その283 キルトログ、呪いの核心に迫る 「後輩が呪いにかかっちまってね」 タルタル氏――親衛隊のネラフ・ラジルフ――は熱っぽく語った。 「昔の話だよ。親衛隊の仕事なんかしていると、いろいろおかしな体験をするものだが、あれは極めつけだったな。エルディーム古墳の調査行で、当時新米だったやつが、突然凶暴になったんだ」 ネラフ・ラジルフは容態を説明した。新米の親衛隊は暴れて、けもの臭い息を吐きながら、生肉を要求したのだそうだ。不思議にもオーディアと同じような症状である。 それで、と私は床机に身を乗り出した。 「こりゃ悪霊がとり憑いたってんで、なあアドリエ……」 隣にいた血色の悪いエルヴァーン氏が、無言で頷いた。 タルタル氏が続ける。 「おはらいをしなきゃならない。で、古墳の火を取りにいったんだよ。エルディームに入ったことがあるかい。石造りの台座があって、火が燃えてるだろ。洞窟のじゃないよ。そうそう、方形の台座。あれ、悪霊が嫌うらしいんだな。その聖火をランタンに移して持ってかえって、無事憑きものを落とすことが出来たというわけ」
古墳の炎に浄化の効能があるとは知らなかった。現地は死霊の巣窟であるというのに。 「逆に、その火を好く悪霊もいると聞いているぞ」 アドリエがうっそりと言った。タルタル氏がはははと笑った。 「あの時は、そんなことは知らなかったからな。運がよかったってわけだ。 どうだろう。そのご婦人に対して、有効かどうかはわからんけども、あんたもやってみたらどうだ。よかったらランタンを貸してやるが」 ジュノ親衛隊のランタンは、少し古びてはいるが、さすがに軍隊のもので、しっかりした作りをしていた。彼らは手入れも丁寧に行っていたらしい。 「古墳の炎だが、一箇所からうつすだけでは弱い。石造りの部屋の台座は4つあって、炎を少しづつ足していかなければならないんだ。どうも順番があるらしくて、それを間違えたら、火は消えてしまう。魔法の火だからな。当時はえらく苦労したもんだが……順番は、すまん、覚えてない。いろいろ試してみるといいだろう」 ジュノにはLeeshaとStelbearがいる。彼らの協力を期待できるだろう。 「火を好く方の悪霊だったら、逆効果だがな」 アドリエがいやなことを言う。 「どういう種類の悪霊がとり憑いているかわかれば、確実な対処法も取れるんだろうが。まあ、一か八かだな」 私は礼を言って退出した。さっそく仲間に連絡を取ってみる。好都合なことに、Steelbearは、火のつけ方の順番を知っているという。私は身支度をして、少年とその義兄を救うために、意気揚々とエルディーム古墳へ出発する。 (04.08.11)
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