その273 キルトログ、老婆の話を聞く 鉱山区のモグハウスから私は外へ出た。チョコボ乗り場の前に、腰の曲がったヒュームの老婆が立っている。目が合ったと思ったら、向こうの方から話しかけてきた。 「なかなかの腕前でございますな」 はあ、と答える。 「そのくらいは、この婆にもわかりますんじゃよ」 私は腕組みをして彼女の出方を待った。こういうときは大体ふたつの答に限られる。こちらを冒険者とみて何か頼みごとがしたいとき。あるいは単に話し相手が欲しいときだ。中年、壮年以下の人間だと、まずクエストの依頼と考えて間違いないが、老人は往々にして人恋しく、お喋りを好む。単刀直入に用件を言う人は少ないから、老婆の話も最後まで聞いて、成り行きを確かめねばならぬ。 「私の息子も冒険者でしての。戦士をやっておったのでございますじゃ。もう亡くなってしまいましたが」 老婆はそう言って、私の鎧の胸板を撫で回した。 「孫も冒険者だったですが、何を思ったか、門番になってしまいましてな」 うんうん、と頷く。 「親のこころ子知らず、とはこのことですじゃ。私の息子も、子供に門番をやらせるために、剣技を教えたわけではありませんでしょうに。ねえ」 門番も立派な仕事ですよ、と言おうとしたが、やめておいた。彼女の言う「門番」とは何だろう。金持ちに雇われた私兵だろうか。それともバストゥークのガードのことなのだろうか。 仮に後者なら銃士である。等級はともかく、まがりなりにも「銃士」なのだから、人に尊敬されこそすれ、卑下されるような職業ではないと思うのだが。 「孫は息子の形見の剣も持っていかずじまいでした。まあ、ちいっと古くなり、修理をせんと使えないものじゃが……」 どきりとした。鍛冶屋の修行はしていない。 「柄の部分に特殊な部品を使っておりましてなあ。片手剣のグリップ材なんですが。 息子が、らおりんさんというえらいガルカさんと一緒に、オークの本拠地に行ったときにですな、テントから見つけてきたらしいんです。 あなた様も冒険者ですから、そこへ行くこともおありになると思いますじゃ。もしお立ち寄りの際には、取って来て頂ければ、この婆も感謝感激ですじゃ」 そういうことなら何とかなりそうだ、と彼女に言った。 老婆は行ってしまった。 ダボイに潜入するなら、仲間を何人か集めなくてはならない。わざわざ集合をかけて、大人数にするにも及ばない。時間を持て余していそうな友人を見つけたら、手伝って貰うことにしよう。 (04.07.19)
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