トンベリ

 人類の敵・獣人の中でも、トンベリは最強の部類に入る。ただし人々を真に畏怖させるのは、彼の巧みな包丁さばきではなく、数々の刺殺事件から伝わってくる、人類への果てしない憎悪の深さである。

◆生物的特徴

 トンベリはゴブリン並の小躯である。皮膚は緑色、全身無毛であるため、頭は剥かれたメロンのように見える。目は黄色で丸く、口は常にきりりと結ばれている。従って表情には乏しく、感情を表に出すということがほとんどない。

 彼らはいつも、くるぶしまである亜麻のコートを着ている。前屈姿勢を決して崩さないのだが、右手に下げたランタンと、左手に持った包丁の重さが関係しているかもしれない。獣人には珍しいことに、容姿によって階級や社会的身分を表すことがない(もっとも、そういうものが存在するかどうかも知られていないのだが)。トンベリは常に「外套+ランタン+包丁」を身につけており、彼らの統一的なスタイルは俗に「ヴァサル」と呼ばれている。

◆ランタンと包丁

 いったいこの、ランタンと包丁は何を意味するのだろうか? 彼らは決してそれを手放そうとはしない。研究の結果、どうも宗教的な要因であることが明らかになっている。破壊の女神ウガレピを信仰するトンベリは、以下のようなスローガンを心のよりどころにしているようだ。

  トンベリの民よ! 角灯を持て!

 真実の陽が射すその日まで、怨みの灯火を絶やさんがため。

 トンベリの民よ! 包丁を持て!

 その刃にてアルタナの民を捌き、真の女神ウガレピに捧げんがため。

 すなわちランタンとは、人類に対する深い怨みの象徴であり、包丁とは、その攻撃手段と考えられる。もっとも包丁の方は少し現実的で、入手が難しいのか、冒険者から奪った短剣で代用している場合もあるし、大事なはずの包丁で料理をしている光景も見られる(トンベリがこのような生活習慣を見せる機会は滅多にない)。

トンベリ

◆トンベリの歴史

 悪名高いトンベリではあるが、ヴァナ・ディール正史に登場することは少ない。ただし彼らは要所要所で悪夢のような楔を打ち込み、世界の腹ぐろい側面を垣間見せている。

 ヴァナ・ディール史に残る暗殺事件の犯人は、多くがトンベリではないかという説がある。862年のバストゥーク軍務大臣ベルナーの暗殺がそうだし、後に大統領ブリーンも狙われ、幸いにも未遂に終わった。サンドリアでは、クリスタル戦争開戦前から、主戦派の騎士が何人も殺されていた。王国内戦時には、覆面の子供が「特命介錯人」を名乗り、貴族の公開処刑を行っていたという。その正体は、ジャングル・ブギーメンと呼ばれるトンベリの一団だったのではないか、と考えられている。

 暗殺の手口は実に巧みだ。彼らはランタンを囮に使う。離れたところに灯りを置き、標的がそれに気をとられている隙に背後から突くという。この方法は彼らの常套手段で、人間に知られた数少ない方法の一つだ。トンベリに関しては古代から文献が残っておらず、戦前獣人たちに宣教して回った修道士のジョセも、「十数冊を調べたが、恐るべき刺客であるということ以外の事実はほとんどわからなかった」と述べている。

 前述の暗殺事件でわかるように、トンベリがその悪意の牙を剥き出しにしたのは、やはりクリスタル戦争前後のことだ。彼らは闇の王に出兵を要請されたが、それには応じず、数名の精鋭が暗殺者として協力したにとどまるらしい。これは全くトンベリらしいやり方だ。彼らは個人主義的な生き物と考えられており、ゴブリンと同様、大規模な軍隊を編成して他勢力と衝突したという例がほとんどない。ただ戦中には、残りのトンベリたちは、彼らの本拠地であるウガレピ寺院を全力でアルタナ軍から守護していた。

◆ウガレピ寺院

 トンベリはエルシモ島東部の森林地帯に生息し、大陸に姿を現すことはまれである(注1)ヨアトル大森林は北の一部を除き、トンベリの縄張りとして知られており、猟師町カザムのミスラには避けられて来た。獲物がヨアトルに逃げ込んだ場合、ミスラの狩人たちは、自ら死を選んだものとみなし、決して深追いはしなかったという。

 トンベリの本拠地ウガレピ寺院は、ヨアトル大森林の南部に位置する。トンベリはここで、彼らの創生の女神とされるウガレピを崇め奉っている。一説によるとウガレピは、女神アルタナの奸計にはまり、醜い姿で辺境に追いやられたのだという。トンベリもその影響を余儀なくされているため、アルタナの子である人類を憎んでやまない、というのだ。

 真偽はどうあれ、ウガレピは大変古い建物で、建っているのが不思議なほど老朽化している。そのためか、トンベリは地下に怨念洞と呼ばれるトンネルを掘り進んでいる。名前の由来は、彼らがつるはしを振るいながら唱えた呪いの言葉が、壁のあちこちに染み付いているとされるからだ。彼らはこの洞窟に集まり、自らを傷つけて血を祭壇に振りかけ、人類への復讐を日々強めているという。寺院の外からも、地下から響く呪詛の大合唱が聞こえることがあり、トンベリの執念深さに寒気を覚えないではいられない。

 猛者であるカザムのミスラたちも、ウガレピ寺院を「忌み寺」と呼び、決して立ち入ろうとはしない。トンベリの生態が知られていないのは、こうした秘密主義の側面が強いからである。勇敢な冒険者によってウガレピ寺院も探索されているが、トンベリたちについてわかったことは微々たるものにすぎない。

何者かが石を切り抜いて作ったという、ウガレピ寺院。
築何千年か?
怨念洞の祭壇。
中央には恨みの火が燃えている。

◆キンク

 トンベリには一匹だけ、ヴァサルスタイルとは異なる者がいる。王冠らしきものを被っており、人間からトンベリ・キンクと呼ばれている。キングのもじりと考えられるが、正体は王ではなく、大神官だという説もある。いずれにせよ彼は滅多に姿を現さず、従って真偽も不明のままである。

◆トンベリの正体

 トンベリの正体について、冒険者が突き止めた事実を以下に示す。キルトログ記その379と重複するが、重大な内容を含むので反転文字とする。

 トンベリという名は、古代クリュー人の学者、グラビトン・ベリサーチの通称に由来している。1万年前、ジラート人の神の扉計画を阻止したクリュー人は、エルシモ島へ落ち延びた。クリスタル・エネルギーの強い照射を受けた彼らは、長い年月の間、徐々に身体を変容させ、現在のトンベリの姿となった。

 ただし、彼らが人類を深く恨むようになった経緯は説明されていない。特にウガレピ信仰との関連は不明で、クリューの時代からこの女神を崇拝していたのか、後にそうなったのかは謎のままである。


注1
 ノルバレンにあるファノエ運河のバージに乗船し、護衛をつとめているトンベリの一団がいる。なぜそのような作業に従事しているのかは不明だが、領主テュロム伯爵と何らかの契約を結んでいるのでは、と言われている。
 また、フォルガンディ地方での目撃談もある。ただしこちらは事実解明にはいたっていない。


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