その308

キルトログ、子供にプレゼントを配る

 さて話題を、星忙祭の主役であるスマイルブリンガーにうつそう。彼らが帰ってきた噂についてはすでに述べた。くり返して言うが、スマイルブリンガーは1人ではない。したがってSB――彼らの略称――とは、正確には民族、種族などの、集団を示唆する名称であるといえる。(注1)

 サンドリアに訪れたSBのところへ、Leeshaが連れて行ってくれた。彼はランペール門前の広場にいた。白いひげを生やした壮年のエルヴァーンで、SBのトレードマークである赤い帽子をかぶり、白魔道士の衣装に身を包んでいた。同じ帽子の冒険者たちが、彼を慕ってか、周りをうろうろしているので、本物がどれだかすぐとはわかりづらかった。そういえばLeeshaもイベントに合わせて、赤い衣装で全身をそろえているのである。


スマイルブリンガー
(左から2人目)
Leesha

「子供に夢を与えとるかね?未来のヴァナ・ディールを担う子たちじゃ。大切にせんといかんぞ」

 SB氏はにっこりと笑った。

「与えられる夢はあるか?ないのなら――これをやろう。おぬしには無意味かもしれんが、子供たちにとっては夢のあるものじゃよ」

 私は子供たちへのプレゼントをもらった。赤いリボンを結んだ四角い箱である。きっとおもちゃでも入っているのだろう。


 私に子はおらぬから、サンドリアにいる子供にあげることになる。だがプレゼントはひとつしかない。いったい誰に渡したらいいものかと、歩き回って候補者を探すことになった。

 子供というのは無邪気なもので、スマイルブリンガー来訪の知らせにすっかり舞い上がっており、彼に手紙を書いたから渡してほしいと、頼みごとをしてくる子も何人かいた。そのような状況では、一人だけにプレゼントするのは実に心苦しい。どうしたって不公平のような気がする。結局私はリボンの箱を背負い袋に隠したまま、3通の手紙を持って、SB氏のところへ帰ってきた。

 以下それぞれ

 SBへの喜びの手紙
 SBへの感謝の手紙
 SBへの御礼の手紙


 である。SBへの催促の手紙がないのは幸いだった。(注2)


 さて手紙を渡すと、SB氏は感極まって泣き出してしまった。それらを書いた子の名を尋ねたがる。私が正確に――おそらく――伝えると、彼は「お礼をせねばなるまい!」と腕をまくった。そして「きみ手伝ってくれんか」と言う。そんなような予感がしていた。冒険者の仕事はいつだって雑用なのである。

 SB氏は、彼がかぶっているのと同じ、赤い帽子――ドリームキャップをよこした。これはスマイルブリンガーのあかしである。別の言い方をすれば、私はプレゼント・マンになったということだ。しかしこれを身につける以上は、子供の前を素通りするのは難しい。近所の友達が贈り物をもらって、自分には何もないというのでは、どんな純真な少年少女もすねてしまう。これでいよいよ、私は全員にプレゼントを配る「義務」が生じてしまったというわけだ。何だかSB氏にうまくはめられたような気がする。

 いずれにせよ、プレゼントがひとつだけではどうしようもない。サンドリアに限ってもおおぜい子供がいる。そこで、もっとくれと催促してみたところ、SB氏は露骨に嫌そうな顔をして「あれは1日1個だけじゃ。そのくらい自分で買いなさい、大人なんだから」と言った。かついでいた袋を下ろし、ボードに書かれた値段票をよこした。プレゼントは3種類あって、それぞれ100ギル、500ギル、1000ギルの値がついている。タダで配ることになるのだろうか、と心配になる。結局タダだろうなあ、無料奉仕だろうなあと、財布を覗いて思案をする。未来を担う子供たちよ! 君たちのプレゼントの裏側で、こんなふうに大人たちが、夢のかけらもないやり取りをしていることを知ってほしい――もう少し大きくなってからで構わないから。


 結局私は、ひとつ100ギルのプレゼントを大量に買い込んだ。けちとかちゃちいとか散々な声が聞こえてきそうだが、数を配らなければならないから仕方がない。ここだけの話だが、どうしてもうるさい子にはこう言って聞かせたい……「もらえるだけありがたいと思え!」

 サンドリア中を回ってプレゼントを配った。SBからもらった特別豪華なやつは、親思いの手伝い少年ラミネールにあげることにした。プレゼントを渡されると、彼は姿勢を正して、「ありがとうございます!」と大きな声で礼を言った。気持ちのいいものだ。子供の中にも横着なやつがおり、こっちの顔すら見なかったり、荷物がいっぱいだからいらないと断ってみたり、いったい人がどんな気持ちでこれを買ってきたのかと、顔面に叩きつ こんこんと説教したいような気にまでさせられる。 

 何はともあれ、全員に配り終えた。心地よい徒労感のまま、競売所前のモーグリの肩を叩いた。それが間違いだった。「子供たちに与えた夢の力の一部をつかって」と奴は言った。「外国にテレポしてあげられるが、どうするクポ?」

 ……外国……?


 こうして私はサンドリアどころか、バストゥーク、ウィンダスまでも訪ね、プレゼントを配り歩き、文字通り三国を又にかけるスマイルブリンガーとなったのだった。

 サンドリアでの配布が終わったときには、それほどの仕事でもないなと感じていたものが、徐々に疲労が重くのしかかってきた。細かい蓄積もあるが、国を移るにつれ、どんどん子供の数が多くなっていったのだ。

 特にウィンダスはひどいものだった。連邦の子供数は三国一だという。未来が明るくて結構なことだが、プレゼントを配る身にはたまらなかった。この国はただでさえ土地が広大である。しかも国民の大部分がタルタルなものだから、子供なんだか大人なんだかぱっと見によくわからない。子供の集合場所などを覗くと、その数の多さに悲鳴をあげそうになる。我らが倉庫裏のスターオニオンズなんかがそうである。しかし水の区鼻の院の、魔法学校屋上の光景といったら!


子供がいっぱい!

 私は心身ともに疲れ果ててモグハウスへ帰った。この仕事で何かもらえたはずであるが、SB氏に報告する気力もなかった。子供たちにとっては夢あふれる一日であったろう。私はそれを慰めに、一人のスマイルブリンガーとして、子供たちの笑顔を報酬に受け取っておくこととしよう。

注1
「スマイルブリンガーの正体については諸説ある。一般的には伝承上の存在とされるが、似たような逸話(その306参照)が全国に残っている点からして、かつて本当に実在した集団・民族なのではと考える学者もある。
 今回の星忙祭に現れたSBが何者なのか、私は知らない。伝説から復活したのかもしれないし、各国の(あるいは冒険者当局の)ボランティア・スタッフなのかもしれない。しかし大人たちが飾ったクリスタルの木、そのたもとに戻ってきたSBの逸話からして、彼らが“本物”であるかないかは大した問題ではないように思える。最も重要なのは、SBによって子供たちに夢と微笑みがもたらされるという事実の方であろう」
(Kiltrog談)


注2
 ありません。


(05.01.05)
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