その305 キルトログ、ハロウィンで化け物に仮装する ハロウィンの季節が今年もやって来た。もう1年も経ったかという気分である。前回私はウィンダスにいて、かぼちゃの面を被り、コウモリの杖を背負って、鼻の院の庭でみんなと語り明かしたものだった(その192参照)。さて今年は、どのような趣向が用意されているのだろうか。 私はバストゥークに滞在していた。忍者15レベルになっており、さあバルクルム砂丘へ行こうと、装備を整えてモグハウスを出た。そこでLeeshaから連絡があった。彼女はサンドリアにおり、ハロウィンのために、お菓子を持ってこちらまで駆けつけるという。だから修行は次の機会にして、鉱山区へ行き、競売所でウィンドウショッヒングをして時間を潰すことにした。 刀の出品を確かめていたとき、後ろで「うらめしやあ」という声がした。振り返ったら幽霊が浮かんでいた。充血して垂れさがったまぶたに、ぼろぼろの背びれ。地下迷宮だと畏敬の念を起こさせるその容姿は、鉱山区の石畳の上で見ると、何だか非常に間が抜けて見えた。 幽霊はごしごしと顔をすりつけてきた。「ひひひー」といやな笑い方をする。友人のRodinは自慢の尻尾をすりすりと擦り寄せる癖があるが、こいつの歓迎はずいぶん熱っぽく、それゆえに迷惑である。私が鬱陶しがっていると、幽霊はどろんと消えた。後にLeeshaが立っていた。幽霊の正体は嫁だったのだ。彼女はどういう手段でか知らないが、モンスターに化けて私をからかったらしい。もしかしたら、ボギーの後ろのひらひらしたひれは、ポニーテールの名残りであったのかもしれぬ。
Leeshaに今年のハロウィンの趣向を説明してもらった。街中にお化けに扮した係員が散っている。彼らにお菓子を渡すと、一定時間の間、モンスターに変身させてくれるのだ。変わるといっても外見だけである。また、自分がなりたい種族を選べるわけではない。一人の係員は何を貰っても同じモンスターの扮装しか与えてくれないという。例えば、Leeshaが幽霊にしてもらった係員にお菓子を渡せば、私も幽霊になれる。ただし、もしオークに扮したいなら、オークに変えてくれる係員を探さなければならない。 バブルチョコを1ダースと、お菓子と言っていいかどうかわからないが、甘い甘いサンドリアグレープを1ダース貰った。さっそく係員を探しに行く。彼らは日常業務――特産品の取り引きであるとか、街の案内をしつつ、化け物の扮装をしているのだ。出てくるときは気付かなかったが、モグハウスの前で一人見つけた。さっそくLeeshaが話をしている。と思ったら、急にすらりとした格好になって、私に向かってくるりと振り向いてみせた。 「ヤアKiltrog、Librossダヨ!!」 エルヴァーンらしき人物が手を振る。私はあごをさすりながら、彼をまじまじと見つめた。 「ずいぶん色が黒くなったね」 「あるてぱ砂漠デ日焼ケシタノサー」 「なるほどね」 友達もいろいろ苦労しているようだ。私は別の係員のところへ行った。 たとえ一時とはいえ、化け物になるというのはどういう気分だろう。私はどきどきしながらお菓子をひとつ渡した。途端に身体が軽くなって、扮装は外見だけでなく、気分をも変えるものだということを確信した。 そんな私を見てLeeshaが言う。「ダイエットに成功しましたね?」 「すごいよ」と私は答えた。 「身体が軽い。何だか……鳥になったみたい!!」 ケーン、ケーンと鳴きながら私は町を歩き回った。しばらくして扮装が解けたので、次の係員を探した。チョコボ乗り場の前に骸骨が立っている。彼に話しかけると、ロンフォールの特産品が入荷できず、商売にならないんだ、とぼやかれた。この世で生きていて、骸骨に愚痴を聞かされるとは思わなかった。私感であるが、彼の商売がうまく行かないのは、サンドリアの勢力以外にも大きな要因があるような気がする。 係員はお化けの格好をしているわけだが、彼らと同じ姿にしてくれるわけではないようだ。例えば上記の骸骨には犬にされた。それも肉体が腐りかかったやつである。 何に化けるかわからないから楽しい。私たちはヤグードと話し、二人して幽霊となり、ふよふよと低空飛行しながら、次の係員を探すのだった。そういうことの繰り返しだった。 剣を抱えたシャドウに、骸骨にしてもらった。わき腹がすうすうする。 不細工なボギーに、亀にしてもらった。片手の剣で刺しあいっこをする。 猫背のクゥダフに、また犬にしてもらった。尻尾で互いをこちょこちょくすぐる。 ふんぞり返ったガルカに――彼は普通の衛兵だった。私たちは口笛を吹きながら急いで通り過ぎた。
一口に化け物の扮装というが、種類は限られているようだ。例えばコウモリや芋虫の姿は一度も見なかった。こういう動物の衣装は、企画した冒険局も用意していなかったのだろう。 だが私は、せっかくヤグードやクゥダフになったのだから、オークにも挑戦してみたいと思った。願いは鉱山区の入り口付近で叶った。凶暴な拳闘士となった成果を、私は妻に見せに行った。彼女は幽霊に化けて私を脅かしたのだ。だから同じことをやり返しても、彼女に責められるいわれはないだろう。 私は大口を開け、大声でウガアと吼えながら、Leeshaに迫った。ところが彼女はすましたもので、尻尾を確認し、顔をまじまじと見つめながらこう言った。 「あれ、いつもと変わりませんね?」 ウガアアアアアアアアア!! (04.12.13)
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