明を使ってみた。灯明台に火がうつると、大扉がゆっくり開き始めた。なるほど「松明が必要」とはこういう意味だったか。マックビクスやフィックは、この方法で奥へ進み、要人たちに会っていたのだろう。

 フィック。


 あのゴブリンのことが、無性に気にかかった。彼は確か、オズトロヤを訪ねると言っていなかったか。用件も無謀なものだった。人間と仲良くするために、悪さをやめてくれ、と嘆願しに行ったのだ。ヤグードがそんな条件を飲むわけがない。また、獣人の巣窟を歩いていれば、冒険者も彼を放っておくまい。一方的につまみ出されてジュノに戻ったのなら良いが。ギーベ少年ではないが、私も何だか彼のことを好きになりかけていたのだ。

 何だか嫌な予感がした。

 通路が右へ折れている。その暗がりに、小さな人影が倒れていた。人間ではない、とすぐに判った。タルタルにしては大きいし、ガルカやエルヴァーンにしては小柄に過ぎた。

 頭でっかちのマスク。背嚢。

 予感が的中した。私は驚きの声をあげて、倒れているゴブリンのもとへ駆け寄った。

(04.05.09)
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