その385

キルトログ、八つの祈りを手に入れる

 私の掌には、八色の輝く宝石が乗っている。
 グラビトン・ベリサーチが、祈りと呼んだもの。女神の巫女を呼び出すためのもの。グラビトンはこれを、古代の神殿に持っていって、ひとつにしろと言っていた。
 とりあえず、ゼプウェル島まで行ってみよう。詳しいことはわからないが、これが人類の希望、かろうじて糸のように繋がっている、最後の望みの綱なのだから。


 聞くところによれば、流砂洞の奥には、宣託の間と呼ばれる部屋があるそうだ。シャーマニックな名前! 女神の巫女と関係が深そうである。そこが目的の場所でなくとも、きっと何かのヒントは得られることだろう。

 宣託の間は、強力なアンティカ3体が守護しているという。邪魔が入るなら蹴散らさなくてはならない。毎度毎度のこと、私は仲間に協力してもらった。

 UrizaneとSifは、いずれもナイト75である。盾が2枚も揃った。戦士は69の私、75のRagnarok。後衛は、白69のLeesha、吟遊詩人68のSteelbear。召喚士67のLandsend。全部で7人。これだけいれば十分だろう。念のため、やまびこ薬をたくさん持っていく。アンティカの叫び声を聞くと、沈黙に陥り、魔法や忍術を使うことが出来なくなる。やまびこ薬はその異常をただちに治す。空蝉の術が封じられると危険なので、私もそれなりの数を用意せねばならないのである。


 ル・ルデの庭の噴水に集まって、しばらくのあいだ雑談をした。あますず祭りに行きたいねえ、という声があがった。あますず祭りというのは、現在三国で開催されている納涼祭である。地域によっては花火があがり、祭囃子が聞こえてくるという。

 東アルテパ砂漠がそうであった。我々はチョコボを走らせながら、ゼプウェルの広々とした空に、七色の大花が咲くのを眺めた。来年もこういう祭りがあることを望む。そのために我々は今、古代神殿の奥地へと急いでいるのである。


 流砂洞に入り、重量スイッチの奥へ進む。天井の低い、細長い広間が続いている。その中央に、小型の墳墓のようなものが連なっているのだが、私の興味はそちらには向かなかった。一方の壁に、たいへん変わったものを見とめたからである。


墳墓らしき物体。
刻まれているマークは、ガルカの合掌をモチーフにしたものか?

 左側の壁には、絵が描かれていた。それは長く、広間の終わりまでずっと連なっている。たくさんの人影が行進しているさまが描かれている。小さいのではっきりとはわからないが、体型からしてガルカらしい。絵は奥に進むごとに次の場面へと進む。どうやらひとりのガルカ、あるいはガルカ族全体の生が絵になっているようなのである。

Steelbearが「ウガレピで見たやつに似ていますね」と言ったが、私はあまりそんな気がしなかった。壁画は素朴であり、さほど写実的ではない。ただ赤、黄、緑、白などをうまく使いこなして、美術性の高さを伺わせる。こういう絵をアンティカが描くわけがない。だとすると、これはグスタベルグに逃げてきた、古代ガルカ族が遺したものだろう。600年も昔である。600年! そのわりには、絵はひどく綺麗だ。いくらか薄く見えるものの、まだまだ色が鮮やかなまま残っている。きっと、流砂洞の保存環境が良いのだろう。

 私は絵を辿ってみた。槍を持った黒い影が、ある部分でガルカを遮っている。これらはアンティカと思われる。写実的ではないといったが、抽象性が高いわけではない。絵のモチーフは比較的単純に推測することが出来る。

 Sifが「この光っているのは?」と指をさした。私は「太陽でしょう」と答える。
「そして、赤い線で描かれているのは山でしょう」

 山か、と誰かが言ってうんうん唸った。Leeshaが首を捻った。
「カブト山のことかしら」
 カブト山というのは、西アルテパ砂漠にある、サンド・ビートルがたくさん生息する山である。これは正式な名前ではないが、よくカブト虫が鍛錬相手に選ばれるため、冒険者が俗称としてそう呼んでいる。
 カブト山は、正確には天啓の岩という。山ではなくて一枚岩なのである。かつてガルカが精神鍛錬の場として利用したという。おそらく600年前の話だろう。

 壁画の山は赤の線で描かれているが、なぜわざわざそんな色が使われているのだろう。たいした意味はないのかもしれないし、あるのかもしれない。私としては、火山弾らしい岩が、山のふもとに描かれているのが気になる(注1)。火山だとしたら赤いのも理解できるのだが、ここはゼプウェル島であって、エルシモ島ではない。もとより火山のあるわけがない。


壁画(の一部)。
右端に赤い山が見える

 赤い山の頂上にはガルカが立っている。彼の上に、天から黄金の光が降り注いでいる。何かの啓示を受けているように見えるが、これは一体何を意味しているのだろう。
 おそらく、それに答えられる者はいないだろう。ガルカ族がこの島を去って久しい。こういう儀式が当時あったとしても、我々にとって既に意味は失われている。新しい語り部が登場したら、謎は解けるだろうか? 赤い山の意味は。ガルカは、どこから来てどこへ去るのか。どうして転生するのか。何のために生きているのか。なぜ、なぜ、なぜ。


 広間は途中で途切れていた。幅の広いクレバスが、部屋の床を横断していたのだ。下は暗くて何も見えない。砂だとするとクッションになりそうだが、何しろ高さがわからないため、あまり下りたいような気分にはなれない。

 だが、クレバスを越していけない以上、ここを落ちるしかない。私はクレバスに座り込み、底の深い水に漬かるような感じで足を下ろした。崖面が砂だったので、ずるずると滑るように下りることが出来た。

 穴は思ったより深くない。仲間が次々と下りてきた。通路が続いている。そちらの道を辿ったら託宣の間だという。いよいよだと両足に力を込め、私はさらに奥へと歩を進めた。


注1
「トカゲにも見えなくはないが……」
(Kiltrog談)

(05.08.10)
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