その269

キルトログ、フェ・インに踏み込む(2)

 話が少し前後するが、Stridemoonの姉、Fakefur(フェイクファー)という人に会った。

 我々がフェ・インの入り口で、記念にポーズなどを取っているうち、雪原から遺跡の中に駆け込んだ数人がいて、その中に彼女が混ざっていたのだった。Fakefurはシーフで、サポートに忍者をつけており、なるほど二刀流の使い手らしく、腰の両脇に使い勝手のよさそうな刃物をぶら下げていた。Apricotとも知り合いであるようである。

 お姉ちゃんをパーティに加えて下さい、とStridemoonが言った。強い人が加わるのは大歓迎である。

 我々は遺跡に踏み込んだ――そこで私は、ザイドとライオンの話を立ち聞きしたのだ。


 闇の色が紫というのは奇妙な感じがする。やはり私は、闇というのは底のないものだと思っているので、あらゆる光を貪欲に吸い取ってしまう黒のイメージが強い。そういうわけで、フェ・インの中を抜けていくとき、恐ろしい気持ちにはならなかった――紫色を反射するサーメットの壁を幻想的に感じてはいたが。
 
 フェ・インの壁にはほころびが目立つ。壁面の崩れたロ・メーヴほどではなく、せいぜいひび割れが走っている程度だ。もちろん物理的要因も考えられるが、常識的にみて、老朽化が原因だと考えてよかろう。

 サーメット建築らしく、やたらとだだっ広い空間が続く。極地に近いせいで空気が冷たく、よけい空虚な感じがする。生命の痕跡というとコウモリくらいしかない。ロ・メーヴ行のときに見たのと同種のモンスターがうろついている。すなわち、スマートだが巨大なゴーレムであり、肩をいからせた自動人形であり、ふよふよと宙に浮く大壺である。この壺は一般にマジックポットと呼ばれていて、やはり古代人の考えた機械であるらしく、魔法に反応して襲ってくるようだ。我々も一匹(?)と戦ってみた。どうやらスニークの詠唱をかぎ付けてやって来たものらしい。


マジック・ポット

 巨大な壺が、蓋をくるくると回しながら襲ってくる光景は、悪夢的だが少々滑稽である。この機械を考えた奴は、相当のユーモアのセンスの持ち主とみえる! 的は大きいがすばしこいので、攻撃するには熟練を要するが、斧や剣が当たるととりわけ大きな音が響く。鐘を叩いているような気分だ。ごわん、とかぐわん、というような一撃は、空虚なようでいて、確実にダメージは与えているらしい。やがて壺はきりきりと舞うと、どすんと地面に落ちた。小柄なApricotがあやうく潰されるところだった。壺は完全に壊れたらしい。蓋をずらしたっきり、ぴくりとも動かなくなった。

 冗談のような壺との戦いを終えて、我々はなおも奥へ進んだ。

 やがて霧の向こうに、とがった岩の影が浮かび上がった。数本の岩が床から飛び出しており、円を描いているらしい。魔法陣のように私には思えたが、実際に近づいてみると違った。どうやらもう少し機能を持った設備のようである。

 いろいろ考えて、これは噴水ではないかと結論づけた。単に形状から推察しただけなので、たいした根拠はない。水は枯れてしまっているし、何故ここに噴水がなければならなかったのか、私には説明することが出来ない。だがそもそも古代人の謎について、明快な答えを出せる者が存在するだろうか。世界に残るサーメットの建築物は何か。なぜその中が魔法の罠で満たされているのか。彼らはなぜ滅んだのか。我々は古代人について――ルクススの言葉を使うなら、ジラートについて――結局何も知っていないのが現状なのだ。

噴水の跡?

 気づけばかなり奥まで来ていた。Ragnarokの話によれば、ク・ビアの闘技場というところがあって、そこに封印が待っているはずだという。我々はなおも先を急いだ。

 モンスターは魔法で切り抜けるようにはしていたものの、先刻のマジック・ポット戦のように、戦闘が起こらなかったわけではない。たとえのっぴきならない状況に陥らずとも、片っ端から倒していった方が安全という状況もある――我々はためらわずそうした。特に闘技場に達する手前、骸骨や死霊がうろついている廊下である。

 RagnarokやGorasもひとかどの戦士であったが、乱戦の働きに関しては、Fakefurが上を行った。ひゅんひゅんと得物を振り回して敵を切りさばいていく。私が斧を打ち込む間もないほどである。何も2人を貶めようというのではない。彼らは私のレベルに合わせて、あまり強すぎたり、弱すぎたりしないジョブを選んでくれたのだから。だが私の印象に残ったのは、Fakefurの達者な剣術と、強力な二刀流の効果だった。東洋の武術恐るべし、である。(注1)

 我々はモンスターの巣を突破し、巨大な扉の前に立った。この奥が最終目的地である。さて、ウィンダスの封印は無事であることだろうか。


封印へ続く扉

 何かあってはいけないので身支度を整えた。武器と防具の点検をし、身体の筋肉をほぐした。妻の作ってくれたペルシコス・オレの袋を下げておく。これは甘く濃い飲み物だが、体力を迅速に回復させてくれる効果があるのだ。

 扉は上に向かってするすると開いた。我々が踏み込むと、背後でどしんといって閉まった。短い通路が延びており、小さな円形の部屋で行き止まりになった。床に魔法陣が描かれており、熱を持って、オレンジ色に輝いている。バーニング・サークルだ。こんな北の地にも存在していたとは。

 バーニング・サークルには6人しか入られない。そして中では――私の経験上――必ず戦闘になる。相手が何であれ、戦いは避けられないようだ。何しろ目指すのは闘技場なのである。

 メンバーをピックアップして下さい、と誰かが言った。私は逡巡し、一緒に中へ入る5人を選んだ。Leeshaに外れてもらうわけにはいかない。彼女は妻であるし、白魔道士である。黒魔道士のApricotも当確だ。そして、彼女らの回復の助けになるであろう吟遊詩人のSifも。ナイトのGorasは盾になる。そして、私と一緒に斧を振るうRagnarok。

 ミスラの姉妹が残った。私にしても苦渋の決断だった。帯同できるものならして欲しいのだが、私にはこの6人がベストメンバーのように思えた。

 魔法陣の上に乗って、念を贈ると、身体がするすると吸い込まれた。FakefurとStridemoonが手を振っているのが見える。激励の声が聞こえる。嗚呼私は、北の遺跡の底で、いったいどんな怪物と対決することになるのだろう。


注1
 Fakefurは攻撃間隔の短い短剣を使っていたので、そのレベル以上に、印象的な素早いアタックを可能にしていたのである。(Kiltrog談)


(04.06.29)
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