その396

キルトログ、マリー・マレーを探す

 こうして私は、マリーだかマレーだかという名前のミスラを探すことになった。

 ギルガメッシュが策を施してくれた。彼の手下を使って、「ジ・タのクリスタルを欲しがっている者がいる」という噂を、あちこちでばらまくのだ。彼女がクリスタルをまだ持っているとしたら、マリー・マレーの足取りも止まるだろうし、こちらも探しやすくなるだろう。

 マリー・マレーの行く先を推理してみた。彼女が大陸に渡ったのなら、高い確率でジュノへと出向くはずである。天晶堂は珍品の巨大市場だ。もっとも、ノーグのネットワークでさばけなかったのなら、天晶堂に見切りをつけているかもしれない。辺境の他の町という可能性もある。ひとまずラバオかカザムに出かけてみて、駄目だったら大陸の方へ戻ることとしよう。




 結果は、あっさりと出た。

 ラバオのオアシスのほとりで、一人のミスラと出会った。金色の髪をひっつめにしているせいか、両目がいたずらっぽくつり上がっている。彼女は草色の短いチュニック……シーフの衣装を着ていた。見るからに抜け目のなさそうな人物だ。

「あんた、Kiltrogかい」
 彼女はハスキーな声で言った。
「あたいはマリー・コミュージャ。トレジャーハンターだよ」

 私は仰天してしまった。わずか数日で、目的の相手が見つかってしまったからである。しかもわざわざ、向こうの方から飛び込んできたのだ。ギルガメッシュの策が、これ以上ないほどずばりと当たった格好である。

「リ・テロアの遺跡の謎を探っているんだって? そう聞いたからさ、あんたが来るのを待ってたんだよ。冒険者だっていうから、きっとラバオに立ち寄るはずだと思ってねえ。
 あたい、遺跡の奥へ行く方法を知っているんだよね。あんたそれが知りたいんじゃないの?」

 私は、ごくりと唾を飲み込んだ。マリー・コミュージャが、にやっと笑って犬歯を見せた。
「ほら、この青い水晶……」
 マリーは腰の袋から、布に包まれた丸いかたまりを取り出した。彼女が布をめくると、光がはじけた。深い海の輝き、とギルガメッシュは表現したが、まさにその通りである。幻想的な青い光が、生命の息吹をあらわすように、とくん、とくんと明滅している。大きさは確かに、鳥の卵と同じくらいである。

 私は手を伸ばして、それを検分しようとした。だが彼女は冷酷にも、クリスタルをさっと後ろに引いて、布ごと腰の袋におさめてしまった。
「ただであげるとは言ってないよね」
 いくらだ、と尋ねた。100万ギル未満なら持ち合わせがある。

「そうね。お金でもいいんだけど、あんた冒険者でしょう。やって欲しい仕事があるのよ。せっかくだから物々交換といこうじゃないの。
 あたいね、いま流砂洞を調査しているんだ。あそこにはきっと何か、古代のガルカの秘宝が隠れてるんじゃないかって。そう思わない?」

 私は何も言わなかった。個人がどう思おうが勝手である。 

「でもね、奥には入れないんだ。ある仕掛け扉があって……話によると、ガルカなら開けられるらしんだけどさ。あたい一人じゃ無理なんだよね」

 なるほど、重量扉のことだろう。

「そこでさ、あんたなら出来るわけじゃない? その扉の奥から、何か宝物を見つけてきて欲しいのよね。あたいがそれを気に入ったら、クリスタルと交換しようじゃないの。ギブアンドテイクってわけ。どう?」

 どうも何も、条件を飲むしかない。だが扉の奥に、秘宝のようなものはあっただろうか。彼女は少々、流砂洞に過剰な期待をかけているようだが……。

 とにかく私は了承した。いざというときには、金品で譲ってもらう交渉も出来るだろう。場合によっては最悪の手段も取らねばならない。もっとも、いくら人類のためとはいえ、力づくで強奪する破目には陥りたくないが……。


(05.09.04)
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