デーモン 全身を漆黒の殻で覆った、有翼の獣人。人は彼らをデーモンと呼んだ。伝説の悪魔そっくりの存在だったからだ。確かに彼らは世界に恐怖をふりまいた――しかし、本当の地獄の使者なのかはいまだにわかっていない。そもそもゴブリンらと同じ、「獣人」と呼ぶのがふさわしいのかどうかすらも。
◆種族的特性 デーモンの容姿が悪魔の印象を与えるのは、第一に、背中の翼がコウモリを思わせるからだろう。大柄なヒュームくらいの体格であるにもかかわらず、胴が短く猫背である。後ろにカーブした二の足が、俊敏そうな全体のフォルムをかたち作る。手と足はかぎ爪。顔も恐ろしい。外耳が角のように頭部の両脇に伸びている。その耳まで裂けた口と、黄色い燐光を放つ小さな目。全身を覆う外殻からは、たくさんの棘が飛び出ている。こうした外見を考えれば、デーモンの姿を一目見た人間が「これぞ悪魔の姿だ」と思い込むのも無理はないであろう。 デーモンに関しては謎が多い。闇の王の噂が広まりだしたころ、忽然とバルドニアに姿を現した。従って彼らは、ヴァナ・ディール土着の獣人ではない。一説によれば、闇の王が地獄で契約を交わして、地上に連れて来た種族だという。情報源がはっきりしておらず、噂話に過ぎないように思えるのだが、単なる憶測が真実を突いていることはよくある――デーモンは自分たちを「闇の血族」と呼んでいるが、これは彼ら自身が、地獄の使者だと任じている証拠と捉えるべきなのだろうか? ◆闇の王親衛隊 デーモンの歴史は――少なくとも、ヴァナ・ディールにおいては――わずか20数年に過ぎない。それも、人類と深く関わったのは、クリスタル戦争戦時の8年間に限られる。以後はバルドニア地方に引っ込み、あるじのいないズヴァール城を守り続けている。最近、闇の王復活が騒がれているが、もしそれが本当なら、再び驚くべき忠誠心で彼につかえ、全世界を恐怖に陥れるかもしれない。 856年、闇の王の噂が広がりだしたころから、デーモンは彼に付き従っていた。とりわけ強い忠誠心を持った一団は、闇の王親衛隊として王に仕え、手足となって働いた。一般的にデーモンは、他の獣人よりも知力・体力の点で頭抜けている。こすっからいヤグードよりも狡猾だし、大柄なオークより屈強である。魔法の才能にも優れている――しかも王には絶対忠実。 「闇の王親衛隊」という名がついているが、各獣人軍に派遣されて指揮を取る者、伝令や督戦官となる者など、任務はさまざまであり、必ずしも王の護衛を主体としたものではなかった。中でも貴種と呼ばれるエリートたちは、将軍格の働きをして王を助けていた(注1)。獣人軍は一丸となって人類と激突したが、共闘意識のうすい獣人たちを統率するには、デーモンのような優れた士官が必要だったのである。 ◆エクソスケルトンアーマー デーモンについて謎が多いのは、彼らが明らかにしないからだけではない。研究してもよくわからないものもある。エクソスケルトンアーマーもその一つである。 デーモンの身体を覆う漆黒の鎧が、彼ら自前の外殻であるのか、甲冑であるのかは、以前から問題となってきた。エクソスケルトンアーマーと呼ばれるそれは、硬度が高く、そのうえ柔軟性に富んでおり、魔法に対する抵抗力も高いという素晴らしさだった。アーマーには不思議な能力が備わっており、人間が二次的に加工後、使用するのは可能だ。例えば、頭骨を使ったデーモンヘルムは、勝手に首を動かして、身の危険が迫ったことを教えてくれる。デーモンハーネスの中には、細分化された頭蓋が織り込まれており、体力を魔力に変える手助けをする。ただしこうした力は、デーモンが本来使用している能力の一部でしかない。本体のデーモンが死んだ途端に、アーマーの抗魔性は大幅に損なわれてしまうのである。 生物学研究の権威、ウィンダス鼻の院院長ルクススは、アーマーにデーモン本体の神経が伸びているのを発見、これを外骨格と断定した。だが、バストゥークの鍛冶師ゲンプは、アーマーに溶接の後が見られること、骨格はデーモンの体内に独立していることなどから、これを甲冑と推定した。両者の考えはいまだに一致していない。 大戦後20年を経た今も、デーモンは相変わらず不思議な存在だ。彼らは単なる獣人なのか、それとも地獄の使者か? 闇の王が死んだのに、なぜ姿を消さないのか? 結局人類には何もわかっていない。この先、科学と魔法の力によって、デーモンの正体を暴ける日は来るのであろうか?
◆貴種たち
注1 貴種のみのデーモンが集まったキンドレッドスピリッツという一団もいた。彼らは蒼の血族と称される。ウィンダスに伝わる昔話「4匹の悪魔がどんがらどん」に出てくる悪魔ではないかと考えられている。 忠誠心といえば、キンドレッドウォーリアーと呼ばれる種もある。闇の王と直接血盟し、狂信的な忠誠心で彼に仕えたという。 (06.02.15)
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