その377

キルトログ、ウガレピ寺院へ行く(2)

 ジュノの競売所で、いろんな品の値段を見ていた。獣人金貨が4枚ほど出品されていた。競り落とし額を見て唖然とした。1枚2万ギルもする。獣人貨類は合成用に使われ、貨幣として流通することはほとんどない。だとしたら、よっぽど純度の高い金貨なのだろう。単純に考えて、獣人たちは日常生活で、2万ギル硬貨を使用していることになる。もっとも、それを手にする獣人は相当限られているのだろうが。

 ぶつぶついいながら3枚競り落として、ノーグへ向かう。不気味なマジュフォーと取引するためである。友人たちによると、彼の情報は6万ギルの価値はあるという。是非そうであることを祈る。
 前日、ウガレピ寺院の書斎から出てきたあと、我々はさらに奥へ向かった。しばらくしてSteelbearが合流し、消えたランタンを3つ手に入れた。相当重くてかさばる品で、ひとりで1つ持つのが精一杯である。私とLeeshaとSteelbearが、1つずつ持ち帰った。のこりの1つはLandsendが持参するというので、基本的な準備が整った。残るは私とマジュフォーとの取引である。

 マジュフォーは相変わらず暗がりにいて、いやらしい笑い方をしながら、私の差し出した金貨を大声で数えた。「クク、たしかに」と言ってポケットへしまった。「恨みを解いてくれるのかね」と聞いたら「まさか」と答えた。そこでこいつは詐欺だと思って、力づくで6万ギルを取り戻してやろうと、腰の武器に手をかけた。
 マジュフォーが言う。
「まあ聞きなよ……あんた、俺にお祓いが出来ると思うかい。呪いを解くっていうのは、そもそも司祭の仕事だろ」
 なるほど彼は司祭にはとても見えない。
「それも、トンベリの恨みなら、トンベリの司祭に頼むのがいい。そう思わないか?」
 どういうわけだ、と尋ねた。マジュフォーはにやりと笑った。

「俺がまだ駆け出しのころ、ウガレピ寺院に忍び込んだことがある。トンベリを殺して、奴らの標的にされちまったが、みんなの恨みのことは当時全然知らなかった。
 寺院をうろついているうちに、とある部屋を見つけて、中にいたトンベリと話した。向こうが片言ながら、共通語が使えたからさ。奴から、みんなの恨みのこと、その解除方法について聞いたよ。司祭である自分なら、恨みを祓えると奴は言ったよ。かわりにギルをよこせってさ。坊主なんて人も獣人も変わりゃしないね、欲の皮がつっぱってて。
 俺は、そんな話は信用できんと言った。とりあえず証拠を見せてみろっつって、お祓いをさせた。確かに肩が軽くなったよ。俺は奴を殴りとばして、扉のカギを閉めて、そのままとんずらさ。
 だから今でも奴はそこにいると思うよ。がめつい奴だから、金を渡せば祓ってくれるだろう。ほらこいつが鍵だ。後はそのトンベリに頼みな」

 彼からウガレピ寺院小部屋のカギを貰った。これで万全である。ジラートたちの野望を砕くため、私はいよいよ、古代の忌み寺の秘密に挑むのだ。


 チョコボに乗って寺院へつくと、仲間たちが狩りをしながら待っていた。例の「星の大樹」を越えていくと、Steelbearがいて、ハチ相手に武器をふるっている。「来ましたか」と彼は言う。挨拶をして中へと入った。メンバーは以下の通りである。

 私。戦士65、忍者32レベル。
 Leesha。白魔道士65、黒魔道士32レベル。
 Steelbear。吟遊詩人65、忍者32レベル。
 Landsend。モンク75、忍者37レベル。

 以上の4人がランタンを持つ。その他のメンバーは、

 Sif。狩人75、戦士37レベル。
 Urizane。黒魔道士75、白魔道士37レベル。
 Libross。モンク75、戦士37レベル。
 Illvest。ナイト62、戦士31レベル。

 十分な戦力だと思う。これで負けるならどうかしている。ただし、トンベリの恨みの的にならなければだが。話によれば、みんなの恨みより強力な、みんなの怨念という技もあるそうだ。そんなのは間違っても食らいたくない。

 そういうわけで、小部屋へと案内してもらった。

 仲間たちが私を先導してくれるということは、恨みを解除する司祭の存在が、既に公になっていることを意味している。冒険者はたいてい世話になっているという。マジュフォーという男は、金貨3枚と引き換えに、複製の鍵を売りまわっているのだろう。いったいトンベリの司祭と比べ、どっちが強欲だかわかりはしない。

 正方形の柱のところで、Steelbearが立ち止まった。なるほど小さな扉がついている。彼が声高く言う。

「こちら、トンベリ入れになっておりまあす!」

 私が鍵を回すと、扉がするするっと開いて、部屋の様子が明らかになった。文机がひとつあり、トンベリが1匹座っていた。ぼろいコートをまとい、包丁とランタンを持っている。マジュフォーは「俺が司祭に見えるか」と言ったが、こいつだって普通のトンベリにしか見えない。彼から秘密を聞いていなければ、即座に切り倒して殺していたかもしれない。

 トンベリは、ごにょごにょと小さな声で、ギルを要求した。みなまで説明する気はないらしい。
 お祓いの金額は高くなかった。数千ギルもなかったと記憶している。どうやら恨みの分量に比例するようだ。現にUrizaneは相当取られたらしい。
 司祭がごにょごにょと呪文を唱えると、肩がふっと軽くなった。おお、怨念が落ちたのだ、と私は喜んだ。扉がしまった。気をよくして「また来るね!」と手を振りながら、私はそこを離れた。さあ怨念洞だ。だがそのためには、噂にきく、謎の画廊の迷宮を越えていかねばならない。


(05.07.17)
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