その374

キルトログ、ギルガメッシュに会いそこねる

 満月の泉の一件が終わり、しばらくたったとき、私は戦士65レベルになっていた。

 65レベルに上がる過程において、やはりマート翁の試練があった。ただし今度は、さほど苦労を要さないものだったが。少なくとも、獣人の巣窟で何かを手に入れろとか、巨大な怪物を倒してこいとか、そういう血なまぐさい種類のものではなかった。マートは、4人の人物を探し出し、彼らから人面石を受け取ってくるように命じた。彼または彼女は、獣神印章と引き換えに、石を渡してくれるというのである(注1)

 この試練をやり遂げ、私とLeeshaはさらに成長した。鍛錬を続け、無事65レベルになると、これまでの長い道のりを思い出さずにはいられなかった。ひよっこの当時は、サルタバルタを歩くときさえ、戦々恐々としていた。そう考えれば、自分も強くなったものだ。大手を振って歩けるダンジョンも少なくはない。ギデアス、パルブロ鉱山、ゲルスバ野営陣……。インビジとスニークがあれば、獣人の本拠地にも深入りできる。オズトロヤ城、ベドー、ダボイ、流砂洞、海蛇の洞窟……。

 ウガレピ寺院?


 飛空挺に乗り、チョコボを駆って、私はノーグへやって来た。頭領のギルガメッシュに会うためである。
 闇の王と戦ったとき、ジュノの大公兄弟の、恐るべき陰謀が明らかになった。彼らはジラートという古代人の生き残りであり、強力なクリスタルの戦士を呼び出して、楽園の扉を開こうとしていた。その計画は同時に、現世種の絶滅を導くものだった。秘密を知る者は多くない。海賊の頭領ギルガメッシュと、その娘で冒険者のライオン、天晶堂のアルド。彼らは、世界を守るために画策している。ヴァナ・ディールを救わんとしているのが、こういうやくざな連中――私をふくめ――であるのは、何という皮肉であろうか。

 頭領の扉は、しっかりと閉じられていた。門番に聞けば、ギルガメッシュは留守とのことである。せっかく足を運んできたが、いないのなら仕方がない。また出直すよ、と言いのこし、門番と別れて廊下を引き返す。

 ギルガメッシュはかつて、不思議な体験をした、と私に語った。ウガレピ寺院の奥で、謎の老人に出会ったのだと。老人は、古代の亡霊がよみがえったら、再び会いに来い、という意味のことを言った。もしかしたら、その老人が糸口になるかもしれない。ジラートの野望を食い止めるための、唯一の糸口に。
 ギルガメッシュがいないなら、直接ウガレピ寺院へ向かってもいい。中に入るのに、65レベルで足りるならの話だが。いやその前に、彼は何か言っていなかったか。ミスラの族長、ジャコ・ワーコンダロに協力を頼んだと。だとしたら――彼女が何を提案するのかわからないが――カザムへ向かうのが先決だろう。

「あんた、身がきれいだね」

 下から男の声がした。
 
 幅の広い階段が目の前に下り、海賊船を迎える小さな港に繋がっていた。かがり火の届かない暗がりの中から、青白い顔が覗き、私の方を見上げて「ククク」と笑った。

「身ぎれいとは?」
 私はその場で話しかけた。男を見下ろすかたちになるが、先ほどの失礼な物言いを受けて、彼に礼を尽くすべきとは思わなかった。

「ノーグに来るやつは往々にして、トンベリの恨みを背負っている……」
 男は、私と顔を合わせようとせず、すぐ暗がりへ戻ってしまった。だから、彼のしゃがれた声が、階段の隙間から聞こえてくるような格好になった。
「あんた、奴らを殺したことがないね」
 確かにその通りである。チョコボの騎乗途中に見かけたり、肝試しですれ違ったり、ギルド桟橋の船で乗り合わせたことはあるが、実際に戦ってみたことはかつて一度もなかった。
「そうだが……なぜわかる」
「ククク」
「お前は何者だ」
マジュフォー

 名乗りながら、よろしく、とも言おうとしない。私は不快に思い、足をどんどんと振り下ろして、彼の頭上の板をうるさく鳴らしてやった。
「苛立ちなさんな」
 マジュフォーの声が聞こえた。
「殺されたトンベリの怨念は、必ずあんたに帰ってくる。覚えておくといい」
 どういうことだ、と私は聞いた。
「言葉通りの意味さ。みんなの恨みには注意することだ」
「ばかばかしい」
「ククク。困ったときには、獣人金貨3枚を持ってくるといい。いいことをあんたに教えよう。断言してもいいけど、いつか、俺に感謝するときが来るよ」

 私は返事をせずに、その場を立ち去った。ジャコ・ワーコンダロに会う必要がある。その次にはウガレピ寺院だ。さて今の私は、トンベリたちにどれくらい太刀打ち出来るだろうか。


注1
 獣神印章は、獣人印章(その239参照)の上位アイテムです。65レベル以上になるための試験は、獣神印章4つを、マートが指定した4人に渡してくるだけの、比較的簡単なものです。


(050703)
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送