オーク

 彼らは北の地からやって来た。クォン大陸最北端、人外の地バルドニアよりもさらに北から、海を越えて。恐るべきことにオーク族は、サンドリア人が天然の要害と信じていた『大北壁』をも踏破してきた。そして今、彼らは美しきロンフォールを蹂躙し、ゲルスバに城砦を築き、野営陣を構えている。誇り高い――あるいは高慢な――サンドリア人は、野卑なオークを蔑視し、仇敵とみなすことにはためらいを覚えるようだ。実際サンドリアの苦戦の一因は王国内部の足の引っ張り合いである。だがたとえそれがなくとも、オークがエルヴァーン、ひいては人類の恐るべき敵だ、という事実は決して揺るがないだろう。

 先ほど野卑という言葉を使ったが、オークは獣人の中でも極めて野蛮な存在だ。その意味では、「獣人」という呼び名がこれほど似つかわしい種族もいまい!

 オークはガルカに匹敵するほど大柄である。とりわけ上半身がよく発達し、腕は怪力を誇示するように太く長い。貧弱なのは下半身で、細い両足ととかげのように伸びた尻尾がかろうじて全身を支えている。ガルカ族にとっては不愉快なことに、この特長は彼らの外見と部分的に一致するため、遠目からオークにしばしば見間違われる(当然のことだが、この過ちを最も多く犯すのは、サンドリア周辺にいる未熟な冒険者たちである)。

 オークは社会生活を営む生き物であるため、外見も役割に準じる。戦士系のオークは猪首をかぶとで覆い、脚班を巻き、食糧袋を携帯している。これらは遠征装備と呼ばれる。人間は人生を旅に例えるが、オークもある意味同様で、人生すなわち旅、旅すなわち戦闘と考える。これぞ「生き血の産湯を使い、首級で遊び、戦場で育つ」というオークどもの哲学なのだ。

 一方、ぶよぶよしたレモン色の皮膚を見せているのが白兵装備である。頭がまる出しに見えるが、実は人革の冑をまとっているらしい。こちらは拳闘士系に多く、しばしば遠征装備のオークより凶暴である。彼らは革小札を束ねた腕甲を使い、拳の防御力を高めているという。

遠征装備
白兵装備

 オークには魔道士も存在する。祈祷装備をしているのがそれである。このタイプは、呪術的文様を施した頭巾で常に頭を覆っている。オークたちは魔術を卑劣なものと考えるので、それを生業とする魔術師、呪術師は、恥じ入って顔をさらさないのだ。この傾向は徹底していて、オークは白魔法さえも嫌がる。慈悲をかけられることはオーク最大の恥とされており、彼らが仲間の回復のために魔法を使う機会はまずない(同時に、捕虜となって生きながら得ることも屈辱であるとみなされる)。

祈祷装備

◆オーク帝国

 オーク帝国の存在は古くから人口に膾炙していたが、何ぶんはるか遠方のため、実態は明らかになっていない。ヴァナ・ディールに上陸したのはクォン方面軍で、バックゴデック大将率いる司令協議会の支配下にある。野蛮そのもののようなオークではあるが、首脳陣は狡猾極まりなく、サンドリア王立騎士団に何度も苦杯を嘗めさせるなど、数々の実績を誇っている。

 軍団は部族をそのまま構成単位とする。最大の主力であるノルバレン軍団の中には、グワッジホッジ“切り裂き”団や、ゴチャックズック“墓送り”団、バットギット旅団などが存在する。バットギットはゲルスバ砦を本拠地としており、日夜サンドリアの喉元をおびやかし続けている。バットギットの配下には、ボックデック“斬込”連隊や、刈手氏族隊、狼氏族隊、戦車隊などが確認されている。戦前にゲルスバを訪れた修道士ジョセの記録では、長牙族が同地を預かっているとあるが、これがバットギット配下の連隊名なのか、バットギット(あるいは、その前任者)の出自を表すものなのか、どちらかはわからない。

 著名な軍団には他に、ズヴァール城を防衛していたバルドニア軍団がある。彼らは闇の王の配下にあるが、もともと配下だったわけではなく、858年の百蛮戦争で争い、敗れ、親衛隊に編入されたらしい。軍団そのものはズヴァール城陥落の際、連合軍の追撃を振り切り、遠く本国まで敗走したというが、近年密かに再編成されたようだ。クリスタル戦争での敗戦により、彼らはヴァナ・ディールでの根拠地をいくつも失った。だが本国より数度に渡り大規模な増援が行われ――我々人類にとっては厄介なことに――戦前と変わらぬ恐怖をヴァナ・ディールにふりまいているのである。

◆オークの歴史

 オークがヴァナ・ディール史に初めて登場するのは、559年のことである。彼らはクォン大陸北岸に上陸したが、ジュノ海峡を越えて舞い戻った【戦王】アシュファーグにより、ウルガラン山脈で討たれた。このとき膨大な数のオークが切り立った崖から追い落とされ、無残な死を迎えた。この事件をオーク千人落としと呼ぶ。

 帝国は663年、再度大規模な侵略を仕掛けた。彼らは遂に北壁を突破し、ノルバレンへと足を踏み入れた。このとき立ちふさがったのは、サンドリア辺境大騎士のファレデミオンだった。オークの大軍は撃退させられ、再び大陸で二の足を踏むことになった。このときの戦果により、ファレデミオンは英雄とみなされ、凱旋門に像を刻まれる栄誉を得ている(彼は第二次コンシュタット大戦で壮絶な戦死を遂げた)。

