その422

キルトログ、宿星の座に斬り込む

 神殿の最深部に到達すると、血のような色の灯りが、私の身体を包んだ。けたたましい警報が、休むことなく鳴り響いている。光と音が、八方の壁に反射反響し、わんわんと降りかかってくる。目も耳もおかしくなりそうだ。

 仲間たちが私を待っていた。私は遅れてしまったことを詫び、例の扉の前に立って、施錠されているかどうか、そっと触れて確かめてみた。

 扉は、ゆっくりと上にスライドした。

 私は跳びすさり、柱の陰に身を隠した。すぐ離れたのがよかったのか、数イルムほど開いただけで、扉はゆっくりと下降し、戻った。警報が鳴っていてよかった。この場が静まり返っていたら、奥にいる相手に気取られてしまったことだろう。

 私より、ライオンが先に来ているはずだ……。
 だが、彼女の姿はどこにもない。
 考えられる結論はひとつだった。彼女がひとりで特攻するはずはない。それはただの自殺行為だ……だが、ひとりではなかったら? そう、例えば3人なら……。
 決断を急がなければならない。私は振り返った。友人たちが、私を凝視している。私はこれから決死隊を募り、最後の――どのような意味においても――本当に最後の戦いへ臨むのだ。



「この奥に、我々の敵がいます」
 一同は何も言わず、ただこくりと頷いた。
「我々の編成ですが」
 うんうん、と仲間たち。
「後衛については問題ないでしょう。Urizaneさんがいない以上、白魔道士のLeeshaさん、赤魔道士Steelbearさん、吟遊詩人Sifさん……お三方にお願いしたい」 
「もちろん」とSteelbearが、指で帽子のつばを弾いた。
「前衛ですが、盾役が一人、私の他にアタッカーをもう一人」
「俺はかまわないよ」とRuellが手を挙げた。
「Parsiaさんに行ってもらって」

 以前見たSifと同じように、Parsiaはアダマンタイトの鎧を着ている。私が頭を下げると、彼女はぎこちない笑みを返した。
「最後の一人は……Librossさんにお願いしたい」
 Landsendが、かたく唇を結んでいる。本当に申し訳なく思う。しかし、6人での戦いは譲れないものであり、どうしても3人には我慢して貰わねばならない。
 LibrossはSifとともに、冒険を重ねてきていた。そして彼らには、アーク・ガーディアンとの決戦に参加して貰えなかった。その2人がここにいる。彼らを今加えることは意味があるはずである。
「自分は、カムラナートのとき、一緒に戦ったから」
 Ragnarokがそう言ってくれた。本当にありがたかった。
「とにかく、Kilさんの武運を祈ります」


「これを」
 Ruellが斧を渡してくれた。アークエンジェル戦で用いた、例の業物ジャガーノートである。
 私は一礼し、それを腰にさした。「ありがとうございます」と礼を言う。Ragnaokからも、どうかマンイーターを使ってくれ、と提案があった。「それと」と彼は、首にかけた白色のゴルケットを外し、私に手渡しながら言った。
リレイズゴルケットです。戦闘不能になったとき、復活することが出来ます。もう何度かしか使えないのですが……。それと、力を増すヘラクレスリング。ウェディングリングの反対の手につけて下さい。必ず役に立ってくれるはずです」

 Ragnarokからは、体力回復効果のある甘い飲み物、ペルシコス・オレも受け取った。栄養価の高いソールスシも。こちらは東方の伝統料理で、生だからあまり日持ちはしないが、攻撃の命中率を高める効果があるのである。

 私はRagnarokに、深く礼を言った。彼は笑いながら、「装備できるものは皆お貸ししたいのだが」と、まだ渡し足りないという顔をするのだった。

「それでは、作戦ですが……」
 すべての準備を終えてから、私は両手を擦り合わせた。もたもたしてはいられないが、意志の統一はしておかねばならない。

「睡眠攻撃に備えて、みんな、毒薬を飲むのを忘れないように」
 Ruellが言った。
「Kilさん、連携はあまり考えなくていい。黒魔道士がいないから、慣れない連携をするより、一発でも多くランページを撃った方がいい。俺が助言できるのは、それくらいかな」

「奴は魔法を使うでしょうね」と私。
「古代魔法をね」とRagnarok。
「一応、フラットブレードの準備はするけど……」
 Parsiaが眉をひそめた。
「古代魔法の詠唱を止めるのは、難しいかもしれない……。ふつうの攻撃では、なかなか妨害できないし」
「Kilさんにも、盾役を覚悟してもらわねばなりますまい」
 Steelbearが腕を組んで、
「Parsiaさんと、挑発を回すようなつもりで……貴方には空蝉の術があるから、うまく攻撃を散らせればいいのですが」

 私は頷いた。沈黙が訪れ――出発の時を悟った。
「では、行ってまいります」と敬礼した。Ruell、Ragnarokと、Landsendは、何も言わず小さく頷いた。私は扉を開き、思い切って中に飛び込んだ。嗚呼、3人は無事なのだろうか。果たして我々は、笑ってこの道を引き返し、再びLandsendたちに会うことが出来るのだろうか?


(05.02.03)
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