その380

キルトログ、ユタンガ山を登る
イフリートの釜(Ifrit's Cauldron)
 エルシモ島を形成した活火山「ユタンガ山」の火口。
 火山ガスが充満しているため、長時間留まることは命の危険を伴うものの、山道を登らずともガスの道を通ってここまでたどり着くことができる。
 ガス生命体である「ボム」の誕生する地としても知られ、彼らに噴火を防いでもらうため、かつてはこの道から生贄が送り込まれていたらしい。
 我々は、怨念洞を脱出した。とにかく外へ出ることだ。こんな場所に留まり続けたなら、恨みの念で神経がおかしくなってしまう。

 ユタンガ大森林に出てきて、肺の空気を入れ替えながら、仲間と石碑について話した。私にとって石碑とは、グィンハム・アイアンハート父娘が記したものか、吟遊詩人が立てた恋の歌碑か(その215参照)、どっちかしかなかった。細かい説明を受ける――白い墓石のような石碑で、真ん中に埋め込まれた石が光っている――ものの、そんなものを一度でも見かけた記憶はない。冒険者は世界を飛び回っているが、おなじみとなっている場所にも、存在に気づかないようなものが存在する。私は改めてそのことを思い知った。もう65レベルを超えているというのに。

 とにかく行ってみて、ためしに見てみることだ。みんなは知っているという。ジラートの石碑の中でも、とりわけ面倒で危険なのは、イフリートの釜にあるやつだそうだ。同地はここから近い。仲間がいるうちに訪れたほうがいいだろう。私は彼らに連れて行ってもらうことにした。


 イフリートの釜というのは、ユタンガ山の火口である。以前肝試しで訪れたことがある(その287参照)。火事場のように暑い場所で、ボムの類を初めとする、恐ろしいモンスターがうようよしている。同地に挑むに到っては、Urizaneにあらかじめ釘を刺されていた。魔法を察知する敵がいるから、プリズムパウダーとサイレントオイルは、たっぷり持っていかねばならない。Urizaneは危険度を強調しすぎていたが、彼自身そのことには気づいていた。彼によれば、これくらい脅かしておけば、緊張感が張り詰めてうまくいきやすいのだ、という。


 姿を消し、足音をなくして、我々は前進した。火口が見えた。縁に立って覗き込んだら、ぶつぶつと真っ赤な気泡が沸いて、大地の血潮のたぎりに立ち会うような趣があった。皮膚をちりちり焼く熱風、灰を含んだ噴煙、硫黄の嫌なにおいに耐え、我々は洞窟を抜けて奥へ進んだ。

 先の広場では、驚くべき光景に出会った。溶岩が、泉のように吹き出ているのだ。火口の下の溶岩は、いわば隔離状態にあったわけだが、ここのはくびきから解き放たれて、地面にだらりと寝そべっている。遠くから見たら、オレンジ色の池か、水たまりにしか見えない。こんなところに踏み込もうものならひとたまりもない! 熱気にむせかえりそうになりながらも、私はボムたちを避け、爪先立ちで危険地帯を通り抜けた。


溶岩の池

 この山では、いたるところで溶岩が吹き出ている。そういうところの近くには、必ずボムか、オポオポがいた。まったく猿どもときたら、毛皮まで着てるくせに、どうやってこの暑さに耐えているのだろう! 

 我々の先頭には、LibrossとUrizaneがいた。薬の効く長さに個人差があり、使いなおすたび立ち止まらなくてはいけないので、隊列はしばしば伸び、二手、三手に割れた。そういうときは立ち止まって仲間を待った。慎重に進むので、敵に絡まれることはなかったが、洞窟の壁が火を吹いたときは驚いた。あっという間に炎の壁が出来上がり、通ることが出来なくなった。我々は前後に分断された。畜生! 


炎の壁

 イフリートの釜には、この手の発火点がところどころにある。実は即時の鎮火が可能だ。私はSteelbearから、氷の塊を貰っていた。氷のクリスタルが1ダースぶん、固まって結晶になったものであり、炎を一瞬にして消す力があった。私はそれを試そうとして、思いとどまった。火の向こうにボムが見えたからだ。塊で炎は消せても、怪物を追い払うことは出来ぬ。それよりは自然の鎮火を待って、合流した方が安全だろう。果たして火はたちどころに収まり、我々は再び一緒になって、先へと進むことが出来た。

 
 今思えば、頂上までさしたる苦労はなかった。Urizaneの脅かしが効いたからだろう。
 頂上に来た、というのは、説明されなくてもわかった。これまでの溶岩地獄はどこへやら、緑の茂る、小さな広場が目の前にあった。傍らに滝があり、水しぶきがはねているので、ひりひりと焼けた肌にはありがたかった。おおここは天国だ。クロウラーやプギルが徘徊していたが、元からおとなしいのか、それともこちらが強いせいか、奴らは無関心を決め込み、襲ってくることはなかった。我々は緊張感から解放されて、存分に風と水の冷たさを味わい、道中の疲れを癒すことが出来た。

 広場の奥に洞窟があった。またか。だがここは行き止まりで、突き当たりに白いオブジェクトがあった。墓石のような形をしていて、本来なら碑銘があるべき位置に、炯々と赤く輝く宝石が埋め込まれている。おそらく、これがジラートの石碑なのだろう。


頂上の広場にある滝
ジラートの石碑
 
 私は宝石に手を伸ばした。グラビトン・ベリサーチが言ったように、石はぐらぐらしていて、難なく外すことが出来そうだった。

 背後でいやな気配を覚えた。私は振り返った。いつの間にか、大柄なオポオポが2匹座っていた。奴らは歯をむき出しにすると、奇声をあげて我々を威嚇し、飛びかかってきた! Sifがすかさず挑発し引き付けた。私の行動がオポオポを怒らせたのだ。奴らは石碑の守護者なのだろうか? それとも、素朴な信仰心を持っているだけの、ただの猿にすぎないのか?


 私は、炎の祈りを手に入れた。これで祈りは2つ揃った。

 仲間たちに、残りの石碑の位置を尋ねた。テリガン岬、聖地ジ・タ、ラテーヌ高原、ベヒーモスの縄張り、西アルテパ砂漠。フェ・インの奥の凍結の回廊。知っているところばかりで安心した。とりあえず危険そうなところから先に行って、片っ端から集めてしまうのが一番よいやり方だと思う。


(05.07.20)
Copyright (C) 2002-2005 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送