 冒険者の父、ヒュームのグィンハム・アイアンハートは、761年に西ロンフォールを訪れ、オークを頻繁に見かけることに驚いている。この年、帝国の先遣隊がロンフォールに侵入し、「はるか北方に住んでいた筈」の10年前からは考えられないほど、オークはサンドリアの身近な敵と化した。だがエルヴァーンの騎士たちは、彼らを野蛮で下等な種族とみなし、歯牙にもかけなかった。その解釈は間違ってはいないのだが、油断が過ぎたようだ。グィンハムが警鐘を鳴らしたのも空しく、オークはクォンに無残な爪あとを残した。その顕著な例がダボイで、小さな修道院があることで知られる静かな寒村は、オークの無慈悲な襲撃を受け、阿鼻叫喚の修羅場と化した。王立騎士団の必死の努力も空しく、ダボイ奪還はいまだに実現できていない。

 オークがサンドリア史に大きく関わった事件がもうひとつある。851年、現王デスティンの父、【刑王】グランテュールが、狩りの最中に虐殺された。供の者数十人が同時に犠牲になるという大規模なもので、実行犯はオーク随一の猛者・ドッグヴデックだと判明した(これゆえドッグヴデックは「王殺し」と呼ばれる)。旧東王派の貴族が裏で意図を引いていたのだが、この事実が明るみに出るまで、デスティンは【暫定王】を自称し、正式なふたつ名を名乗ろうとはしなかった。ドッグヴデックはクリスタル戦争でも大活躍し、ザルカバード会戦において、サンドリアの名将フィリユーレを一騎打ちで破るなど、華々しい戦功を――逆に言えば、甚大な被害を――挙げた。人類からは悪夢の象徴とされた彼だが、オーク側の記録によれば、意外にも慈悲深く仁義に厚い人物だったという。

◆オークの習性と文化

 成長の早いオークはわずか3年で成人に達する。もっとも言語を習得するまでは8年かかるのが普通で、言葉を喋れないまま死んでしまうオークも少なくない(その理由は……はっきりしている)。

 オークが賢いのかどうかについては意見が割れるところである。少なくとも表面上は洗練されたヤグードなどに比べて、オーク文化は一ランク落ちると言わざるを得ない。彼らの工業技術は、依然木工の段階に留まっている。一方で、木造ではあるが、破城槌や、考えようによっては大変馬鹿馬鹿しい人力戦車などは、他の仕掛けよりもずっと精密に造られている。要するにオークは、自分たちの素質の有無に関わらず、常に戦闘に関する物事を優先し、それ以外の雑事を後回しにしようとするのだ。

オークの戦闘機械。
動力は人力。

 オークがひときわ野蛮に見えるのはまさにこのせいである。彼らは強さを探求するのだが、効率ということをあまり重視しない。極端な実力主義の反映か、オークは集団で戦う場合でも、単に一人でより多くの敵を倒そうとするし、実際にそういう行動をとった者が賞賛を受ける。従って寿命は短く、多くの者が天寿を全うせずに戦場の露と化す。爬虫類同様、年齢を重ねれば重ねるほど体格も大きくなる。オークにとって「長寿」とは、戦場で誰よりも多くの敵を屠ってきたという勲章に他ならない。よって年長者は最大の敬意を受ける。ことほどさように「強さ」という観点は、オークにとっては重要事項なのだ。

 恐ろしいことにオークは、強くなるためであれば、理性を失うことすら厭わない。自分を見失うことに対する恐怖は、彼らにとっては無縁のように思える。戦場での彼らの行動を伺うと、敵味方の見境がつかなくなる「戦闘中毒者」が、オーク社会で頻出している現実も頷ける――それでも彼らは毎日の格闘トーナメントをやめようとはしない。彼らは何よりも戦い、力で叩き潰すことに生きがいと喜びを感じているのだ。

◆愚かなオーク!

 本能に身を任せたオークが愚かな行動を取ることもしばしばある。戦闘中毒者はその一例だが、戦いの役に立つだけまだましというものだ。食欲を抑えきれず(オークは肉食である)、騎馬であるリザードやタイガーを食ってしまい、徒歩で戦場に駆けつける騎兵などは本末転倒も甚だしい。また使役されるリザードもそのことをわかっているのか、頻繁に主人を襲ったり、簡単な餌付けで忠誠心を翻したりする。これこそまさに「ペットは飼い主に似る」ということわざの好例だろう!

◆オークの名前

 オークの個体名は、促音を含む2音程度の短い単語が韻を踏んでいるものが多い。タルタル男子と似た傾向ではあるが、彼らほど長くもないし、音節で区切られていることもない(韻も通常子音で踏む)。ゾッドバッドバットギットボックデックなどがその代表例である。

◆オークの哲学

 オークは点の周囲を波紋のように円で囲った旗印を使う。このシンボルマークは「命来たりて再び帰る場所」を意味し、彼らの戦陣・住居を問わずいたるところで目撃される。彼らは、戦場で勇敢に戦った魂は再びオークとなって転生すると信じている。一方ぶざまな死を迎えた者は、別の生き物となってこの世に復活してくる、というのだ(興味深いことにこの考え方は、ガルカの哲学に一脈通じるものがある)。
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